私に良い案がある
「素材の調達が出来る人材を育てる…にゃるほどにゃるほど。」
ジルマは納得するようにウサ耳をピョコピョコと動かす。
あれは一体どういう原理で動いているのだろうか。触って解明したいがここはグッと我慢の子。
「皆さん腕には自信があるんですよね?しかし、ミスリルのような希少素材がなかなか手に入らないと。なら、素材さえあればどうにか出来る…そういうことでいいんですよね?」
「そりゃ…まぁな。」
「僕は勝てる自信がありますよ!」
「ふぉっふぉっ、わしもまだまだ若いもんには負けんつもりじゃ。」
自信満々に三人は答える。これなら話は早く済みそうだ。
「ではジルマさん、お願いがあります。」
「なんですかにゃ?」
「この街にいる木こりと鉱石を採掘している方を何人か集めてください。今日はもう遅いので…明日の昼ぐらいまでに。いいでしょうか?」
「お安い御用ですにゃ!ユキ様!」
「えーっと…名前なんですが、今後は優樹でお願いします。」
「改名されたのですかにゃ?かしこまりましたにゃ、ユウキ様。帳面の方も変更もしておきますにゃ。」
「お願いします。では明日。」
そう言って俺はアリアンナを連れてジルマの店を出る。時刻は既に夕暮れ時だった。思っていた以上に長時間拘束されてたみたいだな。
「はぁ…まいったな…。」
正直、ジルマ達の手伝いをするのは気が乗らない。
下手に俺が手を貸して世界の経済状況が悪化する可能性だってあるからだ。
とりあえず素材だけなら急激に経済が変わることはないだろうから、何人かを採集職にするつもりだけど。
本当にいいのだろうか?
「なぁ、アリアンナ。俺は良いことしてるのかな?」
そんな言葉がなんとなく出てしまう。
情けないと自分でも分かっているが聞かずにはいられなかった。
「ユウキさんの決めたことなら大丈夫です。」
アリアンナは俺の顔を見ずに即答する。
そのの表情は真剣で、若干だが大人びて見える。
「そうかなぁ。」
「大丈夫たら大丈夫です!分かりましたか!?」
「は、はい。すみません。」
「ユウキさん!ユウキさんはもっと自信を持つべきです!」
「う、うっす。」
その後もなぜかアリアンナに怒られながら、俺達は城へと足を進めた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
俺もそうだが、男という生き物は実にちょろい。
ちょっと可愛い女の子が優しくしてくれたら自分に気があるのでは?と勘違いを起こす愚かな生物だ。
出来る女はこれを上手に利用するから気をつけろ!とネットでもよく目にしたことがある。
では、これを上手く出来ず実行してしまった場合はどうなるのだろうか?
正解は…今のこの状態だと思う。
「ア、アリアンナちゃん!俺、ここ怪我しちゃって!」
「俺は足首捻っちゃってさ!」
「俺は腕を!」
「お、俺は頭が悪い!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
アリアンナは混乱しながらも一人一人にヒールをかけていく。
が、努力も空しく長蛇の列は減るどころか更に長くなっていた。
「ユ、ユウキさん!助けてください!」
アリアンナは涙目で俺に助けを求める。
俺だって助けてやりたいよ?でもね?前にズラァッと並んだ男達が『こっちにくるな!』て目線で睨んでくるんだ。
うん、これはどうしようもないね。
「アリアンナよ、これも経験じゃ。」
「こんな経験したくありません!あ、ちょっと!押さないでください!危ないですから!!」
まるでアイドル握手会みたいなこの状況を一変させたのは、突如現れた人物の一声。
「お前達!一体何をしている!!」
声の主は勿論ヴィクトリアさん。
それまでガヤガヤとしていた男達の動きはピタリと止まり、全員の顔が青白くなっていく。
相当ヴィクトリアさんが怖いのだろうか?
