第百二十四話 送風
この前、収穫した穀物を手回しの脱穀機へかけた。
穂から粒を外すところまでは、かなり楽になった。
問題は、その後だった。
朝食を終えた共同食事場の長机には、大きな籠が置かれている。
籠の中には穀粒。
そして。
細かな殻。
短く折れた藁。
葉の欠片。
その他、軽いものが大量に混じっていた。
シズクが籠を両手で持ち上げる。
少し傾ける。
「本来なら、風のある日に少し高いところから落として、軽いものだけ飛ばします」
リーゼが覗き込んだ。
「重い粒は下へ落ちる」
「はい」
「軽い殻や藁は横へ流れる」
「そうです」
リーゼは外を見る。
木の葉がほとんど動いていない。
「今日は?」
「風がありません」
「昨日は?」
「弱かったです」
「一昨日は?」
「雨でした」
リーゼはしばらく空を見た。
それからクロエを見る。
クロエは既に小型電動機を持っていた。
「何故もう持っている」
「使うと思った」
「小官が何も言っていないうちから準備するな!」
クロエが首を傾げる。
「必要なのだろう?」
「必要だ!」
リーゼは答えてから、額を押さえた。
「必要なのが腹立たしい……」
ノアが籠の穀物を指先ですくった。
「前に送風機を作ろうって話はしてたからね。ちょうどいいんじゃないかな」
ネイラもクロエの横から電動機を見る。
「羽根をつければいい?」
「基本はそうだ」
クロエが答える。
リーゼはすぐに指を立てた。
「待て。むき出しの羽根を高速で回すな。誰かの指が入る」
ルヴァナが言う。
「そんなとこに指入れる?」
リーゼが振り向く。
「貴様は入れそうだから言っている!」
「入れないって」
エヴァが横から覗く。
「俺なら止められるぞ」
「手で止めるな!」
「まだ作ってねえだろ」
「作る前から危険人物が二人いるんだ!」
ルヴァナがエヴァを見る。
「師匠、あたしも止められるかな」
「羽根の方が壊れるんじゃねえか?」
「試してみたい」
「試すなと言っている!」
朝からリーゼの声が響いた。
結局、送風機はクロエ一人には任せず、リーゼ、ノア、ネイラも一緒に作ることになった。
小型電動機へ直接大きな羽根をつけるのではなく、軸を介する。
木を薄く削って羽根を作る。
その周囲へ木枠を組む。
さらに前面には、指や大きな異物が入りにくいよう格子をつける。
クロエは電動機側。
リーゼは羽根の形と軸。
ノアは木枠。
ネイラは出来上がった部品を一つずつ見て、組み方を覚えていく。
シズクとルヴァナは穀物を運んでいた。
ティセラとアスラも途中から見に来た。
ティセラが聞く。
「風量はどの程度を予定していますか?」
リーゼが答える。
「分からん」
教授が少し意外そうな顔をした。
「測らないのですか?」
「最初から必要な風量が分かるなら苦労しない。まず回す。弱ければ強くする。強ければ弱くする」
ノアも頷く。
「穀物の重さも種類で違うからね」
シズクが言う。
「籾殻だけなら、あまり強い風はいりません」
クロエが電動機を見る。
「なら最初は低回転でいい」
リーゼが睨む。
「貴様の低回転は信用できん」
「何故だ」
「この前、回転するものを見るたびに速くしようとしていただろう!」
ネイラが静かにクロエを見る。
クロエは少し考えた。
「速い方が性能を確認しやすい」
「ほら見ろ!」
アスラが笑う。
「クロエらしいではないか」
「貴様も魔力を入れればすぐ最大まで上げるだろう!」
「最大で耐えれば、それ以下でも耐える」
「忍者二人の試験方法を生活道具へ持ち込むな!」
ネイラが小さく咳払いした。
