第百三十二話 科学文明仲間
翌朝、スージーは自分の足で食堂まで歩いてきた。
昨日より顔色はよく、猫耳もしっかり立っている。濡れていた服はまだ乾燥中なので、今は館にあった服を借りていたが、そこで最初の問題が起きていた。
「……肩は合ってるんだけど、ここがきついわね」
スージーが胸元を引っ張る。
シズクが申し訳なさそうに言った。
「もう一つ大きいものを探してきましょうか」
「お願い。これだと動くたびに引っ張られる」
朝食の席からその様子を見ていたリーゼは、ティセラを見た。
次にスージーを見る。
もう一度、ティセラを見る。
「……教授以上に大きいではないか」
ティセラが食事の手を止めた。
「何の比較ですか?」
スージーもリーゼを見る。
「何でそこを比較したの?」
「いや、小官にもよく分からん」
「じゃあ言わないでよ」
「貴様が小官と近い文明の出身だと分かったので、何となく全体的に常識的な範囲へ収まっていると思っていた!」
スージーは自分の胸を見る。
次にリーゼを見る。
「科学技術の発達と胸囲に関係ある?」
「ない!」
「じゃあ何の話なのよ」
「だから小官にも分からんと言っている!」
エヴァが笑い出した。
ルヴァナも肉を食べながら笑う。
「大尉、普通の仲間が来たと思って期待しすぎじゃん」
「そうだ!」
リーゼはもう隠さなかった。
「飛行機が通じる! 銃も鉄道も電気も発電機も通じる! 地図を見せれば縮尺や方位から確認する! 大学も研究者も説明しなくていい! これがどれほどありがたいか、貴様らには分からん!」
スージーも少し笑った。
「それは私も同じ。昨日、大尉の地図を見た時はかなり安心したわよ」
リーゼの顔が明るくなる。
「そうだろう!」
「測量の仕方も分かるし、軍用地図の記号は違っても考え方は同じ。飛行機だって私のところにもあるし、発電所も電話も鉄道もある」
「そうだ。これだ!」
リーゼは机を軽く叩いた。
「説明しても理解されるのではない。最初から前提が通じる!」
クロエが首を傾げた。
「私とも機械の話は通じているだろう」
リーゼがクロエを見る。
「貴様は発達しすぎている!」
「方向は同じだ」
「途中まではな!」
アスラが口を挟む。
「では私の魔術も説明すれば理解できる」
「貴様は入口から違う!」
アスラは不満そうだった。
ネイラが静かに言う。
「でもクロエ母さんとアスラ母さん、同じ世界ですよ」
スージーの猫耳が動いた。
「それ、昨日から気になってた」
クロエとアスラを見る。
褐色の肌と銀髪を持ち、身体へ機械を組み込んだダークエルフ。
青い肌と紫髪を持ち、魔法陣や魔術核を扱う魔族。
「本当に同じところから来たの?」
クロエが答える。
「同じ世界だ」
アスラも頷く。
「地域や技術体系は異なるがな」
スージーは少し黙った。
「……何で?」
リーゼが深く頷いた。
「小官も最初にそこを聞いた」
「答えは?」
「文明の高さより、伸ばした方向が違うそうだ」
スージーはさらに困った顔をした。
朝食を終えると、リーゼはスージーへ館の生活設備を見せることにした。
昨日は地図と事情説明だけで終わった。今日は、実際にこの谷底で何を使って暮らしているのかを見てもらう。
「物置は?」
歩き出してすぐ、スージーが聞いた。
「後だ」
「昨日もそう言った」
「まず生活設備を見ろ。漂着物がどう使われているかを知らんまま物だけ見ても分からんだろう」
スージーは少し考えた。
「それは正しい」
リーゼの顔が明るくなる。
「そうだろう!」
ティセラが後ろから言った。
「その途中で試料保管場所にも寄れますね」
「教授は余計な経路を追加するな」
最初に案内したのは水回りだった。
