↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大瀑布の底のハーレム【一般公開版】 (R18版 日間76位ありがとうございます)  作者: 黒瀬 量衡
断章Ⅵ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

138/193

【一般公開版】第百三十八話 師匠と弟子

ルヴァナがその話を思い出したのは、夕食のあとだった。


以前、エヴァの国には、向かい合って一撃ずつ技を出し合う力比べがあると聞いた。どちらか一方だけが攻め続けるのではない。交互に、同じ条件で、相手の構えを崩せるか競うのだという。


「師匠。あれ、やってみたい」

「本気か?」

「うん。手加減なしで」


エヴァは水筒の蓋を閉じ、にやりと笑った。


「泣いても知らねえぞ」

「師匠こそ」


二人はアスラに頼み、訓練場へ衝撃吸収の結界を張ってもらった。さらにルヴァナは母たちの技術を借り、腰に打撃用の柔らかな補助肢を形成する。先端は丸く、当たっても傷にはならないが、相手を押し戻すには十分な強度がある。


「私だけ装備付きじゃ公平じゃない」

「別に構わねえぞ」

「よくない。師匠にも同じの付ける」

「面白え。そうこなくちゃな」


まったく同じ長さ、重さ、弾力。条件を揃えた二人は、円形に区切られた訓練場の中央で向かい合った。


勝敗は、場外へ押し出されるか、降参するか。


「弟子に先手をやる」

「後悔しても知らないから!」


ルヴァナは腰を大きくひねり、補助肢を槍のように繰り出した。エヴァは両腕で受け止めたが、靴底が石床を削り、半歩だけ後退する。


「いいの打つじゃねえか」

「次、師匠」

「覚悟しろよ」


エヴァの一撃は重かった。ルヴァナは結界ぎりぎりまで弾き飛ばされ、片膝をつく。それでも笑いながら立ち上がった。


「まだ一回だから!」

「その意気だ」


一撃ずつ。交互に。二人は何度も打ち合った。


ルヴァナは回転を加え、エヴァは足腰の強さで押し返す。石床に靴音が響き、衝撃吸収の結界が青白く明滅した。見物に来たアスラが途中から回数を数え始めたが、二十を超えたところで諦めた。


「師匠、強すぎ!」

「お前も十分強いわ!」

「でも負けない!」

「いいぞ、来い!」


エヴァの鋭い一撃で、ルヴァナの身体が宙を舞った。今度こそ場外かと思われたが、彼女は補助肢を床へ突き立て、ぎりぎりで踏みとどまる。


「おーい。まだやるのか?」

「まだ」

「無理すんな」

「弟子が師匠を超えるまで終われない」


ルヴァナの目に焦点が戻る。構え直した姿を見て、エヴァは心底うれしそうに笑った。


「じゃあ次はお前の番だ」

「今度こそ飛ばす!」


ルヴァナは助走をつけた。エヴァも真正面から受ける。二つの補助肢が同時にぶつかり、結界全体が鐘のような音を立てた。


次の瞬間、二人とも反対方向へ吹き飛び、そろって場外に転がった。


しばらく沈黙が続く。


「引き分け、でいいのか?」

見守っていたアスラが聞く。


ルヴァナは仰向けのまま答えた。

「次は勝つ」

エヴァも空を見上げたまま笑った。

「百年早い」


その声には、弟子の成長を喜ぶ響きがあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。