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小さな天災(死傷者1名)、大きなうねり  作者: G-20
第二次世界大戦末期
2/12

第二話 新大統領と方針の検討(前篇)

 架空戦記創作大会2026春お題➀:第二次世界大戦中に史実にない天災が発生したことを受けたトルーマン新大統領の指示でアメリカ軍部が今後の対応を話し合います。


 そして台詞の中でどのような天災なのかが示唆されます。

 ホワイトハウス地下会議室――その空間は、まるで外界とは別の時間に閉じ込められているかのようだった。


 重厚な防音扉が閉じられた瞬間、世界は遠ざかる。

 残るのは、机を囲む数人の男たちと、決断という名の圧力だけだ。


 空気は重い。

 いや、“重い”という言葉では足りない。鉛を肺に流し込まれたかのような、息苦しさがあった。


 長机の先頭に座る男――ハリー・S・トルーマン新大統領は、まだ自分のものになりきっていない椅子に身を預けていた。


(この席は……軽くない)


 当然だ、と彼は思う。

 ここは一人の政治家の席ではない。

 国家の意思を決定する場所であり、時に数十万、数百万の生死を左右する場所だ。


 机上の資料を閉じる音が、やけに大きく響いた。

 誰もがその音に反応し、視線が一点に集まる。


「――始めよう。」


 短い言葉だった。だが、それで十分だった。


 集まったのは、合衆国の意思を形作る中枢そのもの。

 陸軍航空軍司令官ヘンリー・“ハップ”・アーノルド。

 国務次官ジョセフ・C・グルー。

 陸軍参謀総長代理トーマス・T・ハンディ。

 海軍作戦部長代理リチャード・S・エドワーズ。

 そして、陸軍長官ヘンリー・L・スティムソンと海軍長官ジェームズ・フォレスタル。


 いずれも疲労の色は隠せない。

 だが、その目だけは鋭かった。戦争という現実に削られ、研ぎ澄まされた目だ。


 トルーマン新大統領は、前置きを省いた。

「率直に聞く。」

 わずかに身を乗り出す。

「ソ連を信用できるか?。」

 沈黙が落ちる。


 短い。しかし、意味のある沈黙だった。

 誰もが同じ結論を持ちながら、それをどう言語化するかを測っている。


 最初に口を開いたのはエドワーズ海軍中将だった。

「現時点では、“利用可能な同盟国”です。」

 慎重な言い回し。だが、その次の一言で本音が露わになる。

「しかし――恒久的な信頼対象ではありません。」


 トルーマン新大統領は微かに頷いた。


 続けてハンディ陸軍中将が口を開く。

「赤軍の展開速度は異常です。既に東欧での支配体制構築に着手している兆候があります。」

 彼は地図を指で軽く叩いた。

「戦後、欧州のみならず極東でも影響力を拡大する可能性は高い。」


 アーノルド陸軍航空軍司令官は資料をめくりながら言った。

「極東への物資移動を確認しています。対日参戦準備と見て間違いない。」


 その言葉は、会議室の温度を一段下げた。


 トルーマン新大統領は一度視線を落とし、そして再び上げる。

「では本題だ。」


 一拍。


「対日戦を、どう終わらせる。」

 空気が変わった。

 それまでの議論が前提に過ぎなかったことを、全員が理解する。


 ---


 最初に発言したのはグルー国務次官だった。

 彼の声は静かで、だが確信に満ちていた。

「現実的に考えるべきです。」

 誰も遮らない。

「日本を完全に破壊することは可能でしょう。しかし――」

 わずかに言葉を区切る。

「統治できなければ、意味がありません。」


 トルーマン新大統領は無言で促す。


「日本社会の安定には、象徴的中心が必要です。」

 グルー国務次官の発言に室内の何人かが視線を動かす。

 結論は既に読めていた。

「天皇の存置。それが唯一の現実的な解です。」

 その言葉は、爆弾のようにではなく、静かに沈んだ。

 だが、重さは同じだった。


 フォレスタル海軍長官がわずかに眉を動かす。

 興味はある。だが、まだ結論は出していない。


 スティムソン陸軍長官が低い声で応じた。

「理屈は理解する。」


 一拍。


「しかし前提が一つ抜けている。」

 スティムソン陸軍長官の発言に全員の視線が彼に向く。

「我々には、“それを考える前に戦争を終わらせる手段”がある。」


 誰も言葉にしない。


 だが、全員が同じものを思い浮かべていた。


 ――マンハッタン計画。


 スティムソン陸軍長官の発言に室内の空気が、さらに冷えた気がした。