「クロエ母さん。今回は食べ物だから」
「分かった」
クロエは素直に引いた。
リーゼがネイラを見る。
「貴様の方が話が早いな」
「昔からです」
「昔からなのか……」
試作品が完成した。
木枠の中で羽根が回る。
前には格子。
後ろから空気を吸い込み、前へ押し出す。
クロエが導線を繋ぐ。
「回すぞ」
リーゼが全員を見る。
「手を出すなよ」
ルヴァナが両手を背中へ回した。
「出さないって」
エヴァも腕を組む。
「俺も出さねえよ」
「貴様らだけに言った!」
電気を流す。
ぶん。
羽根が回り始める。
前へ風が出る。
シズクの髪が揺れた。
ルヴァナの髪も揺れる。
「おお」
エヴァが手をかざした。
「ちゃんと風だな」
リーゼが言う。
「当たり前だ」
「魔法じゃないのに?」
アスラが聞く。
「羽根で空気を押しているだけだ」
「それで風になる?」
「なる!」
アスラは少し面白そうに羽根を見る。
「では魔術で羽根を回しても同じか」
「同じだ!」
「なら電気である必要は?」
リーゼが止まった。
クロエが答える。
「魔術を使える者がいなくても動く」
アスラがクロエを見る。
「なるほど」
リーゼも頷いた。
「そういうことだ。誰でも同じように使えるのが機械の利点だ」
ルヴァナが手を上げる。
「あたしでも?」
「貴様の場合は使えるが壊すな」
「信用ないなあ」
「これまでの実績だ!」
シズクが穀物の入った籠を持ってくる。
「では、試してみますか?」
「やろう」
簡単な台を置く。
その横から送風機の風を当てる。
上から少しずつ穀物を落とす。
シズクが籠を傾けた。
さらさら。
粒が落ちる。
同時に。
ぶわっ。
藁くずが飛んだ。
籾殻も飛んだ。
そして。
穀粒も飛んだ。
全員が目で追う。
ぱらぱらぱら。
かなりの量の穀物が地面へ散った。
沈黙があった。
リーゼがゆっくりクロエを見る。
「強い」
クロエが答える。
「強かったな」
「貴様!」
「低回転にはした」
「低回転でこれか!」
ルヴァナは笑いを堪えている。
エヴァは地面へ落ちた粒を見た。
「拾えば食える」
シズクがすぐ答える。
「拾います」
「そこではない!」
リーゼが叫んだ。
ノアが送風機の前へ手を出す。
「回転数だけじゃなくて、風の出口を絞る方が調整しやすいかもね」
ネイラが首を傾げた。
「板で塞ぐ?」
「全部じゃなくて、開く大きさを変える」
リーゼが頷く。
「羽根の回転を毎回変えるより簡単だな」
クロエが木枠を見る。
「前へ可動板をつけよう」
ネイラがすぐ板を持ってくる。
細長い板を何枚か並べる。
角度を変えれば、風の抜ける量を調整できる。
リーゼが一本動かした。
「全部開けば強い。半分閉じれば弱い」
ルヴァナが言う。
「窓みたい」
「だいたいそんなものだ」
今度はかなり閉じる。
再び回す。
シズクが穀物を落とした。
さらさら。
軽い殻が横へ飛ぶ。
藁も流れる。
重い粒は、ほぼ真下へ落ちる。
シズクの顔が明るくなった。
「これです」
リーゼも見る。
「粒は?」
ネイラが下の籠を確認する。
「ほとんど残っています」
「殻は?」
ルヴァナが横へ置いた布を見る。
「こっち。めっちゃ飛んでる」
クロエが可動板を少し動かす。
「もう少し強くできる」
シズクが言う。
「少しだけお願いします」
「分かった」
また穀物を落とす。
さらさら。
ぶわ。
今度はさらに綺麗に分かれた。
粒が下。
軽いものが横。
リーゼは腕を組んだ。
「使えるな」
シズクが何度も頷く。
「とても早いです」
この前まで、風を待っていた。
風のある日に外へ出る。
強すぎれば待つ。