上流から引いた飲料水。砂や炭を使った濾過。調理用の水場。水中へ籠を沈めて冷やす簡易的な保存場所。そして水流を利用する洗濯設備、バルトリ。
スージーは一つずつ確認したが、驚き方が今までの新参者とは違った。
「砂と炭の濾過ね。水源がこれだけ近くて人口も少ないなら、かなり実用的」
リーゼが頷く。
「分かるか」
「私のところにも似た設備はあるわよ。都市ならもっと大規模だけど」
「そうだろう!」
バルトリを見ても、
「水流式の洗濯設備か。電気を使わないならここでは合理的ね」
で終わった。
リーゼは感動していた。
「説明が要らん!」
スージーが笑う。
「そんなに?」
「シズクへ飛行機を説明するところから始めた小官の気持ちが分かるか!」
少し離れたところでシズクが言った。
「今は飛行機が何か分かりますよ」
「そういう問題ではない!」
次に水車へ向かう。
大きな木の輪が水流を受けて回っている。軸から取った回転は発電設備へ送られ、一部は別の用途にも使われている。
スージーは一目見て言った。
「水力ね」
「そうだ」
「発電も?」
「している」
「発電機見たい」
「そうなると思った」
工作室へ入ると、スージーの猫耳がすぐに立った。
そこには、最近まで散々試作を繰り返していたものが並んでいる。
水車へ接続された発電設備。
取り外した古い巻線。
絶縁材。
配線。
小型発電機。
小型電動機。
木製の羽根を付けた送風機。
径の違う輪と帯。
減速用の歯車。
試作途中の軸受け。
さらに、使えるかもしれないと回収してある金属部品。
スージーは小型発電機の前へしゃがんだ。
「これ、ここで作ったの?」
クロエが答える。
「既存の部品もかなり使っている」
「磁石は?」
「ここだ」
「巻線は巻き直した?」
「ああ」
「絶縁は?」
「漂着物から回収した素材と、こちらで加工した植物由来の材料」
スージーは発電機を覗き込む。
触れようとして、手を止めた。
「触っていい?」
リーゼが振り向いた。
「聞いた!」
「何が?」
「勝手に分解しない!」
クロエが言う。
「普通では?」
リーゼはクロエを指差した。
「貴様は谷底へ来て間もない頃から、構造を確認すると称して何でも触っただろう!」
「必要だった」
「そういうところだ!」
ネイラがクロエを見る。
「クロエ母さん、今回は大尉の方が正しいと思う」
クロエは黙った。
スージーは許可を得て発電機を手で回す。
「軸、少し振れてる?」
リーゼがすぐ答える。
「気づいたか!」
「この固定だと長く回した時に振動が出ない?」
「小官も補強を提案した」
クロエが言う。
「現状の負荷なら許容範囲だ」
スージーは軸の付け根を見る。
「でも長期なら、硬く固定するだけじゃなくて振動を逃がす方がよくない?」
リーゼが机を叩いた。
「そうだ!」
全員がリーゼを見る。
リーゼは胸を張った。
「何だ。楽しいぞ」
エヴァが笑う。
「よかったな、大尉」
「よかった!」
スージーは次に小型電動機を見る。
配線を確認し、軸を回し、周囲に置かれている帯と輪を見る。
「こっちは回す側ね」
「そうだ」
「電動機で何を回してるの?」
クロエが送風機を示した。
「まずこれ」
スージーは羽根と覆いを見る。
「送風機か」
シズクが説明する。
「穀物を風で選り分けるために使っています。今は乾燥にも使っています」
「食料、薬草、布で場所は分けている」
リーゼが補足する。
スージーが頷く。
「当然ね。薬草の匂いが食料へ移っても困るし、布の埃もある」
リーゼが満足そうに頷く。
「そうだ」
ルヴァナが横から言う。
「人が涼む時は空いてる方を使う」
リーゼの顔が曇った。
スージーは少し考えた。
「それも別にいいんじゃない?」
「貴様まで肯定するな!」
さらに。
エヴァが得意そうに案内した。
