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大瀑布の底のハーレム【一般公開版】 (R18版 日間76位ありがとうございます)  作者: 黒瀬 量衡
断章Ⅵ

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【一般公開版】第百四十話 母と娘

何がどうして、こうなったのか。


後になって四人で思い返してみても、誰一人として最初の一手を正確には説明できなかった。


クロエが何か言った。

アスラがそれに張り合った。

ネイラが「そこまでやるなら条件を揃えましょう」と言った。

ルヴァナが「じゃあ全員同じでよくない?」と笑った。


そこまでは覚えている。


「反応速度、二倍」

アスラが言った。

クロエが即座に返す。

「低い。十倍」

「貴様、自分にも掛けるのだろうな」

「当然だ」

「じゃあ、あたしも」

「公平にするなら、四人とも同条件です」


それが最後に聞こえた、まともな会話だった。


競技は全員対全員の模擬戦。魔力で作った柔らかな触手を使い、相手の肩、背中、腰につけた三つの標的を先に全部叩けば勝ち。ただし、自分自身も三人から同時に狙われる。


誰か一人が触手を増やせば、別の誰かが増やす。


「それ、ずるくない?」

「同数にすればよい」

「じゃあ増やすね」

「私も追加します」


結果、数える意味がなくなった。


最初の触手が動いた。誰が放ったものかは分からない。気づけば床から、壁から、天井から、色とりどりの術式が伸びていた。


クロエは三人を同時に狙う。

だがクロエ自身も三人から狙われる。


アスラも、ネイラも、ルヴァナも同じだ。


常に一対三。

それが四人分、同時に進む。


「背中、一つ!」

「甘い!」

「こっちも取ったよ!」

「左から来ます!」


触手が空を切り、標的札が弾け、回避用の煙幕が訓練場を覆う。誰かが誰かを集中して狙うのではない。全員が全員を攻め、全員が全員に追われていた。


クロエは電子機構で軌道を予測する。

アスラは魔法陣を重ねて数で押す。

ネイラは最小限の動きで死角へ回る。

ルヴァナは笑いながら正面突破する。


「まだまだ!」

アスラが触手を増やした。


「負けるか!」

クロエが空中へ足場を作る。


「あたしも!」

ルヴァナが壁を蹴る。


「最後まで諦めません!」

ネイラが三人の隙を同時に突いた。


四人の標的は一枚、また一枚と減っていく。誰かが残り一枚になれば、他の三人もほぼ同時に残り一枚になる。条件を揃えすぎたせいで、いつまでたっても差がつかない。


そこでクロエが言った。


「第二段階だ」


訓練場の床から、今度は無数の光る球が現れた。触手で自分の球を守りながら、相手の球を場外へ運ぶ追加競技らしい。


「聞いてないぞ!」

「今決めた」

「ならば受けて立つ!」

「また条件を揃えないと」

「全員十個でいいよね!」


さらに混沌が増した。


自分の標的を守り、三人の標的を狙い、自分の球を守り、三人の球を奪う。誰の触手がどこへ向かっているのか、もう本人たちにすら分からない。


それでも四人は笑っていた。


「これが、うちのやり方だ!」

「忍者流だ!」

「根性と気合!」

「全員で限界突破です!」


最後は四人が同時に最後の標的へ手を伸ばし、同時に最後の球を場外へ放り出した。


訓練場に警報が鳴る。

勝敗表示は、四人とも『判定不能』。


四人はその場に崩れ落ちた。



朝。


露天風呂から湯気が上がる。肩まで湯に浸かった四人は、そろってぼろぼろだった。


温かい湯。

朝の空気。

遠くで水車と水槌ポンプの音。


「コケッ」


鶏の木。


四人は同時に息を吐いた。


「限界訓練の後の露天風呂は気持ちいい」


声まできれいに重なった。


少しして、ルヴァナが聞く。


「で、誰が勝ったの?」


沈黙。


クロエが答える。

「私だ」

アスラも即答する。

「私だ」

ネイラも。

「私だと思います」

ルヴァナも。

「あたしでしょ」


四人の目が合った。


そして、全員が同時に言った。


「再戦だな」


露天風呂の外から、リーゼの声が飛んできた。


「やるなああっ!」

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