弱すぎても待つ。
雨ならできない。
それが今は。
電気を流せば風が出る。
必要な強さへ調整できる。
シズクは回る羽根を不思議そうに見た。
「風まで作れるのですね」
ノアが言う。
「風そのものを作ってるというより、空気を動かしてるだけなんだけどね」
「私には同じに見えます」
リーゼも少し笑った。
「実用上はそれでいい」
そこから作業は一気に進んだ。
脱穀済みの穀物を上から流す。
殻が飛ぶ。
藁が飛ぶ。
粒だけ集まる。
ルヴァナは穀物を運ぶ。
ネイラは落とす量を調整する。
シズクは仕分け後の状態を見る。
エヴァは大量の籠を持ってくる。
ティセラは途中から、飛んでくる軽い植物片を見始めた。
リーゼが気づく。
「教授」
「はい」
「何を拾っている」
「混入物です」
「捨てるものだぞ」
「どの植物が混入しやすいのか記録できます」
「今日でなくてもいい!」
「今日だから採れる試料です」
「研究を始めるな!」
アスラが笑った。
「諦めろ、大尉。教授はそういう生き物だ」
ティセラが振り向く。
「生き物扱いしないでください」
「研究対象として興味深い」
「アスラ」
「冗談だ」
「本当ですか?」
リーゼが頭を抱えた。
穀物の山は、昼前にはかなり減っていた。
途中。
シズクが別の籠を持ってきた。
鮮やかな色をした、ニンジンのような形の作物だった。
ルヴァナが見て言う。
「あ、それは風いらないやつじゃん」
「そうですね」
シズクが一本抜くように口を開ける。
中から、既に綺麗な穀粒がさらさらと出てきた。
リーゼはそれを見る。
「何度見ても納得しづらいな」
ノアが笑う。
「でも便利だよね」
「便利すぎる」
シズクは色の違うものも並べた。
中には麦。
別のものには粉まで入っている。
「こちらは最初から分ける必要がありません。ただ、普通の穂に実る穀物も味が違いますし、料理によって使い分けたいので」
リーゼが頷いた。
「だから脱穀機も送風機も無駄にはならない」
「はい」
クロエが言う。
「作物側が完成品を出すか、機械で加工するかの違いだな」
リーゼが嫌そうな顔をした。
「谷底では作物側が加工工程を省略してくるのか……」
「第五よりは普通です」
ティセラが言った。
「第五を比較基準にするな!」
昼食の後。
選り分けた穀物を今度は乾燥させることになった。
シズクが浅い籠へ広げる。
リーゼが聞く。
「これは外へ?」
「晴れていれば外でもよいのですが、今日は湿り気があります」
空には雲が増えていた。
風もほとんどない。
リーゼが送風機を見る。
シズクも見た。
二人の視線が合う。
リーゼが嫌な顔をした。
「……使うのか」
シズクが微笑んだ。
「風ですから」
「そうだな」
クロエがすぐ持ち上げる。
「移動するぞ」
リーゼが叫ぶ。
「貴様は何故毎回行動が早い!」
屋根のある乾燥場所へ運ぶ。
浅い籠を何段か並べる。
送風機を置く。
ただし、穀物へ直接強風を当てれば、また飛ぶ。
そこで風を弱くする。
さらに真正面ではなく、少し下から広く流す。
シズクが手をかざした。
「これくらいなら」
「飛ばない?」
「はい」
クロエが固定する。
風が流れる。
穀粒の表面を、穏やかに空気が抜けていく。
ティセラが薬草を持ってきた。
リーゼが振り返った。
「教授」
「何でしょう」
「それは何だ」
「乾燥させたい薬草です」
「待て」
「風があるのでしょう?」
「ある」
「屋根もあります」
「ある」
「なら乾燥に向いています」
「理屈は分かる!」
ティセラは既に空いている場所へ薬草を並べ始めた。
