再会の晩餐会 ①
大分更新していませんでしたが、辛うじて生きています。
今回は短いですが、次は長くなる予定です
「ユキ様、大丈夫ですかにゃ?」
「あ、あぁ…うん。大丈夫だ…。」
急に大声を出したせいかジルマのウサミミはクタッと垂れ下がっている。
俺はといえば、ひとしきり声を出したおかげもあって頭の中が実にクリアな状態だ。
よく考えてみろ椎名優樹。
ここは異世界。
俺がいた世界とは時間軸がずれていたっておかしくないじゃないか。
現に俺自身、体が変化した様子はないし食欲だっていつも通りだ。揚げ物を食べても胃もたれを起こしていない。
会社の先輩も言っていたじゃないか。
25越えたら体が第2フェーズに移行すると!
大丈夫。俺はまだ第1フェーズのままだ!!
「ところでユキ様。本日はどのようなご用件で?」
そういえば、未だに保管所での目的を果たしていなかったな。
アリアンナを一人にして余計なことを聞かれてもまずい。早々に用件を済ませて合流しないと。
「今所持してるアイテム・装備の預かりと、引き出し…後は残金の確認をしたいんだが。」
「かしこまりましたにゃ。ではまず、こちらの書面にサインを―――。」
ゲームではワンクリックで解決していたが、異世界ではそうもいかないらしい。
結局、用事を済ませた頃には日が暮れていた。
◆◆◆◆◆◆◆
「近くで見ると、本当にでかいんだな…。」
野球ドーム並みの大きさに、10階建てのビルはあろう高さの城。
城の周りは深い水堀でぐるりと囲まれており、大きな跳ね橋が城門へと繋がっている。
初めて目にするその迫力に、俺はただただ馬鹿みたく口を開け見上げていた。
……っと、いかんいかん。
こんなとこで足を止めている場合じゃない。
俺は暗黒騎士の兜をポーチから取り出すと深々と被る。
やはり暗黒騎士たるもの、素顔を他人に見せるわけにはいかないからな。
全身を真っ黒の鎧甲冑に包み、紅いマントを翻し城門へと足を進めた。
◆◆◆◆◆◆◆
―――――はずだったんだが…。
「いや、だから。俺はマルコに呼ばれてここにだな――。」
「嘘をつけ!貴様のような怪しい輩をマルコ殿が招くわけがないだろうが!」
「今時、子供でもそんな嘘に引っ掛からんわ!」
二人の門兵が互いの長い槍を交差させ、俺の進路を阻んでいた。
「そもそも!顔も見せれないような輩を城内に入れると思っているのか!?」
実に正論だ。反論の余地もない。
だが俺にも譲れないものがある!
「この兜は俺の…暗黒騎士の魂だ。これを外すということは、暗黒騎士の誇りを捨てることと同じ……そんなことは出来ん!」
「ならさっさと帰れ!これ以上ごねるなら牢に叩き込むぞ!」
「待て。冷静だ。冷静に話をしようじゃないか。」
「ユウキ…さん?何をされているのですか?」
ピンチの場面に颯爽と現れるマルコ。
主人公っていうのはこういう奴のことを言うんだろう。俺には到底真似できそうにない。
「これはマルコ殿!お見苦しいところを!」
「すぐに叩き出しますのでお待ちください!」
「いや、その……僕が招いたんです。その人は。」
「「え?」」
ポカンと口を開く門兵。ついさっきまで、自分もこんな感じで城を見上げていたのかと思うと何だか複雑な気持ちになる。
「では行きましょう、ユウキさん。」
そう言って城内へと歩くマルコの後を、まるで金魚の糞みたく俺は付いていく。
◆◆◆◆◆◆◆
「どうして兜を脱がなかったんですか?」
歩きながら、ふとマルコは疑問を口にする。
「これを脱いだら、俺の溢れんばかりの闇のパワーがオーバードライヴしてしまうからな。」
「はぁ…。とりあえず今はいいですが、今夜の晩餐会ではちゃんと脱いで下さいね。」
「晩餐会?」
「えぇ。どうも突然決まったらしいんです。本来なら僕等が参加するなんてことはありえないんですが、大型種討伐に成功した労いというかなんというか…。」
「もしかしなくても、偉いさんとかが集まるのか?」
「ですね。」
それが何か?という表情のマルコ。
冗談じゃない。俺は目立つのが非常に苦手だ。
ゲームならまだしも、リアルで目立ちたいと思ったことはこれっぽっちもない。
慎ましい生活こそ理想。一般人万歳。
「マルコ君。1つ相談なんだが―――。」
「ちなみにアリアンナさんは強制参加です。あれだけの力を持つ癒し手…。今後のルミナスを担う大きな力となりうる可能性がありますし。なのでユウキさんも同様に強制参加ですね。」
「なんでそうなる!」
「いや…アリアンナさんの強い希望で……。というか、ユウキさんはアリアンナさんの護衛を任されているのでは?」
「え?あっ……あー……そ、そうだった!……な…。」
自分の首を絞めるとはよく言ったものだ
こうなれば俺も大人の男だ。
腹を決めて決戦に挑むしかない。
「…………めんどくさい…。」




