あんな可愛い女の子がオッサンであるはずがない
ジルマが部屋から飛び出して20分後。
俺の目の前には彼女によって集められた三人の商工ギルドメンバーが並んでいた。
「ご紹介しますにゃ。右から鍛冶職人のハンス、薬剤師のフローレン、料理人のエルマーニですにゃ。では早速ゴルドバから輸入された武器防具を―――。」
「ちょっと待った、ジルマちゃん。」
意気揚々と話すジルマを止めたのは鍛冶職人のハンス。種族は間違いなくドワーフだ。
「にゃ?なんですかにゃ、ハンスさん。」
「強力な助っ人がいるって言ってたが…この小僧がそうなのか?」
「いかにもですにゃ。」
「ジルマちゃんよ、冗談言っちゃいけねぇぜ。こんな若造に何が分かるってんだ。」
ハンスの言葉に他の二人も頷く。
俺はそんなに頼りなく見えるのか。まぁ、実際会社でもそんなに頼りになるほうではなかったけど。
「にゃふふ。お三方。このお方がどなたかご存知ないようですにゃ?」
「有名な人なのかい?あたしゃ知らないけどねぇ。」
恐らく一番の年長者であろうフローレンは改めて俺の顔をじっくり見るが、すぐに首を横に振る。
そんなフローレンに続くようにエルマーニも口を開いた。
「うちのお店にもいらしたことはないですね。お客さんの顔は全員覚えているので間違いないです。」
「そうでしょうにゃ、そうでしょうにゃ。我々が得ている情報とは大きく違いますからにゃ。」
「ジルマ、そりゃどういう意味だい?」
「なんと!このお方はユキ様ですにゃ。」
「「「なっ!?」」」
ジルマの言葉を聞いて三人ともが口を開けたまま声が出せない状態で顔をゆっくりと俺の方へと向けてくる。
ちなみに俺はこの三人と面識はない。
「こ、この男がユキ様だと!?」
「そうですにゃ。手前も最初は疑いましたが、間違いありませんにゃ。」
「だ、だが性別が!ユキ様は女神の如く美しかったんだぞ!!」
「そ、そうです!あの上品な姿…忘れもしません!」
ハンスとエルマーニは声を大にして異を唱える。
確かにユキのキャラメイクには相当時間を費やして、自分で言うのもなんだがかなりの美少女に仕上がった。
そんな美少女が実は男でしたなんて言われたらそりゃこうなるか。
「なるほどのぉ。ユキ様は指折りの癒し手様…姿を偽装するぐらい容易いというわけか。」
「レン婆は理解が早くて助かりますにゃ。」
二人と違い、フローレンは納得するように頷いている。流石年長者というべきか。
「過去に幾度とにゃく我々を助けて下さったユキ様にゃら、今回の問題もきっと解決してくださるはずですにゃ!」
「え?何のこと?」
全く身に覚えがないんですが…。
何度も言うが彼等と面識はない。
ジルマと出会ったのもつい最近の出来事だ。
「またまたユキ様。今のルミナス商工会があるのはユキ様のおかげと言っても過言ではありませんにゃ。そうでしょう?お三方!?」
「そりゃ…な。今も商売がやれるのはユキ様がタダ同然の価格で売ってくれた鉱石のおかげといってもおかしくねぇ。」
「ぼ、僕の店もそうです!なかなか手に入らない魔獣の肉や貴重な香辛料のおかげで店が大きくなりました!」
「わしの薬があるのも貴重な回復薬を研究出来たからこそですじゃ。」
思い出すように三人は天を仰ぎウンウンと頷いている。
三人の話から推測するに、俺が幾度となく助けたというのはゲームプレイ時に行っていた納品クエストのことだろう。
もしくは、ショップで不要になったアイテムや装備を売却したことかもしれない。
どちらにしても、俺からしてみれば大したことはない。ほぼ作業ゲーだったし。
チラっと横にいるアリアンナに視線を向けると毎度恒例ともいえる表情をしていた。そんなに意外ですか。
「しかしなぁ…いくらユキ様には世話になったとはいえ男だったってのはいただけねぇ。」
「わかります!わかりますよ!ハンスさん!あぁ、神よ!!」
「悪かったな!」
「わしはむしろウェルカムですぞ?うっひっひ。」
俺はそこまで守備範囲広くないので間に合ってま---近い!近いって!!