シズクが言う。
「薬草と食べ物は少し離した方がよいですね」
ティセラが止まる。
「匂いですか?」
「はい。強いものがありますので」
「では向こう側へ」
リーゼが少し安心した。
「教授が素直だ」
「食料試料への混入は避けるべきです」
「結局研究基準なのか」
そこへルヴァナが来た。
腕に洗った布を抱えている。
「ここ風あるんだよね?」
リーゼが嫌な予感を覚える。
「何を持ってきた」
「洗濯物」
「待て」
「乾くじゃん」
「待て!」
ルヴァナは止まった。
「何?」
リーゼは穀物を見る。
薬草を見る。
洗濯物を見る。
「一緒に乾かすな!」
「端ならよくない?」
「布の埃が穀物へ飛ぶ!」
シズクも頷く。
「それに薬草の匂いが衣に移るかもしれません」
ルヴァナが自分の服を見る。
「それはちょっとやだ」
「だろう!」
エヴァが大きな布を持ってやって来た。
「じゃあこっちは?」
リーゼが叫ぶ。
「貴様まで何を持ってきた!」
「寝具」
「もっと駄目だ!」
「乾くんだろ?」
「乾くが場所を分けろ!」
エヴァが周囲を見る。
「広いぞ」
リーゼの眉が動いた。
「広さを理由に何でも置くな!」
ノアが苦笑した。
「乾燥場所を分けようか」
全員がノアを見る。
「食料用。薬草用。布用」
シズクが頷く。
「その方がよいと思います」
ティセラも。
「薬草は種類によっては風量も変えたいですね」
ルヴァナが言う。
「服は強めでいいんじゃない?」
エヴァも頷く。
「寝具はもっと強くていい」
リーゼは黙った。
送風機一台。
そのはずだった。
穀物を選り分けるために作った。
なのに。
もう三種類の乾燥場所の話になっている。
クロエが言う。
「もう一台作るか」
リーゼが振り向いた。
「早い!」
「一台を毎回運ぶよりいい」
「それはそうだが!」
ネイラも言う。
「構造は覚えました。二台目なら早いです」
クロエが娘を見る。
「作れるか?」
「たぶん」
「なら一緒にやろう」
ネイラが少し嬉しそうに頷く。
「うん、クロエ母さん」
リーゼは二人を見る。
反対する理由が一つ減った。
「……安全格子は絶対につけろ」
クロエが頷く。
「分かっている」
「羽根の固定も二重確認」
「分かった」
「ルヴァナへ試運転させるな」
ルヴァナが声を上げた。
「なんであたしだけ!」
「絶対強くするからだ!」
「しないって!」
エヴァが笑う。
「じゃあ俺がやる」
「貴様も駄目だ!」
午後。
二台目の送風機を作る準備が始まった。
その間にも一台目は働いている。
穀物を乾かす。
薬草へ風を送る。
必要に応じて場所を変える。
夕方には、朝に処理した穀物の表面はかなり乾いていた。
シズクが一粒噛んで状態を見る。
「よさそうです」
リーゼも手に取った。
「一日で?」
「日差しだけより安定しますね」
ノアが言う。
「熱を入れてるわけじゃないから、完全な乾燥機ではないけど、空気が動くだけでもかなり違うよ」
ティセラも薬草を見る。
「こちらも乾燥が早いです。ただし種類によっては急速乾燥が適さないものもあるので、分けます」
リーゼが頷いた。
「何でも強風へ当てればいいわけではない」
「はい」
ルヴァナが腕を組んだ。
「じゃあ服は?」
「別の場所で試せ!」
「やった」
「何故そんなに嬉しい」
「だって乾くの早い方がいいじゃん」
エヴァも言う。
「寝具もな」
リーゼは嫌そうに二人を見る。
「まさか、毎日大量に乾かすつもりではないだろうな」
エヴァがにやりと笑った。
「使えば洗うだろ」
「聞かなかったことにする!」
シズクは平然としていた。
