ノーと言える日本人
随分と更新が遅れましたが、まだ生きております。
毎度短い文字数での更新ですが、生暖かく見守ってください。
「この扉の向こうにシャール殿下がいらっしゃる。分かっていると思うが、失礼のないように。」
「やっぱり会うのは日を改めて―――。」
「ではいくぞ。」
あ、はい。
そうですよね。
最後まで聞くこともなくヴィクトリアさんは扉に手を掛ける。なんと男らしい。
そして、俺の気持を表すかのように重苦しい音を立てながら視界は開けた。
部屋で待っていたのは長身の銀髪美青年。
年齢は俺よりも若干下だろうか。
整った顔立ち、モデルのようなスタイル。
だが細すぎるというわけではなくカッチリとした体格をしている。
服装は右肩にマントの付いた軍服っぽいものだが、白で統一されているおかげか威圧感は少ない。
白馬の王子様という言葉これほど似合う人間はいないだろう。
いわゆるジャニー○系だ。
俺やサスケが忌み嫌う人種の一つである。
ちなみに、農業を行う方達は話が別だ。
「早かったね、ヴィクトリア。それで…彼がそうなのかい?」
凛とした声が部屋に響く。
乙女ゲーのメインキャラクターにいても不思議じゃない程のイケメンボイスだ。
イケメンは声までもカッコいいのか。世界は不公平に出来ている。
「はっ。」
ヴィクトリアさんは短く返事をすると同時に片膝をつき、顔を伏せた。
椎名優樹は空気の読める男だ。
失礼の無いよう、即座にヴィクトリアさんの動きを真似をする。ドヤ顔。
「そう畏まらないでくれ。君のことはヴィクトリアから聞いているよ、クウキ君。」
そこまで存在感薄くねぇよ!
と、心でツッコミを入れるのはお決まりなので許してほしい。
「お初にお目に掛かります、殿下。優樹です。」
「あぁすまない。どうにも人の名前を覚えるのが苦手でね、テンキ君。」
ニコニコと笑みを浮かべながら言い間違える王子様。
わざとやってんな、こいつ。
だが椎名優樹は大人の男。
寛大だ。寛大な心で受け流すのだ。右から左へ。
「まずはお礼を言わせてくれ。君のおかげで多くの兵士が死なずにすんだ。ありがとう。」
「いや…別に、おれ…私は出来ることをしたまでです。」
「何か望む物はあるかい?私に可能な範囲であれば用意させよう。」
「お気持ちだけで十分です、殿下。」
ここで何か貰うのは得策ではないと俺の第六感が囁いている。
貰ったら三倍返しなって言葉もあるぐらいだしな。
「そうかい?まぁ、思いついたらでも構わないさ。」
そう言うと王子様はテーブルに両肘を付き、某司令ポーズを取る。
表情は変わらず柔らかいが、目の奥が笑っていない気がするのは俺だけだろうか?
「さて、本題はここからなんだが…。私に仕えてみる気はないかい?ユウキ君。」
チラリと横目でヴィクトリアさんの様子を伺うと、申し訳ないといった表情をしていた。
そりゃ立場上話すしかないよな。
そもそも、あれだけのことをやってバレないほうがおかしいぐらいだし。
「君にとっても悪い話ではないだろう?私の直轄ともなれば、それなりの地位も―――。」
「とても魅力的なお話ではありますが…お断りいたします。」
「…理由を聞いてもいいかな?」
「私には目的があります。具体的な内容はお話しできませんが、今はそれが最優先なのです。」
「それは…私に仕えていては行えない、と?」
「不可能ではないかもしれません。しかし作業効率は落ちます。ですので―――。」
そこで王子様は片手を俺向け、首を横に振った。
「私も少し事を急かし過ぎたかもしれない。返答はまた後日伺うよ。それまでに気持ちが変わるかもしれないからね。まずはゆっくりと休んでくれ。城内はある程度自由に動いてもらって構わない。」
「ありがとうございます。」
「私からは以上だ、下がってくれて構わないよ。あぁ、ヴィクトリアは残ってくれ。」
最後まで笑顔の王子様とヴィクトリアさんを部屋に残し、俺は一人退出する。
しかしなんだろう。
あの王子様、誰かに雰囲気が似ている気がする。
どうにも裏がありそうというか、腹黒いというか―――あっ。
「そうか…あのホスト野郎に似てるのか…。」
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「彼…ユウキ…と言ったかな。」
「申し訳ございません、殿下。奴には後で私から―――。」
「普通…だね。随分とつまらない男だ。まだソフィアのペットの方が面白みがある。本当に強いのかと疑いたくなるよ。ま、あえてそうしているのかもしれないが。」
シャール殿下は心底つまらなそうにため息をつく。
聖騎士になって3年経つが、私は未だ殿下のこういうところは理解出来ない。
「どうかしたかい、ヴィクトリア。君にしては随分と不服そうに見えるけど。」
「いえ…そんなことは…。」
「まぁいいさ。とりあえず…そうだな。何人か綺麗所を宛がってみるか。使える駒が多いに越したことはないからね。不要なら早々に捨てれば問題もないだろう。」
「色香で引き入れる…と。」
「常套手段ではあるけど、彼になら効果は覿面だろう。手配を任せていいかな?」
「…お言葉ですが殿下。奴にそのような手段が通じるとは思いません。」
嘘だ。
あいつなら鼻の下を伸ばして簡単に、あっさりと、それはもう見事にコロッと転がるだろう。
なんだろう…想像しただけで腹が立ってくる。
「随分と彼を買っているね、ヴィクトリア。彼に特別な感情でもあるのかな?」
「そ、そのようなことは!!」
「それとも―――彼もそうなのかな?」
「…意味が分かりかねます。」
その言葉が指すのは偽りの塔だろう。
人数までは答えたが、参加した者の名前は未だ伏せてある。
それだけは守らねばならない。
「いや、なんでもないよ。そんな都合の良いことが何度も起こるはずもないだろうし。君も下がって構わない。先の件、人選は君に任せる。いいね?」
「はっ。」
短く答え、私は部屋を出る。
しかしどうしたものか。
戦ならいざ知らず。私はこういったことには疎い。
加えて気が進まない。それはもう全く。
「はぁ…困ったものだ…。」
マルコならどうだろうか?
いや、あいつもこういうことには疎かったか?
そうなると相談出来る者がいな―――あっ。
「あいつに聞いてみるか…。」
少々問題はあるが、こういうことを聞けるのはあいつぐらいしかいない。
そうと決まればすぐに探さねば。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「何度も起こるはずもない…。だが逆に起これば必然か…。さてさて、これは忙しくなりそうだね。」




