第四十八話 教授は、リーゼの戦争を聞いて一度全員を引かせる
戦争。
その話になった途端。
エヴァとリーゼの顔つきが少し変わった。
シズク。領主。武人。弓。槍。刀。前近代的な戦。
ティセラ。魔法兵。結界。魔導具。多種族軍。治療術。魔法砲撃。そして、また学院。
リーゼ。
「戦争にも学院が?」
「研究者や支援部門が派遣されます」
「また学院か!」
「国家最高研究機関です」
「本当に何なんだ、貴様の学校は!」
「学院です!」
次。
エヴァ。剣。槍。斧。鎧。軍馬。魔法。ただし人間そのものが強い。
エヴァが言う。
「武器が折れたから、近くに転がってた敵の頭を持って、次の奴を殴ったこともある」
沈黙。
リーゼ。
「……頭?」
「ああ」
ティセラ。
「人間頭部は、打撃武器として適切ではありません」
「一回ならいける」
シズク。
「知りたくありませんでした」
リーゼ。
「予備武器を持て!」
「なくした」
「管理しろ!」
そして。
リーゼ。帝国。王国。共和国。世界全体がノアの前世でいう、第一次世界大戦期のヨーロッパに近い。鉄道。工場。電信。電話。軍隊。徴兵。軍階級。銃。機関銃。大砲。飛行機。爆弾。
エヴァが途中から黙る。
「つまり」
「ああ」
「相手の顔も見えないところから」
「撃てる」
「大砲は?」
「さらに遠い」
「機関銃は?」
「多数へ連続して撃てる」
「飛行機は?」
「上空から爆弾を落とす」
エヴァの顔が、本気で嫌そうになる。
「嫌な戦争だな」
リーゼが机を叩く。
「貴様にだけは言われたくない!」
ティセラは、別の意味で絶句している。
「魔力が不要」
「不要だ」
「特殊な魔術師を育てなくても」
「工場で武器を作る」
「何千?」
「必要なら」
「何万?」
「国家総力戦なら、その規模になる」
ティセラ。
「……殺傷力の大量生産」
ノア。
「そうだね」
シズクが聞く。
「鉄砲があれば、弱い者でもエヴァのような強い人を殺せますか?」
エヴァがシズクを見る。
リーゼ。
「当てられれば可能性はある」
エヴァ。
「気に入らんな」
「何がだ」
「強い意味がない」
リーゼ。
「それが近代兵器だ!」
「やっぱり嫌な世界だ」
「貴様の軍馬は人を食うだろうが!」
ここまでは全員、リーゼの世界が一番恐ろしいと思っていた。
軒下のノアが口を開くまでは。




