表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回復役(ヒーラー)なんぞやってられるか!  作者: こしひかり
【第二章】格闘家(モンク)、引退します
38/50

VSケルベロス ①

感想をいただくと気力がわいてきます。本当にありがとうございます。

「いっ………たくな…い?」


爆音爆風は全身で感じるが、覚悟していた痛みは全くない。


一体どうなってんだ?


恐る恐る目を開く。そこには―――。


「フロントガード!!」


俺とケルベロスの間に入り、ケルベロスに匹敵する程の大盾を顕現させる一人の騎士。

白銀の甲冑で身を包み、右手には真紅に輝く剣。そして剣にも劣ることのない紅い長髪をなびかせている。

顔は見えないが、声と外見から察するにおそらく女性だ。


「シールドバッシュ!」


上体を落とし左足を一歩下げ騎士は叫ぶ。

すると、ケルベロスの突進を防いでいる盾とは異なる盾が彼女の左腕に現れる。


「はぁぁぁぁ!!」


グンッと左腕を大きく天へと振りきると、二つ目の盾は鈍い音と同時にケルベロスへと直撃。苦痛の声をあげながら後退する。

あんな細い腕のどこにこれだけの力があるんだよ…。


「あ、あの…すいません。助かり――。」


まずはお礼を言うべきだと口を開こうとした時、彼女はグルリとこちらに向き直り予想外の言葉を俺にぶつける。

ちなみにかなりの美女だ。


「馬鹿か貴様は!どうして逃げずに棒立ちをしている!?」


「いや、あのですね…――。」


「直撃していれば即死だぞ!私が間にあわなかったらどうするつもりだ!」


「だから…――。」


「しかも何だその格好は!"男"が癒し手の様な格好をしてふざけている――。」


……カチン


「あのな!少しはこっちの話を聞け!助けてもらったことは感謝するが、別に無くても俺は平気だ!」


「なんだと!?」


「そもそも今は動きたくても動けねーんだよ!てめぇの目は節穴か!!」


そう言って俺は聖域を展開させている場所を指差す。


「あれは…まさか、聖域!?」


「そうだよ!俺が今スキルを中断したらどうなる?怪我は治ってるだろうが戦意まで回復する効果なんてねぇ!そんなやつらが敵とまともにぶつかったらたらどうなるかぐらい分かるだろ!?」


頭に血が昇った俺は半ば怒鳴り付けるように言葉を並べる。


「す、すまない…。私も今着いたばかりで現状を把握していなかった。」


美女は本当に申し訳なかったと言わんばかりに頭を下げた。そこで一気に我に帰る。


ヤ・バ・イ。


悪い癖が出てしまった。

いくらなんでも恩人に対して言うべき言葉じゃない。

サスケにあんなこと言っておいて…あぁぁぁ!情けねぇぇぇぇ!!


「いや…その……すみませんでした。助けてもらったことに変わりはないのに…。」


謝罪する俺に対して彼女は首を横に振る。見た感じ年下のようだが俺よりも人間ができている。恥ずかしい…。


「それより、貴殿は本当に癒し手なのか?」


「え?えぇ、"今は "ね。」


「男の癒し手がいるなど聞いていないが…しかも聖域まで使える者など白薔薇には……。」


「どうかしました?」


「いや、なんでもない。今はこの状況を打破することが先決だ。先の一撃も大して効いてはいないようだしな。」


そう言って剣を構える美女。

彼女の言う通り、ケルベロスのスタンは解けており傷も塞がっている。


「さて…どうしたものか。」


「聖騎士長さん…ですよね?」


「……そうだが?」


やっぱりか。なら、上級職であるのは間違いない。


「私とパーティーを組んでくれませんか。もうすぐサスケがくるはずです。あいつが来るまで持ち堪えれば――。」


「断る。」


「!?」


「見ず知らずの者とパーティーを組むつもりはない。」


「んなこと言ってる場合ですか!いくら貴女が強くても一人でケルベロスに挑むなんて無謀だ!」


「それは…えぇい!今回だけだ、いいな!?」


「分かってます。サポートは任せて下さい!」


ピローンとパーティー参加音がするがログを確認している暇はない。

アリアンナの下にもう1つバーが表示されているから問題はないだろう。


(職業はパラディン。レベルと装備は……なんじゃこりゃ!?)


レベルは俺やサスケ同様上限一杯。装備も文句の付けようがない。サスケと引き分けたというのも納得出来る。


……ん?パラディンで装備も揃って紅い髪の美人?