「乾くのが早いなら助かります」
リーゼがシズクを見る。
「お前は本当に慣れたな……」
「洗うのは私たちですから」
「強い」
クロエとネイラが二台目の木枠を作っている。
アスラはそれを覗き込みながら、別のことを考えていた。
「これ、魔術で熱風にできるな」
リーゼが即座に振り向いた。
「待て」
「乾燥が早くなる」
「燃える!」
「温度を下げればいい」
「教授!」
ティセラが考える。
「低温で一定に保てるなら、乾燥試験としては有用です」
「教授まで乗るな!」
ノアが笑う。
「そのうち試してもいいかもね。でも今日は風だけで」
リーゼが強く頷いた。
「今日は風だけだ! これ以上増やすな!」
夕食の頃。
二台目の送風機も形だけは完成していた。
明日、配線と回転確認を行う。
一台目はまだ低い音を立てて回っている。
食事を終えたルヴァナが、その前へ座った。
髪が後ろへ流れる。
「あー」
リーゼが気づく。
「何をしている」
「涼しい」
「それは穀物用だ!」
「今、穀物ないじゃん」
「そういう問題ではない!」
エヴァも隣へ座った。
「お、いいな」
「師匠、こっち風くるよ」
「本当だ」
二人並んで風へ当たる。
リーゼの眉間に皺が寄った。
「貴様ら……」
シズクも調理場から戻ってきた。
少し暑かったらしい。
送風機の前へ手を出す。
「涼しいですね」
リーゼが止まる。
「シズクまで」
「使っていないのでしょう?」
「今はな」
ノアも笑う。
「扇風機だね」
リーゼがノアを見る。
「何だ、それは」
「人に風を当てて涼むための機械」
全員が送風機を見る。
ルヴァナが言った。
「それじゃん」
エヴァも頷く。
「これだな」
シズクも。
「便利ですね」
リーゼは反論しようとした。
だが。
一日中動き回った後である。
暑い。
風は気持ちいい。
少し迷ってから。
送風機の端へ座った。
ルヴァナがにやりとする。
「大尉も来た」
「確認だ」
「何の?」
「風量だ」
「顔に?」
「うるさい!」
風が流れる。
四人の髪が揺れる。
少し離れたところでは、クロエとネイラが二台目を組んでいる。
ティセラは乾燥した薬草を確認し、アスラは魔術で回した場合のことをまだ考えていた。
ノアは穀物の籠を片づけながら笑っている。
リーゼは涼しい風を受けたまま、今日一日を思い返した。
風がないから作った。
穀物を選り分けるためだった。
それが穀物を乾かし。
薬草を乾かし。
明日には洗濯物まで乾かすらしい。
そして今は。
人間を涼ませている。
「……機械というものは」
クロエが顔を上げる。
「何だ」
「最初に考えた用途だけでは終わらんな」
クロエは当然のように答えた。
「使えるなら使えばいい」
リーゼは小さく息を吐いた。
「貴様のそういうところだけは、最近少し分かってきた」
「そうか」
「ただし、勝手に増やすな」
クロエは二台目を見る。
「もう増えた」
リーゼも見る。
ほぼ完成している。
しばらく黙った。
そして。
「……次から先に申請しろ」
ルヴァナが吹き出した。
「また役所になった」
「役所ではない!」
エヴァが笑う。
「送風機管理局」
「作るな!」
夜の谷底へ、リーゼの声が響いた。
翌朝。
食料用。
薬草用。
布用。
乾燥場所には、それぞれ札がつけられた。
リーゼが書いた。
混ぜるな。
勝手に移動させるな。
風量を変えたら戻せ。
ルヴァナがその下へ、小さく書き足した。
『人が涼む時は空いている方を使う』
リーゼは見つけた。
消そうとした。
少し考えた。
昨日、自分も使った。
結局。
消せなかった。