「肉も回せるぞ」
スージーが止まる。
「肉?」
調理場の外。
先日完成した回転肉焼き器。
電動機から減速した回転を長い軸へ伝え、肉をゆっくり回す。
スージーはしばらく眺めた。
「なるほど」
リーゼが嫌な予感を覚える。
「何が、なるほどだ」
「回転運動を一定に保つなら、こういう用途は普通にありでしょ」
エヴァが嬉しそうに笑う。
「分かってるじゃねえか」
「大きい肉を焼くなら便利よね」
「だろ?」
リーゼが頭を抱えた。
「小型電動機開発の成果が、何故最後に肉へ行ったのだ……」
「実用になってるならいいじゃない」
「分かっている! それでも釈然としないんだ!」
だが。
ここまではよかった。
リーゼにとって、実に気分のいい時間だった。
水力。
発電。
電動機。
軸。
歯車。
減速。
送風。
どれもスージーには通じる。
細かな規格や設計思想は違っても、同じ地面に立って話ができる。
ようやく仲間ができた。
本気でそう思った。
クロエが言った。
「なら、次は私の技術を見るか?」
リーゼの顔が止まった。
「待て」
スージーが振り向く。
「何?」
クロエは銀髪を少し持ち上げた。
首筋。
皮膚の一部に埋め込まれた接続端子。
スージーが近づく。
「これ、端子?」
「神経接続用だ」
猫耳が立つ。
「神経と直接繋がってるの?」
「ああ」
「外部機器と?」
「それもできる」
スージーは端子を凝視する。
「生体側の信号を読んでる?」
「読むし、書き込む」
「双方向?」
「そうだ」
スージーの表情が変わる。
今度は驚いているが、何が起きているか自体は理解している。
「大尉」
「何だ」
「方向は分かる」
「小官もだ」
「生体電気信号を読んで、機械側で処理して、必要なら神経へ戻してるのよね?」
「大雑把にはそうらしい」
「作れる?」
「無理だ」
「私も」
クロエが言った。
「そうか」
リーゼとスージーが同時にクロエを見る。
「その反応が腹立つ!」
声まで揃った。
二人は顔を見合わせる。
スージーが笑った。
「ここまでは一緒ね」
「ああ。科学技術の延長には見える。だが何世代先にあるのか分からん」
クロエはさらに、自分たちの側で発達した技術について説明した。
情報処理。
通信。
神経接続。
身体補助。
視覚演算。
機械と人間の直接接続。
身体情報の保存。
そして死亡に備えた電子的なバックアップ。
最後まで聞いたスージーは、近くの椅子へ座った。
リーゼも隣へ座る。
スージーが言う。
「私、自分たちの文明ってかなり進んでると思ってた」
「小官もだ」
「急に古代人になった気分」
「小官はもう慣れた」
「慣れるの?」
「慣れたくなくてもな」
そこでアスラが笑った。
「クロエだけ見せて終わりか?」
リーゼが嫌な顔をする。
「来たな」
スージーがアスラを見る。
「あなたも同じ世界なんでしょう?」
「そうだ」
「クロエとは別の国?」
「地域も文化も違う。得意とする技術体系も違う」
アスラは片手を上げた。
掌の前に魔法陣が開く。
何重もの円。
文字。
幾何学模様。
紫色の光。
スージーの猫耳が完全に立った。
「……同じ世界?」
「同じだ」
「この人と?」
クロエを指す。
「ああ」
「神経を機械へ直接繋ぐ文明と、空中に魔法陣を出す文明が?」
クロエが言う。
「共存している」
アスラも続ける。
「都市によっては混在している」
スージーが固まった。
「混ざってるの!?」
リーゼが頷く。
「小官もそこが一番分からん」
アスラが魔法陣の上へ小さな炎を出した。
スージーがすぐ聞く。
「エネルギー源は?」
「魔力」
「魔力って何?」
「魔力だ」
スージーはリーゼを見る。
リーゼが深く頷いた。
「小官もその問答をした」
「結果は?」
「分からん」
