聖騎士VS忍者 ③
色々あって更新が途絶えてましたが、まだ失踪していません。
サスケならば二撃目も避けるだろうと予想していた。
そして距離を取り得意としている雷の魔法を使ってくるのも想像が出来た。
だからこそ、それに対する対策をある程度用意はしていた。
だが―――。
「忍法・分身の術!」
想定外の出来事。
1人だったサスケの姿があっという間に16人へと増える。
前から速い速いと思っていたが、残像を残せるほどの速度で動けるとは…。
だが、どんなに速く動いたところで実体は1つ。
それさえ見極めれば対処は難しくない。
そして私は―――その"術"を持っている!
【鷹の目】と名付けたその技は"自分が倒すべき目標を絶対に見逃さない"というもの。
別に特殊な訓練をして出来るようになったわけではない。
ユキと共に戦場を駆けている間に自然と出来るようになったのだ。
意識を集中させ、倒すという強い意志を持つことによって【鷹の目】は発動する。
これを使えば、いかにサスケが残像を残す速度で動いていたとしても確実に本体を見極められるはず!
意識を16人に見えるサスケへと向け【鷹の目】を発動させた。
【鷹の目】によって定めた目標は、全体が赤みを帯びて光る。
本体である1つが光る。
そう、私は思っていた。
が――――。
「!!」
私の瞳に映ったのは、16人のサスケ"全て"が赤みを帯びているという信じられない光景。
今までの経験上【鷹の目】に間違いはない。
つまり、この16人のサスケは全て"本物"ということになる。
「これで終幕でござるな!」
どうする?
一時的に"どんな攻撃も防ぐ"技はある。
だがキングキャッスルを使って私の体は硬直して動かない。
そしてその技は使うまでに多少の時間が掛かってしまう。
サスケの切っ先はすぐ目の前…。
悩んでいる暇は―――。
「サスケ流奥義!多段抜刀!!」
――ない!!
前後左右、逃げる隙間など微塵もない剣撃が襲い掛かる。
私はそっと瞳を閉じた。
ふと聞こえたのはソフィア様の歓喜の声。おそらく、サスケの勝利を確信したのだろう。
ですが………申し訳ありませんソフィア様。私はまだここで負けるつもりはないのです。
サスケが初めて私に見せた技があるように、私もサスケやユキ達に見せたことがない起死回生の技があるのだから!
「――――――っ!!」
紅い火花が舞う。
金属同士が激しくぶつかる音が修練場に響く。そのあまりの大きさに私の声をかき消されていた。
そして―――一瞬の静寂。
それを破ったのは……サスケの一言。
「いくらなんでもこれは……反則ではないでござるか?」
「よく言う。全てが実体なんて馬鹿げた分身を使うやつに言われたくはないな。」
16人のサスケが方膝を付いている私をぐるりと囲い、32本の剣を降り下ろしている。
だがそれは全て私には届いてはいない。
なぜならいくつもの大盾が私の体を隙間なく顕現し守っているからだ。
【フルガード】
ユキ達と連絡が取れなくなった3年の間に私が編み出した新しい技。
連続して使うことは出来ないが全方向からの攻撃を防ぐことが可能な、私の切り札の"1つ"。
「とはいえ…無傷とはいかないか。流石はサスケといったところだな。」
致命傷は避けたものの、想像以上の衝撃波が大盾を突き抜け体に傷を与えている。
軽装だったということもあり、剥き出しになっている手足からはうっすらではあるが血も滴っていた。
「さぁ、サスケ。続きをしようじゃないか。」
「いやいやいやいや!駄目でござるよ、ヴィクトリア氏!血が出てるでござるよ!!」
「こんなものは傷の内に入らん。模擬戦とはいえ真剣勝負…。これぐらいどうってこと―――。」
「ちょっと待つでござる!拙者、精霊の秘薬持ってるでござるから!!」
そう言うとサスケは慌てて胸元から袋に入った粉を取りだし、勢いよく私の全身にふりかける。
すると……。
暖かい光が傷口を包み込み、あっというまに傷が塞がっていった。
というか…精霊の秘薬って―――!
「なっ――!?お前は馬鹿か!なんて物を使っている!!」
「緊急事態だから気にしなくていいでござるよ。」
「どこが緊急事態だ!精霊の秘薬といえば1ついくらすると思っている!!」
「今の相場いくらでこざるか?」
「昔とは違うのだ。今はほとんど出回っていない。仮に売っていたとしても、純度の高い宝石数個分はくだらないのだぞ!?」
「となると……100万ぐらいでござるか?なら大したことないでござるな^^」
平然とそんなことを口にするサスケ。
流石にシャール殿下も唖然としている。
ユキもそうだったが、彼等の金銭感覚は昔から異常だ。
100万200万を高いとも思わず平然と使い、貴重な消耗品を惜しむことなく使う。
そんな彼等と一緒だったからこそ、偽りの塔に挑めたのかもしれないが…。
「はぁ…なんだか急にやる気が失せてしまったな…。ソフィア様。今回はこれぐらいでよろしいでしょうか?」
「え?えぇ……そ、そうですわね…。」
「ソフィアたん、どうしたでござるか?」
「な、なんでもありませんわ!」
「ははーん…さては、拙者の華麗な動きに魅了されていたのでござるな?どぅふふふwww拙者はなんと罪深き忍者でござ―――ぐほぉ!?」
ソフィア様の右の拳が綺麗にみぞおちへと決まり、前のめりになってサスケは崩れる。
ふむ。ソフィアもなかなか筋が良いのかもしれない。
「今日はここまでにいたします。ですが、お兄様。よく覚えておいて下さいませ?私にもヴィクトリア様に劣らぬ……お姉様にすら届くほどの護衛があるということを。」
「あぁ、覚えておくよ。ソフィア。」
「ありがとうございます。では、今夜の晩餐会で――いくわよ、豚!!」
サスケの首根っこを引っ張りながら二人は修練場を後にする。
粗悪な扱いを受けているにも関わらず、なぜサスケが嬉しそうなのかは分からないが……。なんにしても無事でよかった。
サスケが無事ということは、ユキもジョージも生きているに違いない!
「ヴィクトリア。」
ソフィア様の姿が完全に消えたのを確認して、シャール殿下は口を開かれた。
「はっ!なんでしょう、殿下。」
「あのサスケという者以外に、お前と共に偽りの塔へ挑んだ者は何人いる?」
「それは――。」
「答えよ。」
シャール殿下の目は真剣。
嘘で誤魔化せる状況ではないな…。
「他に…6名です。」
「そうか…6名か。いや、突然呼びつけてすまなかったね。君も今夜の晩餐会には出席するのだろう?それまでは休みたまえ。」
「はっ…。」
普段と変わらぬ笑顔のシャール殿下。
だが、その笑顔の奥に潜む"ナニカ"を私は初めて見た。
そんな気がしたのだ。




