再会の晩餐会 ③
なんとか1ヶ月以内に投下出来ました
「どういうことよ!」
ヴィクトリア氏との模擬戦が終わり、自部屋へ戻ると早々にソフィアたんは拙者に罵声を浴びせる。
罵声というよりは駄々をこねているといったほうがいいでござるな。
恐いどころか実に愛らしい。
「あんた!ヴィクトリアと顔見知りだなんて一言も言わなかったじゃない!」
そりゃ聞かれてないでござるからな。
なんて言えばソフィアたんは更にプンプンするだろう。
それはそれで見ては見たいが、あまり意地悪すると嫌われてしまう可能性がある。
男は黙って口一文字でござるな。
「で、どうなの。」
「何がでござるか?」
「あんたはヴィクトリアに勝てるのかってこと!」
サウザンドメモリーには闘技場という場所があり、そこではプレイヤー同士が戦えるという機能があった。
だがそれは1対1ではなく4対4での勝負。
故に、タンクであるヴィクトリア氏とアタッカーである拙者がタイマンで戦った場合どうなるか?なんてことは考えたこともない。
「単純に考えれば、タンクのヴィクトリア氏がアタッカーである拙者に勝つのは難しいと思うでござるが―――。」
当たり前だ。
どんなにタンクのHPと防御力が高いとはいえ、同レベル・同等の装備だった場合は断然アタッカーの方が有利となる。
だが―――。
「正直、今の段階では確実に勝てるとは言えないでござるな。5割…いや、それ以下かもしれないでござる。」
ここではゲームと違い、コントローラーやキーボードで操作するわけではない。
自分の身体で動かなくてはならないのだ。
1ヶ月前。
しゃむしゃむ氏の生放送に参加してた拙者は覚えたての新スキルを披露しようとした。
結果、どういうわけか異世界に飛ばされてしまったらしい。
神様曰く、『こっちだって好きで選んだわけじゃない』とのこと。酷い言われようでござる。
ラノベでよくある異世界転生系なら外見は超絶イケメンになるはずなのでござるが、悲しきかな。
見た目は現実世界の佐藤元気そのままでござった。
だが拙者のステータス・所持品などはサウザンドメモリーのサスケと全く同じ。
拙者は素直に喜んだ。
現実なんてものは糞でござる。
ガチオタである拙者の理想郷は二次元。その夢が叶ったのでござるからな!
加えて、ソフィアたんのような美少女とキャッキャウフフ出来るのでござるから未練なんぞ皆無!
――と、話がずれたでござる。
詰まるところ、拙者はまだここでの戦いに慣れていないのだ。
具体的に言えば、ゲームをしてる頃の半分ぐらいしか動けていないだろう。
だが、もう少し練習すればゲームと同様の動きが出来るはず。これは間違いない。
1ヶ月練習した結果、全力ではないにしろヴィクトリア氏と良い勝負が出来たのでござるからな。
「もう少し時間を貰えば、完全勝利をソフィアたんにプレゼントするでござるよ。」
「本当でしょうね…。」
「拙者、嘘はつかないでござる。にんにん。」
「それが嘘っぽいのよ!はぁ……まぁいいわ。さっきも言ったと思うけど、今夜の晩餐会であんたを紹介するから準備をしておきなさい。いいわね!」
高飛車な態度でソフィアたんは言い放つ。
こういうソフィアたんもゾクゾクして堪らないでござるが、やはり一番は―――。
「ソフィアたん。そうじゃないでござるよ?」
何を言っているの?といった表情のソフィアたん。
だが、拙者の熱い視線で気が付いたのか。その顔はみるみる赤くなっていく。
「なっ――、さっきやったでしょ!?」
「それはそれ。これはこれ。でござる。」
「ぐぬぬ……。」
拙者はソフィアたんに仕える忍者。
だが仕えるにあたって、いくつかの条件を出している。
1つ。衣食住の確保 。
2つ。ある程度自由に行動出来る権利。
そして最も大切な3つ。それは―――。
覚悟を決めたのか。キョロキョロと辺りを見渡し、誰もいないか確認すると大きく息を吸ってソフィアたんは口を開く。
「お願い、お兄ちゃん。ソフィアのお願い聞いて?ね?」
両手を組み、頬に当て軽く首を傾げる。
その姿はまさに天使。拙者の求める究極の妹キャラ!