「測れる?」
後ろからティセラが答えた。
「測れます」
スージーが振り向く。
ティセラは少し嬉しそうだった。
「測定方法はいくつかあります。魔宝石式、術式偏向式、魔力密度を直接比較する方法もあります」
スージーが立ち上がる。
「単位は?」
「体系によって異なります。統一はされていません」
「記録は?」
「あります」
「見たい」
「研究室に――」
リーゼが二人の間へ入った。
「待て!」
スージーが止まる。
「何?」
「貴様、今日は館の案内を受けているんだろう!」
「でも魔力を測れるのよ?」
「分かっている!」
「しかも同じ世界の中で、一方はサイバー技術、一方は魔術をここまで発達させてるのよ?」
「それも分かっている!」
「文明比較としてものすごく面白いじゃない!」
ティセラが頷く。
「非常に興味深いです」
リーゼはティセラを見る。
「教授は参加するな!」
「私は元から参加者ですが」
「そういうところだ!」
スージーはクロエとアスラを交互に見る。
「ねえ、二人の世界では、科学と魔術って対立してるの?」
クロエが答える。
「場所による」
アスラも言う。
「対立する勢力もある。混ぜる者もいる。どちらも使う都市もある」
「教育制度は?」
「地域による」
「軍事技術は?」
「両方ある」
「通信も?」
クロエが言う。
「電子通信もある」
アスラが言う。
「魔術通信もある」
「一緒に使うことも?」
「ある」
スージーは頭を抱えた。
「文明の枝分かれが多すぎる……」
リーゼが横で頷く。
「そうだろう」
「大尉、よく平気だったわね」
「平気ではない。毎回理解するたびに疲れている」
「今、すごく分かった」
その一言で、リーゼは少し救われた。
館の外へ出る。
頭を冷やすためでもあった。
そこには、今までの話とは別方向に理解しづらいものが待っていた。
畑では昨日抜いたはずの草がもう伸び始めている。
鶏の木が鳴く。
「コケッ」
その根元の幼木が応える。
「ピヨ」
「ピヨピヨ」
遠くでは黒、キマイラ、鵺、ユニコーン、ペガサスが地面を揺らしながら走っている。
スージーは立ち止まった。
「……あれ、昨日私を拾ったやつよね」
「キマイラだ」
リーゼが答える。
「横のは?」
「鵺」
「白い角」
「ユニコーン」
「羽根」
「ペガサス」
スージーはしばらく見ていた。
「全部、普通に暮らしてるの?」
「そうだ」
「誰も檻に入れてない?」
「入る大きさではない」
「そこじゃない」
リーゼが肩をすくめた。
「小官にも最初は全部おかしく見えた」
鶏の木がまた鳴く。
「コケッ」
スージーの耳が動いた。
木を見る。
周囲を見る。
やはり鳥はいない。
「本当に木なの?」
シズクが答える。
「はい」
「幼木がピヨピヨ鳴いてるのも?」
「はい」
「どうして?」
「分かりません」
スージーがリーゼを見る。
リーゼが両手を上げる。
「小官を見るな」
畑の端へ行く。
スージーが草を見る。
「この芽、昨日から?」
シズクが頷く。
「昨日草を抜いた場所です」
「昨日?」
「はい」
「ここまで伸びたの?」
「谷底では、植物がおよそ地上の十倍ほどの速さで育つようです」
スージーの猫耳が立った。
「土壌は?」
リーゼが顔をしかめた。
「始まった」
「栄養塩は? 連作障害は?」
ティセラがすぐ答える。
「現在のところ、通常の土地ほど地力低下が見られません」
「何で?」
「それを調査しています」
「試料ある?」
「あります」
「見る」
「もちろんです」
リーゼが割り込む。
「待て!」
二人が見る。
「小官は貴様が来た時、ようやく科学文明の仲間ができたと思った!」
スージーが首を傾げる。
「仲間でしょ?」
「そうだ! そこは間違いない!」
「じゃあ何?」