「こんなところで油を売っている暇があるなら、走り込みでもしてこい!それとも私が直々に指導したほうがいいか?」
「「「い、いえ!りょ、了解です!!」」」
綺麗に回れ右をし、男達は綺麗さっぱり部屋からいなくなる。
「すまない、部下が迷惑をかけた。」
「いや、俺は何も被害受けてないですから。どちらかというと彼女のほうが…」
「ヴィ、ヴィクトリア様!?」
珍しく大声をあげるアリアンナ。自分でもやってしまったと気が付いたのだろう、慌てて両手で口を塞いでいる。
「貴女がアリアンナ殿か。部下達から話は聞いている。先の戦闘では多くの負傷兵を治療していただき感謝している。」
「い、いいえ!滅相もありません!大したことなんて何一つ…。」
「なるほど。噂通りの変わった癒し手のようだ。これもユキ…ユウキの教育あってなのか?」
「それこそ俺は何もしてないですよ。ヒールの方法を教えただけですから。」
その方法というのもスキルを口にして治したい部分に手を近づけるってだけだし。
「二人に連絡があってな。まずアリアンナ殿。貴女には近いうちに白薔薇騎士団から入団の連絡がくるかと思います。多くの癒し手で構成された部隊なので直ぐに馴染めるかと。」
「騎士団に入団!?え、えっと…それにはユウキさんも一緒なのでしょうか?」
不安そうな表情で俺を見つめるアリアンナ。
そりゃそうだよな。つい最近まで宿屋の娘だったのに、いきなり騎士団なんて言われても困るだけだよな。
アリアンナがこうなったのは大半が俺の責任でもあるし、もうしばらくは付き合うか。
なんてことを考えていたのだが---。
「そのことなんだが…実は厄介なことになってな。」
ヴィクトリアさんは申し訳なさそうな表情をして俺を見ている。
あれだな、改まって見るとやっぱりすげぇ美人だ。なかなか目を合わせられない。
「名前こそまだ知られていないが、男のヒーラーが戦場に居たことは既に陛下の耳にも入っている。ユウキに行き着くのも時間の問題だろう。」
「でしょうね。覚悟はしてましたよ。」
あれだけ派手に暴れたのだ。バレてないほうがおかしいくらいだろう。
「ルミナスにおいてヒーラーは白薔薇騎士団に入団するのが定例だ…が、お前は男だ。全員女性で構成されている白薔薇騎士団に入れるわけにはいかない。」
「それはそれで入ってみたいですがね。」
「…何か言ったか?」
「ナンデモアリマセン。」
ヴィクトリアさん、目が血走ってますよ?剣柄に手を当てるのもやめてください。
「故に、ヒーラーとしてのお前の扱いは一時保留だ。だがこれは大した問題ではない。」
「というと?」
「ユウキ…お前、暗黒騎士の姿で戦っていたそうだな?」
「敵の数が多かったですからね。俺がヘイト取ったほうが被害少ないかと思って――。」
「その話を聞いたシャール殿下がな…お前を欲しいと言っている。」
「…はぃ?」
殿下っていったら王子様のことだよな?つまり男だ。
男が男を欲しい。
つ、つつつつつまり!そ、そういうことなのか!?
やらないか?なのか!?
「俺にソッチの趣味はありません!至ってノーマルです!お断りします!!」
「ソッチ?ソッチとはなんのことだ?」
「え?」
「ん?」
「あのぉ…ユウキさん。多分ユウキさんが考えてるようなことではなくて、普通に部下としてって意味だと思いますよ?」
アリアンナは呆れたといった表情で口にする。
なんだ…そういう意味だったか。びっくりしたぜ。貞操の危機を感じたじゃないか。
「すみません、ヴィクトリアさん。俺の勘違いでした。」
「いやまて、ソッチとはなんのことだ。二人だけで納得せずに私にも教えないか!」
「いや、教えるべきことではないかと…。」
「ほぅ、私には教えれない…と?」
げっ、ヴィクトリアさんの悪い癖だ。
彼女は自分だけ知らない話題というの嫌いらしく、昔から小さなことでも気にするタイプなのだ。
例えそれが下ネタだったとしても。
「アリアンナ殿!どういう意味か知っているのだろう?是非教えてくれないか?」
「え!?は、はい…。ユウキさんが言っていたのはですね…。」
視線を泳がせながらもアリアンナはヴィクトリアさんに事の詳細を耳打ちで教える。
するとヴィクトリアさんの耳が徐々に真っ赤に染まっていき…あっ顔が真っ赤になった。
「こ、ここここ…」
フルフルと身を震わせ顔を伏せるヴィクトリアさん。
なんだろう。次に起きる事態が容易に想像出来てしまう。
ラノベ結構読んでたもんなぁ。
というわけで、俺は目を閉じヴィクトリアさんから放たれるであろう衝撃に備えた。
結果、予想通りの展開になったので説明は省く。
読んでいただきありがとうございます。感想もいただければありがたいです。