「さぁさぁ、皆様。はにゃしを進めましょうにゃ!ハンスさん、例の武器と防具を。」
「お、おう。これなんだが---。」
強引に背中を押されつつ、ハンスは自前の大袋から一本の短剣と手甲を取り出した。
何の変哲もない普通の武具だ。
「触ってみても?」
「勿論。」
俺は短剣を手に取り、ソフトタッチでステータスウィンドウを開く。
名称は…あぁ、ミスリルダガーか。初心者を抜け出した頃によく使ってた気がする。
アイテムレベルは35。クオリティーは…そんなに高くないか。オート製作品かな?
「どうですかにゃ?ユキ様。」
四人は希望の眼差しで俺を見る。
やめて!そういうのに慣れてないの!!
「どうって言われても…。ハンスさんが作った武器ってありますか?」
「あるぜ。これが俺の作った短剣だ。」
そういってハンスはもう一本短剣を取り出す。
それを受け取り、先程と同様に俺はチェックをする。
そして俺は納得した。
「あー…なるほど。」
「出来は悪くねぇと思うんだ。」
ハンスの言う通り、クオリティー数値はミスリルダガーよりもハンスの作った短剣の方が高い。
だが問題はアイテムレベルだ。
装備品にはアイテムレベルというものが設定されており、数値が高ければ高いほど性能が高い。
勿論、それに応じてキャラレベルも上げないと装備が出来ないのだが。
ともかく、ハンスの作った短剣の名称はアイアンダガー。
鉄鉱石を素材として作る初心者向けの武器でアイテムレベルは18である。
いくらクオリティー値が高くてもミスリルダガーとのアイテムレベル差を埋めれる程ではない。
「だがゴルドバの武器はほとんどがこの鉱石で出来てやがる。それが問題なんだ。」
「ミスリルですか?」
「流石ユキ様だな。そうだ、ミスリルだ。数年前はルミナスの市場でもそこそこ出回っていたが、今じゃほとんど見かけねぇ。なのにだ。ここ最近ゴルドバから入ってくる武具のほとんどはミスリルで出来てやがる。あいつら一体どうやって手に入れてるんだか…。」
ハンスは太い両腕を組み、大きなため息をつく。
ゲームの中では、ミスリル装備の素材となるミスリル鉱石は店では販売してはおらず、採掘師となって特定の場所を掘ってこないと入手できないタイプのものだ。
といっても、これもそう難しくはないんだけど。
だが、この世界の人からすればミスリル鉱石を掘ってくるのも至難の業なのだろう。
それを易々と行い市場に流してるってことは…やっぱりそういうことなんだろうな。
「状況は理解しました。」
「流石はユキ様ですにゃ!」
「で、どうしたいんです?」
俺の問いに対して、四人は互いの顔を見渡すだけ。
ダメだ、こいつ等何も考えてねぇぞ!
「他国の商品で自国の商品が売れないのなら、輸入制限すればいいだけの気はするんですけど…。」
「確かにそれで解決出来るかもしれないが、それは俺達職人のプライドが許さねぇんだ。」
「ですね。卑怯なことをせずとも、こちらが相手よりも優れた商品を作ればいいだけです!」
「それにはわしも同意見じゃ。」
「にゃっはっは…。まぁ、こんにゃ感じでして、頭をにゃやましていたんですにゃ。」
職人は頑固で困ったものだと小声で俺に愚痴を言うジルマ。
つまりだ。簡単に言ってしまえば、職人の腕を上げるために協力してほしいってのがジルマ達最大の目的ってとこか。
でも俺、生産職苦手なんだよな…ほとんどオート製作だし。
そうなると出来ることっていえば…。
「では…こういうのはどうですか?」
俺は一つの案を四人に提示した。
2日分のデータが飛びましたが私は元気です。




