VSケルベロス ②
2日か3日に1回のペースで投稿していますが無職になったわけではありません
「まったく…次から次と鬱陶しい。ドロップはショボいは硬貨は落とさないは…これじゃ装備の修理代もままならんでござるな。」
ユキ氏との個人チャット中に突如現れた魔物の群。
いくらなんでも無限に現れるわけはないと思うが流石にめんどくさい。
加えて南門にはボスモンス…ここでは大型種か。それまで現れたとなれば、いつまでもここで遊んでいるわけにはいかない。
ユキ氏の言う通り、種類によっては拙者・ヴィクトリア氏・ユキ氏の3人が揃っていないと勝てない場合があるでござるからな。
「おーい、部隊長とやらはいるでござるかー?」
「な、なんだ。」
そう言って出てきたのは…あぁ、さっき掴みかかってきたイケメンでござるか。
「拙者早々に南門へ向かう用事が出来たので後は任すでござるよ。」
「ふ、ふざけるな!これだけの敵が現れたというのだぞ!?」
「あのねぇ。南門は大型種が出たんでござるよ。大型種。それともあんたが代わりに行ってくれるの?」
「そ、それは…。」
「無理でござろう?んじゃ、拙者はこれで――。」
そう言って去ろうとするとイケメンは拙者の腕を強く掴む。
「なに?」
「た、頼む…。先程の無礼は謝る、この通りだ!」
「…。」
「今貴殿に抜けられたら我が隊の全滅は確実だ!後方の癒し手も疲れきっている!頼む!力を貸してくれ!!」
必死に頭を下げるイケメン。周りの兵士もすがるような視線で拙者を見る。
だが男だ。
男ばかりだ!むさ苦しい!!
何が悲しくて野郎の頼みを聞かなきゃならん!
ユキ氏やジョージならまだ分かる。拙者の心の友でござる。
サウザンドメモリー以外のゲームやアニメ、エロゲーを熱く語れる仲なのだから。
だがこいつらはどうだ?
どうせ拙者を見た目で判断し使えないデブとでも思っていたのだろう。
そんなやつらにいくら頭を下げられても働く気など一切湧かないでござる。
「で?」
「え?」
「それだけでござるか?」
「それだけ…とは…。」
「これ以上用事がないなら拙者バイバイキーンでござる。」
「ま、待ってくれ!」
強引に腕を振りほどき歩き出そうとしたその時、一人の女の子が拙者の前に立っていた。
ローブに縫いつけられた薔薇の紋章から、彼女が白薔薇騎士団の一員だとすぐに分かる。
白薔薇騎士団。
ルミナス第一王女直轄の騎士団。
癒し手…簡単に言えばヒーラーでござるが。
この世界でもヒーラーの数は少ない。聞いた話では1000人に1人いるかいないかだとか。
そんな稀少なヒーラーを集めて結成されたのが白薔薇騎士団でござる。
なぜそんなことが出来るのか?理由は簡単。その第一王女様がユグドラシルでも5本の指に入ると言われる程のヒーラーだからだ。
話がそれたでござるな。
女の子は北門のヒーラー担当としてここにいる。
だが実戦経験のない新米ヒーラーとも聞いていた。
事実、彼女の表情から察するにスキルを酷使し過ぎてMPが枯渇しているといったところでござるか。
「あ……うっ……。」
何かを喋るわけでもなく、ただただすがるような瞳で拙者を見つめる。
くっ……童貞には大ダメージだっ!!
「はぁぁぁ…これは卑怯でござろう?」
「え?」
こんな女の子…いや幼女か、どう見ても。とにかく見捨てるほど拙者は鬼畜ではないでござる。
「忍法!分身の術!」
スキルを口にすると、拙者の影がグイッと押し上げられ3つに分裂。分裂した影はグニャグニャと動きながら形を固定し拙者そっくりの分身が出来上がる。
「お前達、後のことは任すでござるよ。」
そう分身に伝えると一斉に散らばり次々と魔物を切り捨てていく。
いやはや、本当に便利なスキルでござるなー。
「これでいいのでござろう?」
「す、すまない。ありが―――。」
「別にあんた達の為にやったわけじゃないでござる。礼を言うならそこの幼女に言うでござるな。んじゃ。」
それだけ言い残して拙者は南門へと駆ける。途中、幼女が何かを言いかけていた気もするが"あえて"無視。
こういう細かい積み重ねが後の大きなフラグ立てになるかもしれないでござるからな。
◆◆◆◆◆◆◆
というのが、ついさっきまでの出来事。
現在の拙者は二本の刀を抜刀し相も変わらず雑魚処理中。
「ユキ氏ー、いい加減飽きたからケルベロス殴ってもいいでござるかー?」
「よくねぇよ!せめて後200は倒せ!」
「えー、どうしようでござるかなー。」
「クリア!ヒール!これやるから働け!ウインドウォール!」
拙者の両手足に風の輪が浮かび上がる。
おぉ!軽い軽い!やはりバフがあるのとないのじゃ大違いでござるな!
「ユキ氏ーユキ氏ー。」
「迅速術!ストーンウォール!ハイヒール!んだよ!忙しいの見て分かるだろうが!」
「拙者アレが欲しいでござる。ほら、いつものアレ。」
「ヴェノム!エレメンタルウォール!ヒール!はぁ?使う意味ねーだろ!」
「意欲の問題でござるよ。」
「めんどくせぇ…ホーリーウェポン!!」
めんどくさいと言いつつもユキ氏はちゃんとバフを付けてくれる。本当にツンデレでござるな。
強化スキル【ホーリーウェポン】。
その名の通り、武器に神聖属性を付与させるスキル。
死霊系の敵に対してダメージが通りやすくなるが、天使などの神聖属性持ちにはダメージを与えるどころか逆にHPを回復させてしまう。
ちなみに、死霊系でもなく耐性持ちでもない相手に対しては何の効果もない。
今の拙者はほぼ一撃で雑魚を倒せる。故に神聖属性が追加されても雑魚処理の速度が上がるわけではない。
加えて、ケルベロスは水属性が弱点なのでダメージが通りやすくなるわけでもない。
ぶっちゃけて言えば、この状況で使う意味は全くないのでござる。
だが!
だ・が・し・か・し・!!
ホーリーウェポンの効果はそれだけではない!!
なんと!
追加効果で!!
武器が白く輝くのでござる!
刀を一振りする毎にキラキラと輝く姿はまるで流星群。
そう!
実にカッコいいのでござる!
「うんうん。やっぱこれがないと始まらないでござるなー。」
「いいからとっとと仕事しろ!なんちゃって忍者!」
「うるさいでござるよ!鬼畜ヒーラー!」
互いに罵り合いながらも拙者達の表情は緩んでいた。
あぁ…これだ。
何かが足りないと思っていたが、やっぱりこれだ。
MMORPGは一人でやってもつまらない。
仲間と一緒にやるから面白いのでござる!
「そらそら!どうしたでござるか!?もっといっぺんに掛かってくるでござるよ!!」
まるで悪役のように高く高く笑う。ユキ氏に言われた雑魚処理ノルマ200体はあっというまに終了し拙者はターゲットをケルベロスに切り替え、光る刃を振り下ろす。