そう。
拙者が出した最後の条件。
それは、依頼の際には必ず"お兄ちゃん大好き妹キャラになってもらう"というもの。
「ふぉぉぉ!!ソフィアたぁぁぁん!!」
「よ、寄らないでよ!暑苦しい!!」
ぷにぷにの柔らかい手が拙者の顔をギュウギュウと押し退ける。
あぁ、生きててよかった…。
◆◆◆◆◆◆◆
派手に登場しろと言われた拙者は暗くなった会場でで閃光弾を使う。
カッと鋭い光が闇を切り裂く。これならソフィアたんも満足でござろう。
アイテムのようにも思えるが、これも忍者が使えるれっきとしたスキルの1つ。
効果は周囲の敵に数秒間【暗闇】の状態異常を付与し命中率を下げるといったもの。
とはいえ、戦闘では全く役に立たないので使うことはほぼない。
「忍者サスケ、ここに見参でござる!」
打ち合わせ通り、ソフィアたんに呼ばれて姿を現す。
服装は勿論漆黒の忍者衣装。
分厚い金属で出来ている手甲と具足。
顔には修羅の面という名の鬼の仮面。
左右の腰には2本の刀。1本は小烏丸、もう1本は佐助の刀という現状最強の忍者武器。
拙者の装備スタイルは速度・火力重視。
回避力と行動速度はトップクラスではあるが、防御に関して紙装甲である。
まぁ、その辺りはユキ氏がなんとかしてくれてたでござるからな。
会場を見渡すと予想通りというかなんというか、ほぼ全員が驚きの表情を浮かべている。
こっちにきて分かったことがいくつかある。
その中でも驚いたのが、職業を"持っている "人があまりに少ないということ。
しかも持っている人の大半が基本職であり、中級は稀に見かける程度。上級に関してはヴィクトリア氏を除いて見たことがない。
そのせいか、拙者の使うスキルを見ると大体の人がポカンと口を開け"こんな感じ"になるのだ。
だがそんな中――。
「?」
一人。
たった一人だけ違う反応をしている男の姿。
全身を真っ黒の鎧でかため、派手な赤いマントを付けた騎士。
髪はこの世界でも珍しい黒髪。
というか、日本人に限りなく近い気がするでござるな。
表情は確かに驚いてはいるが、それは使ったスキルや拙者の外見に驚いているわけではない。
なんというか…その……そうそう!ヴィクトリア氏が拙者と再開した時と同じ表情なんでござる!
………ってことはもしかして…。
視線を黒騎士に合わせて、相手のステータス画面を
開く。
この世界でも相手のステータス画面は覗ける。
最初は触らないと見えなかったが今ではゲーム時と同様に、こちらが"見たい"と強く念じれば見えるようになった。
そこに書かれていたのは―――。
【名前】【★ユキ】
【職業】【暗黒騎士】
★マークはフレンド登録しているプレイヤーにしか表示されない。
そして拙者のフレンドでユキというプレイヤーは一人しかいない。
つまり……それは――!!
「ユキ氏ーー!!」
段上から飛び降り、大勢の人の隙間を風の如く駆け、あっという間に拙者はユキ氏の目の前に立ちガバッと両手を握る。
「ユキ氏もこっちに来ていたでござるか!」
「それはこっちの台詞だ!サスケ!!」
互いにブンブンと子供のように両手を振る。
じわじわと目頭が熱くなる。
あぁ、そうか。先程のヴィクトリア氏はこんな気持ちだったのでござるな!
やっと出会えたリアルフレンドに、拙者はただただ再会を喜んだ。




