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大瀑布の底のハーレム【一般公開版】 (R18版 日間76位ありがとうございます)  作者: 黒瀬 量衡
第二十章 谷底Ⅷ

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【一般公開版】第百五十話 知性は種としてですわ

夕方。


谷底が赤く染まり、リーゼは館の前で静かな景色を眺めていた。


「いい夕方だ」

「それ、最近言うと危なくない?」

スージーが猫耳を動かす。

「今日は大丈夫だ」

「根拠は?」

「ない」


どん。


地面が揺れた。


草原には、四メートル級の黒い軍馬と、同じほど巨大な白いペガサスがいた。地上の黒と低空を飛ぶペガサスが、並んで競走している。


黒が鼻を鳴らす。

「ぶひひひーん!」

そして。

「ヴォオオオッ!」


「後半が分からん!」


一方、ペガサスは大きな翼を広げ、凛々しく叫んだ。


「この程度で私が遅れるなどあり得ませんわ! 誇り高き天馬の飛翔をご覧なさい!」


直後、低い枝に翼を引っかけた。


「んおっ!」


姿勢を崩しながらも、どうにか飛び続ける。


リーゼが言った。

「言っていることと結果が釣り合っていない」


館の皆も騒ぎを聞いて集まってきた。ルヴァナは笑い、ネイラは風向きを読み、ティセラは記録板を取り出す。


「測るな」

「まだ何も言っていません」

「飛行速度と地面の振動を測りたい顔をしている!」

「興味深くはあります」


エヴァだけは平然としていた。

「黒は元気だな」

「貴様は毎回それだな!」


やがて競走は、障害物の多い竹林の脇へ入った。


ペガサスは高貴さを主張しながら枝へぶつかり、黒は馬らしく走りながら時々どう聞いても馬ではない声で吠える。


スージーがふと思い出したように言った。


「ペガサスって、知性とか詩とか、そういう高尚なものの象徴じゃなかった?」

ノアがうなずく。

「僕の前世の伝承では、詩の泉や神々の役目に結びつく話があったね」


夕焼けを背負う白い翼馬は、確かに神話的で優美だった。


そのペガサスは今、進路を間違えて同じ岩を二周している。


リーゼは遠くへ声を張った。

「おい、ペガサス! 貴様は知性の象徴ではないのか!」


白い耳がぴくりと動いた。


ペガサスは少し考え、非常に堂々と答える。


「私が、ではなく! 種としてですわ!」


全員が黙った。


最初にルヴァナが崩れた。

「自分で言った!」


リーゼは額を押さえる。

「今、自分は知性の象徴ではないと認めたな」

「違いますわ! 種として高度な象徴性を持つことと、個体が常時それを体現するかは別問題です!」

クロエが言う。

「論理としては正しい」

アスラもうなずいた。

「種の象徴性と個体差は分けるべきだ」

「そこを理論武装してやるな!」


ペガサスは勝ち誇り、前方不注意でまた枝に翼を引っかけた。


「私は十分に知的ですわ!」


スージーが笑う。

「説得力が毎回、自分の行動で消えていくのよね」


最後の直線、黒が地上を駆け、ペガサスが空から追う。二頭はほぼ同時にゴールへ飛び込んだ。


勝敗を巡って両者が騒ぎ始める。


「ぶひひひーん! ガオオオオッ!」

「私の翼が一枚、先でしたわ!」


リーゼは夕焼けを見た。


少し前に見つけた、普通のバナナを思い出す。黄色くて、甘くて、走らず、知性を主張しない。


「……明日の朝」

「はい?」

シズクが振り返る。

「バナナを出してくれ。普通のやつを」

「普通のバナナですよ」


リーゼは深くうなずいた。

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