各々の討伐、そして… ④
ラフレシアを倒したことにより、小型モンスターはこれ以上増えることはないだろう。
周辺を見渡す。
残りは既に片手で足りる数。HPは減っているが俺がいなくとも問題はないだろう。
「隊長!」
「マルコ!」
サラとウォードさんがマルコの元へ駆け寄る。
逃げるなら………今しかないっ!
焦るな、焦るな椎名優樹。
慎重だ。慎重に動くのだ。
ぬきあし、さしあし、しのびあ――。
「待ってくれ!」
「!?」
ああっと!見つかってしまった。
だがここで立ち止まるわけにはいかない。
俺の冒険はまだ始まったばかりだ!
「申し訳ないですが人を待たせているので、私はここで失礼します。」
咄嗟に出た言葉はMMORPGでよくある台詞。『友達に呼ばれたのでパーティー抜けますね』だった。
実際には呼ばれていないが、パーティーを抜ける際に一番便利な台詞ナンバーワンなのは言うまでもないだう。
というか、ミラージュパウダーの効果時間は残り1分を切っている。
これ以上長居は出来ない!
「君の名前は!!」
「私の名はユキ。通りすがりのヒーラーさ。じゃ!」
何の考えもなしに、そう言い残すと俺は全速力で街へと駆けた。
この言葉が後々厄介を増やすとも知らないで。
◆◆◆◆◆◆◆
「ギリギリ間に合ったか…。」
ミラージュパウダーは門をくぐる前に効果を切らしたが、運の良いことにまだ誰もいない様子。
ほっと胸を撫で下ろすと俺は再び職業をモンクへと変える。
それにしても疲れた。
戦闘自体は大したことはないが、時間制限があるとなれば話しは別。
もう少し余裕のある戦闘がしたいものだ。
ポーチから清涼飲料水を取りだし、渇いた喉を潤す。
でもあれだな。
分かっていたことだがモンクは大変だ。
覚えるスキルは多いし、火力が高い分タンクからヘイトを奪いやすい。
そしてなにより!敵を直接触らないといけないが問題だ!
なんかブヨブヨして気持ち悪いんだよ…ほんと。
次は武器が持てる職業にしよう。うん、それがいい。
一人頷きながら街の中央へと足を進めると目の前には高台が。
アスタルクの中央には大きな高台がある。
思い出すなぁ…ゲームを始めたばかりの頃は意味もなく登っていたっけ。
「ゆ、ユウキさーん!!」
俺の名を呼ぶ女の子の声。高台へ視線を向けると、ピョコンと顔だけ覗かせるアリアンナの姿。
「おー。もう大丈夫だぞー。魔物は片付いた。」
「ほ、本当ですか!?」
グッと親指を立てて笑うと、アリアンナは嬉しそうな表情で街の無事を他の住民にも知らせている。
しばらくすると、高台からは大勢の歓喜に満ちた声。
…まぁ……なんだ。
守れてよかった。
◆◆◆◆◆◆◆
「おう!モンクの旦那!大活躍だったらしいじゃないか!」
「アリアンナちゃんから聞いてるぜ。街の為に魔物と戦ってくれたんだろ?」
その日の夜。
アリアンナに連れられ酒場へと向かうと、店の中は既にどんちゃん騒ぎ。そして俺は店長とその弟に挟まれ酒の入ったジョッキを持たされる。
「まだ注文してな――。」
「いいんだよ。これは奢りだ。」
「街を救った英雄から金は取らんさ。」
周りからも『そうだそうだ』『飲め飲め』と声をかけられる。
こういうのには慣れていないから照れ臭いな。
頭をかきつつも俺は貰った酒を喉へ流し込む。
うん、うまい。
そういえば煙草吸ってないな…。ヘビースモーカーじゃないが、そろそろ恋しい。
「親父、煙草ってあるか?」
「たばこ?」
やはり言葉が通じないようで、ジェスチャーをして伝えてみる。
「あぁ、葉巻か。」
どうやら伝わったようで、酒場の親父は上着からから葉巻を取り出す。
こんなの吸うのは初めてだな。
テーブルに置かれている灯りで火を付け、深く吸う。普段吸っているものと味は違うが、これはこれでいいものだ。
「しっかし、いいのか?」
「なにが。」
「いや、お前さんモンクだろ?葉巻なんか吸って大丈夫なのか?」
「細かいことはいいんだよ。それにモンクは今日で店じまいだ。」
「なんだそりゃ。ガハハッ!」
親父につられて笑う。いい感じにニコチンが回ってきたらしい。
「それはそうと、アリアンナは?」
店内を見渡すが、連れてきた張本人の姿はどこにもない。
「気になるか?」
「そりゃまぁ…。」
「鈍いな旦那。女は身だしなみに時間がかかるもんだぜ?っと、噂をすれば…ほれ。」
自警団の弟がカウンター裏を指差す。
葉巻をくわえなが振り向くと、そこには―――。
「お、お待たせしました…。」
青白いワンピースに身を包み、頬を染めて恥じらうアリアンナの姿。宿屋で見た時とはまるで別人。
「ど、どうでしょう…か?」
アリアンナは毛先をいじりながら視線を外し、モジモジとしながら尋ねる。
それに対して俺といえば、馬鹿みたいに口をポカンと開けて葉巻を落としていた。
そんな俺を見かねたのか、両隣のオッサン達はシンクロするように『ほれほれ』と肘で脇腹をつつく。
「い、いいんじゃないか!うん。凄く似合ってるぞ!」
「本当にそう思ってますか?」
じっと俺の目を覗きこむ。その仕草は御世辞抜きで可愛い。
なんだこの破壊力は。今『良い壺があるんです』とか言われたら、ホイホイ買ってしまうぞ!
「買わないからな。」
先手を打ってアピール。
「なにがですか。ほんと…おかしな人…。」
クスクスと笑うアリアンナ。
そして宴は再開された。
何度も乾杯をする人。曲に合わせて踊る人。流れに便乗して告白する人。
色んな人が笑っている。
こういうのも悪くないな。
そんなことを考えながら2本目の葉巻に火を付ける。アリアンナはムッとした顔。
どこの世界でも喫煙者の肩身は狭いらしい。
フッと煙を吐き出した時、バンッという音と共に店のドアが開く。
勿論全員の視線がそこへ集まる。
そこに居たのは、息を切らす一人の騎士。
「おぉ、マルコ!どうしたんだ?」
酒のせいもあり、俺は気安く声をかける。
軽く辺りを見渡し俺を見つけると、マルコは一目散に駆け寄ってきた。
「はぁ…はぁ…。やっと……見つけた…。」
「見つけたって何を―――。」
バッと両手で手を握るマルコ。
そして――。
「僕と一緒に来て下さい!」
「え?」
何が起こっているのか理解出来ない、そんな様子の少女がそこにいた。
当たり前だが俺ではない。
「えぇぇぇぇぇ!!??」
アリアンナの声が声が店中に響く。
長い1日はまだ終わりそうにも……ないなこりゃ…。
これにて一章が終わりです。戦闘の表現は本当に難しいです。
二章の構成も大体出来ているので、平日1話ぐらい更新でやっていきます。
ダメだし、誤字脱字、など感想もらえると嬉しいです。