リーゼはティセラを指差した。
「何故、教授と組む!」
スージーが教授を見る。
「学者だから?」
ティセラも頷く。
「学者ですから」
「そういうところまで教授と同じになるな!」
エヴァが笑っている。
ノアも少し離れた場所で苦笑していた。
ルヴァナはネイラへ小声で言う。
「大尉、喜んだり怒ったり忙しいね」
ネイラも小さく笑う。
「でも楽しそう」
スージーは畑から顔を上げた。
その向こう。
巨大な生物たちが走っている。
木が鳴く。
植物が異常な速さで育つ。
遠くには、巨大魚が巨大鳥を食べる滝壺がある。
一方。
館の中には、近代的な発電機と電動機。
さらにその先に、神経と機械を繋ぐサイバー技術。
同じ世界の別系統には、魔術を通信や身体や戦闘へ組み込んだ文明。
そしてティセラの世界では、魔法を測定し、教育し、都市設備へ組み込んでいる。
スージーはしばらく黙っていた。
やがてリーゼへ聞く。
「ねえ、大尉」
「何だ」
「ここの生態系、本当に成立してるの?」
リーゼの顔が、ぱっと明るくなった。
「そうだろう!」
「え?」
「その疑問を持ってくれる人間を待っていた!」
リーゼはスージーを指差す。
「巨大鳥を巨大魚が食う! 植物は十倍で育つ! 木が鶏のように鳴く! 四メートル級のキマイラが普通に歩いている! おかしいと思うだろう!」
「思う!」
「そうだろう!」
二人の意見が初めて完全に一致した。
ところがティセラが横から言った。
「ですが、現に個体群と植生が維持されています。成立している以上、まず観察し、何がその環境を支えているのか確認すべきでしょう」
スージーがすぐ頷いた。
「それもそうね」
リーゼが固まった。
「おい」
スージーがティセラを見る。
「滝壺の巨大魚、記録ある?」
「あります」
「捕食対象は?」
「複数確認しています」
「大きさの推定は?」
「不十分です。距離があるため」
「じゃあ観測地点を決めて――」
「教授!」
リーゼの声が響いた。
スージーとティセラが同時に振り向く。
リーゼは頭を抱えていた。
「小官と同じ科学文明の仲間が来たと思ったのに、何故教授が二人に増えたような状態になるんだ!」
スージーが言う。
「私は考古学者よ」
「暴走する方向が違うだけだ!」
ティセラが真面目に言った。
「それは重要な違いです」
「教授は黙れ!」
その時。
スージーが思い出した。
「そうだ」
リーゼが警戒する。
「今度は何だ」
「物置」
リーゼの顔が止まった。
「……覚えていたか」
「当然でしょ。由来不明の漂着物が山ほどあるんでしょう?」
猫耳がまっすぐ立つ。
ティセラまで横から言った。
「私も同行します」
リーゼは二人を見る。
科学文明の仲間。
魔術科学の教授。
二人の学者。
そして、その先には長年積み上げられた正体不明の漂着物。
嫌な未来しか見えなかった。
「……見るだけだぞ」
スージーが笑う。
「まずはね」
ティセラも頷く。
「まずは」
リーゼの眉が動いた。
「その『まずは』は何だ!」
二人はもう物置の方向へ歩き始めている。
リーゼは慌てて後を追った。
「待て! 勝手に分類を変えるな! 古い記録と照合する前に移動させるな! 特に教授、試料として持ち出すな!」
スージーが振り返る。
「大尉」
「何だ!」
「採取地点の記録、ちゃんと残してるのよね?」
リーゼは胸を張った。
「小官が来て以降はな!」
スージーの猫耳が嬉しそうに立った。
「やっぱり大尉、最高」
リーゼは一瞬だけ嬉しくなった。
その直後。
ティセラが言った。
「では記録と現物を突き合わせながら再分類しましょう」
スージーが即答した。
「やりましょう」
リーゼは両手で顔を覆った。
「やはり教授が増えているではないか……」




