いざ行かん、王都へ ①
体調を崩してました。
次回からは優樹のチート力を出していきます。
「では、一時間後に中央広場で。」
そう言い残し、ウォードは魂の抜けたマルコを引きずって宿屋を出ていった。
アスタルクから王都ルミナスまでは馬を使って大体2日かかるとのこと。
我が愛馬ブリュッツェンを使えば半日もかからないのだが、流石に目立つので使うわけにはいかない。許せブリュッツェン。
というわけで、俺とアリアンナは自警団が用意してくれる馬での移動となった。
問題は――。
「王都でこんな服着れないし…でもオシャレな服を今から買う時間もお金も……。あぁもう!どうしよう!」
コロコロと表情を変えながら一人忙しそうに動くアリアンナ。
だが動きのわりに作業は全く進んでいない。というか、これ一時間で終わらないだろ。
「とりあえず1~2日分の着替えだけ用意して、他は現地調達すればいいんじゃないか?」
「そんなお金を私が持ってるわけないじゃないですか!」
「それぐらいなら買ってやるから。」
「え?いくらなんでも…。」
「いいよ別に。原因は俺にあるわけだし…」
「なにがですか?」
「な、なんでもない。」
なるほど。
難聴スキルとはこう使うのか。勉強になるな。
「それより、もっと防御性能高そうな服はないのか?」
部屋に散らばっている服を見る限り、どれも戦闘向けではない普通の洋服である。
「そんなのあるわけないじゃないですか。私、冒険者じゃないんですよ?」
「そりゃそうだ。仕方ない…ちょっと待ってろよ…。」
「?」
アリアンナに背を向けシステムウィンドウを開き所持装備品を確認する。
これは職業制限あるから駄目だし…こっちは見た目がアレだな…。
「お、これなら…。」
俺はポーチに手を突っ込み、1枚の赤いローブを取り出す。火竜のローブという防具だ。
「とりあえずこれを着るといい。」
「い、いいんですか!?なんだか凄く高そうな服ですけど…。」
「そんな大した物じゃない。気にするな。」
そう言ってアリアンナに手渡す。
嘘です。大した物なんです。
このローブは、その名の通り火竜から取れる素材で出来ている。
火竜自体は珍しくないのだが、要求される素材の必要数が尋常でないぐらい多いのだ。
にも関わらず、防具としての性能は実に平凡。
火属性無効化は付いているが、属性無効化はアクセサリーで代用出来るので必要性は薄い。
そんな一見ゴミにも思える火竜のローブだが、マーケットでの落札価格は数百万単位。
なぜか?
理由は簡単。格好良いからだ!
全体の半分に描かれた天に昇る竜の絵。
袖口や裾部分は炎のエフェクトで燃えさかり、夜にはなんと!ローブ自体が発光する!!
装備にとって最も重視すべきは性能。
しかし!それと同等…いやそれ以上に、見た目も大事なのだと俺は思う!
「そうだろ!?アリアンナ!」
「意味がわかりませんよ…。」
「さぁ!早くそのローブを身に纏うんだ!」
「そう思うなら早く部屋から出ていって下さい!!」
ラノベやアニメなら覗きイベント起こるはずなんだが、現実とは残酷である。
◆◆◆◆◆◆◆
「ねぇ。1つ確認させてもらえるかしら?」
「なんだ。」
「あんた、モンクだったわよね?」
「そうだな。」
「ならどうして、鎧着て剣持ってんのよ!!」
中央広場に着いて早々、俺はバードになった騎士サラに絡まれていた。
この娘いつも怒ってるな…。
「サラさん、俺はこう思うんだ。」
「なによ。」
「騎士になるのに、理由がいるのか?と。」
「いるに決まってんでしょうが!」
ほぅ…、なかなか的確なツッコミをする。
アリアンナのようにはいかないか。
「お、落ち着いて下さい!サラ様!ユウキさんはふざけた風を装っていますが本当は……本当は…あれ?」
なぜそこで疑問形になるのかな、アリアンナ君。
「ふんっ。気安く話し掛けないで。私、貴女のことが嫌いだから。」
「落ち着いて、サラ。さっきも説明したけど今の彼女はアリアンナさんで、僕等と共闘したユキさんは別の人格なんだ。」
「別の…人格?」
「はい。そうですよね?」
「えっ。」
「えっ。」
お互いにキョトンとした表情になるマルコとアリアンナ。
行き場の無くなった視線は必然的に俺へと向けられるわけで…。
そういえば、アリアンナには裏人格の設定を説明してなかった。
…
……ま・ず・い!!
「まぁまぁマルコ君、まちたまえ!」
強引に肩を寄せて小声で耳打ちをする。
「どういうことですか、ユウキさん。彼女、何も知らない様子ですが…。」
「それはそうだ。何せユキの存在をアリアンナに教えていないのだからな。」
「それには何か理由でも?」
「マルコ君。仮に君の中に別の人格があると言われてどう思う?」
「それは…信じがたいですね。」
「だろ?そんなことを言えば不安にさせるだけだ。俺は彼女に普通の生活をしてもらいたい。だからあえて…あえて!教えていないのだよ!」
俺に演劇の才能があるとは思えないが、マルコは『なるほど。』と深く頷いて納得している。
この青年、詐欺のカモにされてないか心配になるな。
一方アリアンナは疑いの眼差しで俺を睨んでくる。
片手で謝る動作をすると、深いため息をついていた。
後で丸め込むのが大変だな…。
「さぁさぁ、出発をしよう!話は道中にすればよかろう?」
俺とマルコの背中を力一杯叩くウォード。
勢いで前のめりになるが、おかげで話をうやむやに出来た。
よし、"さん"付けを検討してあげるか。
「では皆さん、行きましょう。王都ルミナスへ。」
マルコの掛け声と共に、俺達はアスタルクの街を後にした。




