そうだ。マーケットに行こう。
どうしてこうなった?
俺は酒場で情報収集をするつもりだった。
ついでにアスタルクの酒場のオヤジから貰った葉巻を吸う絶好の機会でもあった。
城内はどこも禁煙で吸えないしな。
な・の・に・だ・!!
「この服はちょっと派手かな…あっ!このスカート…ユウキさんはどう思います?」
「あー…うん。いいんじゃないか?」
「もぅ!ユウキさん!ちゃんとこっちに来て見てください!」
「いや、それは流石にちょっと…。」
「暗黒騎士が何を恥ずかしがってるんですか。」
「違うぞ、アリアンナ君。今の私は無職だ。」
「またわけの分からないこと言って…よっ…いしょっと。」
俺は現在マーケットの一角にある女性服専門店前にいる。店内は既に多くの女性客で賑わっていた。
アリアンナが言うに、この店はルミナスでも最先端の品揃えで有名らしい。
なるほど。どうりで混んでるわけだ。
アリアンナは人の波を掻き分けて外にいる俺の前までくると見つけてきたスカートを自慢げに広げてみせた。
「見てください!このスカート!フリルも付いて可愛いんですよ!やっぱり王都は違いますねー、アスタルクにはこんな服絶対売ってないですよ!」
「そりゃそうだろ。物量が全然違―――ん?」
アリアンナが持ってきたのは淡いピンク色のスカート。
うん、確かに可愛い。長過ぎず短すぎず、フリルも派手に付いていないので痛々しくない。
だが妙だ。
どこかで見たような気がする。
前にも言ったが俺に女装の趣味は無い。なのにだ!このスカートを買った覚えまである。
一体どこで?
…
………あっ。
「アリアンナ、ちょっとそれ貸してくれるか?」
「え?えぇ…いいです…けど…。」
不安げな眼差しでおそるおそるスカートを手渡すアリアンナ。
なんだろう。凄く変な誤解を生んでいる気がする。
気のせいか、周りからも痛いモノを見るような視線を感じ……って!すげぇ見られてるし!!
「ユウキさん…まさか―――!」
「何か誤解していないか、アリアンナ君。私にそういった趣味はないぞ。」
「全然信用出来ないんですが。」
アリアンナの優樹株は相当低いようだ。今後の高騰に期待しよう。
受け取ったスカートを人指し指でポンッと叩くと、やはりウィンドウは浮かび上がった。
そこにはこう書かれている。
「キュートスカート…やっぱりか。」
「??」
キュートスカート。装備箇所は脚扱いになる。
女性キャラしか装備出来ないという以外に制限はない。
ただし、物理・魔法防御は1しかなく装備することによって得られる耐性もない。
完全に見た目だけを重視した装備だ。
手に入れる方法は難しくない。
必要な素材さえ集めれば低レベルの生産職でも作ることが可能だし、マーケットで他プレイヤーの出品から買うことも出来る。
しかし、NPCの店売りでは絶対に売っていない。
「基本職が取れないわけじゃないし、店売りしてても不思議じゃないか……って!高っ!!」
くっついてた値札には8000という数字が刻んである。
どんだけぼったくってんだよ!素材費と手間賃考えても1000で売れれば十分なぐらいだぞ!?
「なに言ってるんですか、ユウキさん。最先端の流行物ならこれぐらいですよ?」
「最先端って…。これサービス開始当初から作れたぞ!」
「作れたぞって…ユウキさん服作れるんですか?」
「当たり前だ。俺を誰だと思っている。」
「嘘だぁ…絶対嘘だ。」
「ほほぅ…信じれないと?」
「当然です。」
「ふむ。ならばついてきたまえ、アリアンナ君。」
「え?ちょ、ちょっと!どこにいくんですか!!買い物の約束―――もー!ユウキさん!!」
ここまで言われて作らなければゲーマーの名が廃る。
服!作らずにはいられないっ!!
◆◆◆◆◆◆◆
「ここは……保管所ですか?」
服屋を出た後、俺達はジルマの保管所へとまっすぐ来た。
「服を作るのに、どうして保管所へ来る必要があるんですか?」
「ん?そりゃそうでしょ。あ、すみませーん。」
「はいはーい!安心・安全!ジルマの保管所によ―――って!ユ、ユユユユキ様!」
出迎えてくれたのは昨日の受付嬢。相変わらずテンパってるな。
「また荷物を引き出したいんだ――。」
「しょ、ショーショーオマチクダサヒ!!」
前回同様、ダッシュで店内へと向かう女の子。
『ジルマさまー!ジルマさまー!』という声がここまで聞こえている。
………あっ、転けたな。
◆◆◆◆◆◆◆
「す、凄い。高そうな物が沢山…うちの宿屋とは大違い…。」
「いやはや、ユキ様のお連れ様に言われると照れますにゃ。」
VIPルームをキョロキョロと見渡すアリアンナ。
本気で照れているのだろうか?ジルマの耳は何度もピョコピョコと動いている。モフモフしたい。
「それでユキ様。本日はどのような用件ですかにゃ?」
「モフモフしたい。」
「にゃ?モフモフ??」
いかん。大切なことなので2度言ってしまった。
「んんっ。ちょっと引き出したいものがあってね。」
「ほうほう。ご結婚の準備ですかにゃ?」
「け、けけ結婚!?」
「にゃ?奥方様ではにゃいのですかにゃ?」
「ちちち違います!私とユウキさんは!で、でもでも…私は別にそっちでも……。」
アリアンナは顔を真っ赤にしながら否定する。その後に何か聞こえた気もするが、俺は難聴スキルを獲得しているので聞こえていない。全く、全然、聞こえていない。
だから照れてなどいない。いいね?
「にゃるほどにゃるほど。ユキ様は"まだ"独り身にゃのですね?」
「残念ながら。」
「では…手前などいかがですかにゃ?こう見えても着痩せするタイプにゃんですよ?」
「じ、ジルマさん!?」
「にゃっはっは!冗談ですにゃ、冗談。さて、何をお持ちいたしましょうかにゃ?」
ウーウーと唸るアリアンナは置いといて、俺はジルマに事前に調べたキュートスカート製作に必要な素材を口頭で伝える。
「ふむふむ。了解しましたにゃ。」
ジルマはポケットから小さなベルを取り出すと軽く左右に振る。
すると、すぐに店員らしき人物が現れジルマからメモを受け取り部屋から出ていった。
「ところでユキ様。差し支えにゃけば教えていただきたいのですが。」
「なんですか?」
「あのような物、一体にゃにに使われるのですかにゃ?正直言いまして、価値があるような物とは思えにゃいのですが…。」
別に隠す必要はないか。服作るぐらい普通だろうし。
「服を作るんですよ。」
「服?あれでですかにゃ?」
「えぇ。それがなにか?」
ジルマは顎に手を当てて何かを考えている様子。
それにしてもあれだ。ケモノ耳というのはどうしてああも愛らしいのだろうか。実にモフモフしたい。
「お邪魔でにゃければ拝見させていただいてもよろしいですかにゃ?」
「??構いませんよ。」
「おぉ!ありがとうございますにゃ!お礼といってはにゃんですが…。」
そう言ってジルマはウサ耳をこちらに向ける。
これは!モフモフチャンス来日かっ!!
「耳をじっくり見てもいいですにゃ。」
どうやら帰国していったらしい。
戦闘シーンは当分ないです、多分。