「なんだ。人の顔をジッと見て。」


「い、いえ!なんでもないです!」


「ケルベロスは私に任せて貴殿は兵の援護を頼むぞ!」


そう言うと彼女は尋常ではない速度でケルベロスに斬りかかる。


俺が鈍感系キャラなら気がつかなかっただろうが、残念ながらそんな属性は持ち合わせていない。


彼女はヴィクトリアさんだ。名前もしっかり表示されているので間違いない。

よくよく思い出してみれば、個人チャットでサスケも彼女の名前を出していた気がする。

まさか本当に女性だったとは…しかもあんな美人だったなんて…。


「いかんいかん。今はそれどころじゃない!」


ポーチから再度マナ水を取り出し飲み干す。やはり不味い。

俺のMPは残り半分。そして今もゴリゴリと減っていく。雑魚のヘイトは相変わらず俺へと向いており、距離はおよそ300mか。


「あれ?」


そこで異変に気がついた。

地図に敵は表示されているが、聖域付近には一匹も残っていない。全てがこちらに向かって来ている。

増援が湧いていないのだ。


どういうわけだ、こりゃ?


「いやーユキ氏、遅れてすまんでござる!」


振り返ると、いつの間にかサスケの姿が。

般若の仮面を被ってはいるが顔の肉が多少はみ出している。なんというか…サスケっぽい。


「もう終わったのか!?早くね!?」


「拙者にかかればこれくらい――と言いたいでござるが、現在も戦闘の真っ最中でござるよ。」


「言ってる意味が分からんのだが…お前ここにいるじゃん。」


「分身を置いてきたでござるからな。いやはや、召喚獣みたいで便利でござるよ。」


「分身??そんなスキルあったか?」


「細かいことを気にしては立派な大人になれないでござるよ?それよりヴィクトリア氏は?」


「あそこだ。ケルベロスのヘイトをキープしてくれてる。」


「はぁ?ケルベロス!?なんでそんなのがいるんだよ!」


素に戻ってるぞ、なんちゃって忍者。


「知るかっ!とにかくパーティー参加してくれ、サスケ。」


「しょうがないでござるなー。」


再び音が鳴りサスケのバーが追加される。

前見た時よりHPMPが上がってないか?


「俺はヴィクトリアさんのカバーに入る、サスケはあの集団を頼む。」


「また雑魚でござるか、いい加減飽きたでござる。」


「文句言うなよ、あれで最後だ。理由は分からんが雑魚が湧いてこない。」


「ほぅ。ならさっさと済ませて拙者もケルベロスを殴るでござる…か!」


そう言うとサスケが飛び出す。ヴィクトリアさんも速かったが、サスケはそれ以上だ。一匹目に斬りかかったかと思うと既にそこには居らず、別の敵を攻撃している。


……というかだな…。


「バフまだ入れてねぇだろうが!」


「ドゥフフwww。当たらなければどうということはない!」


またそれかよ…脳筋忍者め!!


ため息をつきながら俺は聖域を終了させ、ヴィクトリアさんをターゲットにしてスキルを口にする。


「プロテクト!リジェネレイト!」


お馴染みの防御バフがヴィクトリアさんとサスケに付く 。俺は二人よりも距離が離れているので効果なし。そしてサスケには不要かもしれないがリジェネレイトを二人に付与。

サスケに関してはこれでいいが、ヴィクトリアさんのHPはリジェネレイトでも回復が追いつかず徐々に減っていく。残り6割といったところか。


「ヒール!光剣の輝き!」


まずはヒールを唱える。リジェネレイトとの回復、そして月光陣の効果もあり彼女のHPは一気に8割近くまで回復する。

更に光剣を使いクリティカル率を上げる。


すると、一瞬だけヴィクトリアはこちらを向く。互いに視線は合っているが交わす言葉はない。

俺は無言で頷く。すると彼女も同じく頷ずき、ケルベロスへの攻撃を続ける。


俺は彼女のバフ回しを熟知している。

どこで何を使い、何を必要としているのか。

それは彼女も同じのはず。なぜなら俺達は3年も共にサウザンドメモリーを駆け抜けた相棒なのだから!


相方は8人パーティー限定ボス。対してこちらは3人。

不利な状況に変わりはない。


だが俺は高揚していた。


いつものメンバーとこうしてパーティーを組み、戦力不足で戦いに挑んでいるこの状況を楽しみ始めてきたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