第四十三話 教授は、シズクの世界では子供も性別も安定しないと知る
「出生について」
ティセラが言った。
リーゼがすでに嫌そうな顔をした。
「シズクだろ?」
「はい」
「絶対何かある」
シズク。
「失礼ですね」
ティセラ。
「子供は、どのように生まれますか?」
シズクは少し考え。
「普通に生まれることもあります」
沈黙。
エヴァ。
「他にもあるな」
「はい」
林。神社。道端。水辺。家の前。
時折、子供がいる。誰の子か分からない。
「捨て子では?」
リーゼ。
「そういう場合もあると思います」
「そうではない場合を、どう見分ける」
「何となく?」
リーゼ。
「何となくで人間を増やすな!」
ティセラが前へ出る。
「それ以前に存在した記録は?」
「ありません」
「突然?」
「そう言われます」
「親に似る?」
「似ることも」
「似ないことも?」
「あります」
ティセラ。
「チェンジリング?」
ノア。
「ああ」
リーゼ。
「また二人だけ通じるな!」
ティセラ。
「妖精種によって子供が交換される伝承です」
ノア。
「僕の前世にもあった」
ティセラ。
「あるいは、フェアリーリング型の空間移送――」
シズク。
「山で消えた子供が、何日か後に遠い村で見つかった話ならあります」
ティセラが机を叩いた。
「それを先に!」
「昔話ですよ?」
「記録は!?」
「ありません」
ティセラが本気で落ち込んだ。
そして、性別。
「男女は?」
「男、両性、女ですね」
ノアが即座に顔を上げる。
「両性!?」
リーゼ。
「聖者」
ノア。
「ふたなりいるの!?」
「聖者あああっ!」
エヴァが、腹を抱えて笑った。
シズク。
「いますよ?」
ノア。
「普通に?」
「はい」
「本当に両方――」
リーゼ。
「そこを細かく聞くな!」
ティセラは淡々と書く。
『成人個体に三性』
だが、シズクは続けた。
「子供の時は、よく変わります」
ティセラ。
「何が?」
「性別です」
沈黙。
男だった子が、女になる。女だった子が、両性になる。両性だった子が、男になる。
成長途中では珍しくない。成人へ近づくにつれてだんだん固定される。
リーゼ。
「魔法で?」
「いいえ」
「病気?」
「違います」
「普通に?」
「普通にです」
ノア。
「僕の前世の人間とは、生殖生理から違う」
ティセラ。
「そう考えるべきでしょうね」
リーゼが何かに気づいた。
「だからか」
シズク。
「何がです?」
「お前に男装、女装という話をしても、妙に反応が薄かった」
「服ですよね?」
「男が女の服を着るんだ!」
「着たいのでしょう?」
リーゼ。
「社会的な意味がある!」
シズク。
「子供なら、そのうち女になるかもしれません」
「大人なら!」
「大人なら、性別は変わりにくいですね」
「なら分かるだろう!」
シズクは考える。
「でも服ですよね?」
リーゼ。
「うがあああっ!」
ティセラが記録した。
『幼少期の性が流動的なため、衣服と性別の結びつきが弱い』
シズク。
「そんなに大事な違いですか?」
ティセラ。
「非常に」
また本人だけが不思議そうだった。




