新たなヒーラー
少し短いです。なるべく更新頑張ります
アスタルクの街で産まれ、宿屋の娘として生活して16年。
特にこれといった特技もない私は一生をここで過ごすのだろう、そう思っていた。
別にそれが不満だったわけじゃない。街の皆は優しいし、宿屋で色んな人と出会う仕事も好きだ。
だけど…たまに考えてしまう。
女の子なら誰でも1度は願うこと。
おとぎ話に出てくるような格好良い騎士様が白馬に乗って私を迎えに来てくれるんじゃないかって。
でも私も今年で16になった。結婚してもおかしくない年齢だ。
だからそんな夢みたいなことは望まない。
優しくて、私を想ってくれて、そこそこの外見の旦那様が見つかれば十分。…十分なんだって。
そんな風に考えていた時、あの人は現れた。
変わった格好をした男の人。
私よりも年上なのに文字も書けない変な人。
酒場で魔術師に絡まれていた私を見て、真っ先に助けてくれた優しい人。
街が魔物に襲われていると聞くと、危険もかえりみず戦いに行った勇敢な人。
かなりエッチで冗談ばかり言うし反省もあまりしてくれないけれど…そんな人に私は惹かれていた。
ユウキさん。
夢に描いた白馬の騎士様とは大分かけ離れてはいるけれど、そんな彼と添い遂げることが出来たら…なんて考える日もある。
そして、ユウキさんは私にこう言ったのだ。
私には癒し手になる素質があるかも――と。
いつもの冗談だろうと最初は思った。
けれど、王都の騎士様も同じことを言うのだ。
癒し手。
癒しの神イシュト様の加護を受けた者しかなることを許されない存在。
ユウキさんがどんな仕事をしているか聞いたことはない。
でも、戦場に出て戦う人だということは分かる。
そんな彼の役に立ちたい。
胸を張って隣を歩きたい。
受けた恩を少しでも返したい。
もしも…
もしも私に力があるのなら…―――。
「私…癒し手の素質が本当にあるんでしょうか!?本当にあるのなら……私―――!!」
この気持ちは嘘じゃない。
この想いに迷いはない。
私はあなたの―――!!
「ユウキさんの力になりたいんです!!」
私の言葉に驚き、そして困った表情をするユウキさん。
難しい顔でしばらく考え、普段見ることない真剣な表情で返事をしてくれた。
「癒し手なんてろくなもんじゃないぞ?」
「構いません。」
「いいように使われるだけかもしれないぞ?」
「構いません!」
「また着替えを覗くかもしれないぞ?」
「構いま―――な、なんでですか!!」
まったくもう!この人は…。
「分かった。ちょっと待ってくれ。」
そう言ってユウキさんは背を向けると、空中で指を動かす。
すると黒い鎧姿から今まで見たこともない神々しささえ感じるローブ姿へと早変わりしたのだ。
その姿はまるで癒しの神イシュト様の肖像画のようで、ユウキさんに―――。
「まったく似合ってない…。」
「ん?何か言った?」
「ななな、なんでもないです!」
「ならいいんだけど。時間もないから手早く済ませよう。」
理解が追いつかない私を見ながらユウキさんは口にする。
「アリアンナ。君はクレリックだ。」
「?」
どういう意味だろう?
「いいから復唱して。クレリック。はい!」
「く、クレリック?」
言い終えた瞬間、私の体が光り出す。
眩しく、でも暖かい光。そして光は一気に集束するとポンッという音と共に小さな球体となって私の胸の中へと入っていく。
「ゆ、ユウキさん!なんですかこれ!?私どうなっちゃうんですか!?」
オロオロとする私を険しい目でジッと見つめてくる。なんだか恥ずかしくて顔が熱くなってきた。
「うむ。成功だ。」
「一体何が成功なんですか!?分かるように言ってください!」
ガシッと両肩に手を置いてユウキさん。意識してやってはいないのだろうけど、やられるこっちの身にもなって欲しい。
「アリアンナ。今日から君はヒーラーだ。」
「ヒーラー?」
「癒し手ってことだよ。」
にっこりと微笑む。でも、その瞳の奥は何だか悲しそうだった。
「私が…癒し手……。」
「おう!よろしく頼むよ、アリアンナ。」
実感なんて全然ない。でも彼が言うんだ、間違いない。
……多分。
「はい!」
私は癒し手となったのだ。