「もしあの爆弾が実用化されれば、日本は交渉の余地なく屈服する。」

 断定だった。


 だが、グルー国務次官は即座に返す。

「その“屈服”が、戦後の安定を保証するとは限りません。」


 視線がぶつかる。


 スティムソン陸軍長官の目が鋭くなる。

「だからと言って、敵の体制を温存する理由にはならん。」

 しかし彼はそこで言葉を切らなかった。

「……もっとも。」

 わずかに逡巡する。

「目標には慎重であるべきだ。例えば京都のような都市を破壊すれば――」


 グルー国務次官が小さく頷く。

「日本人の記憶に、“復讐の理由”を刻むことになる。」

 その言葉は、戦争の先にあるものを見据えていた。


 ここでフォレスタル海軍長官が口を開いた。

「つまり――。」

 腕を組み、ゆっくりと言う。

「早期終戦のための決定打は必要だ。だが、それが戦後秩序を破壊するなら意味がない。」


 誰も反論しない。


「原爆は有効かもしれん。しかし問題は“どう使うか”だ。」

 彼は断定を避けた。

 それは優柔不断ではなく、海軍的な思考――状況を見極める姿勢だった。


 ---


 議論は軍事面へ移る。


 ハンディ陸軍中将が地図を広げる。

「現行計画では、本土侵攻が必要です。損害は甚大になる。」


 エドワーズ海軍中将が補足する。

「封鎖と空襲で時間をかける案もありますが――」

 一瞬、言葉を選ぶ。

「ソ連参戦が先行する可能性が高い。」


 それは単なる軍事問題ではない。

 戦後の勢力圏を巡る問題だった。


 アーノルド陸軍航空軍司令官は即座に言う。

「戦略爆撃の強化で、日本の機能は麻痺させられる。」


 だがグルー国務次官は首を横に振った。

「国家は“機能”だけでは降伏しません。」

 静かな否定。

「政治的出口が必要です。」


 スティムソン陸軍長官が割って入る。

「だからこそマンハッタン計画だ。」


 間髪入れず、グルー国務次官。

「だからこそ、条件を提示する必要がある。」


 対立は明確だった。


 フォレスタル海軍長官がその間に入る。

「両方必要だろう。」


 視線が集まる。


「軍事的衝撃と、政治的着地点。」

 彼は一つ一つ区切るように言う。

「どちらが欠けても、戦争は長引く。」


 ---


 トルーマンは、ずっと黙っていた。

(全員、正しい)

 それが問題だった。

 正しい意見が複数ある時、選択は必ず誰かの“正しさ”を切り捨てる。

 彼はゆっくりと口を開く。

「方針を示す。」


 空気が張り詰める。

「対日戦は加速する。」

 明確だった。

「爆撃、封鎖、侵攻準備――すべてだ。」


 アーノルド海軍中将とハンディ陸軍中将が同時に頷く。


「マンハッタン計画は最優先。」


 スティムソン陸軍長官が静かに応じる。

「使用は?。」


 わずかな間。


 トルーマン新大統領は考えた。

 いや、考える時間を意図的に作った。

「使用前に――検討する。」


 即断ではない。だが、拒否でもない。


 グルー国務次官が目を細める。


「外交条件も同時に検討しろ。」

 トルーマン新大統領は続ける。

「特に天皇についてだ。」


 それは明確な指示だった。


 スティムソン陸軍長官は何も言わない。

 フォレスタル海軍長官も沈黙を保つ。


「ソ連参戦前に終わらせる。」

 トルーマン新大統領は断言した。

「そのための手段は――すべて使う。」


 ---


 沈黙。


 誰も異議を唱えない。


 それは同意ではない。

 理解だった。


 この戦争は、終わらせ方を誤れば――

 次の戦争を生む。


 トルーマン新大統領は静かに立ち上がる。

「続けろ。」


 会議は終わらない。

 むしろ、今始まったばかりだった。


 戦争の終わらせ方と、

 その後に来る世界の形を決める作業が。

 まあ、隕石が人間の頭部に直撃する確率なんて数百万分の一から一千万分の一ですからね。因みに隕石に当たったのは1954年のアン・ホッジス氏以外に居ないそうですよ。(そもそも人体に隕石が命中する確率が1/250,000~1/10,000,000程度と推定されているそうで。)

 なので(ソ連という国への信用も相俟って)ソ連から真実を伝えられてもアメリカ政府の面々が信じないのも当然ですね。


 という訳でアメリカ統合参謀本部で今後の戦争方針や戦争計画が検討されることになりました。

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