各々の討伐、そして… ③
土日は更新が出来なく、遅くなりました。
多分次で一章終わりです。
「プロテクト!」
まずは全員の物理・魔法防御を上昇させる。
ヒーラーの補助スキルが珍しいのか、青年騎士は自らの体を何度も確認していた。
「ぼさっとするな!さっさと攻撃してこい!」
「わ、わかった!」
こっちには時間がない。
残り効果時間は約5分。1つの無駄も許されない状況。
焦りの混じった俺の言葉を聞いて青年騎士はラフレシアへと飛び出す。
それに続くように俺はスキルを唱えた。
「ウィンドウォール!」
対象に薄い風のバリアを纏わせる補助スキル。
ダメージ軽減はストーンウォールよりも劣るが、代わりに対象のagiを上昇させ回避率を高める効果がある。
「リジェネレイト!」
次に唱えたスキルはリジェネレイト。
対象に短時間ではあるが継続回復効果を与える回復スキル。
青年騎士のHPは最大値の4割まで減っていたが、ユキのレベルと装備があれば一回の回復量はヒールより劣るリジェネレイトでも十分に間に合うと、俺は判断した。
「マルコ隊長!今加勢します!」
「無茶するなよ!サラ!」
そう言ってオッサンと紅一点が飛び出そうとする。
なるほど。青年騎士がマルコで、オッサンがウォード。紅一点はサラか。
「待て!まだ行くな!」
ラフレシアに飛びかかろうとする二人を大声で止める。
「なぜだ!?」
「早く倒さないといけないんでしょ!?」
「確かにそうだが、強化も焚かないで突っ込むな!お前らの頭は蒟蒻か!?」
「バフ?」
「コンニャクってなんのことよ。」
蒟蒻はいいとして、ゲーム用語が通じないってのはやりにくいな。
「とにかく、今から私の言う言葉を復唱しろ。いいな?光剣の輝き!」
ウォードとサラの周りをぐるぐると何本もの剣が回り、切っ先を向けて体を貫く。
痛みがあると思ったのだろう。
二人とも剣に対して身構えるが、自分達の予想と全く違う効果に驚愕の表情を浮かべる。
「まずウォードさん!」
「お、おう!」
「バースト!」
「ば、ばーすと?」
ウォードさんがそう口にすると、彼の持っている大斧が紅に染まった。
【タンク系職業・ウォーリアー】
サウザンド・メモリーの職業はベースとなる基本職、基本職を複数極めることで転職出来る中級職、更に中級職を複数極て可能になる上級職と3段階に分かれている。
そしてタンクの基本職はナイト・ウォーリアー・侍の三種類。
その1つであるウォーリアーの特長はHPがタンク基本職の中で最も多く、strが侍の次に高い。逆に防御力は最下位である。
そんなウォーリアーが最初に覚えるスキル【バースト】
永続効果を持つこれは、使用すると攻撃によるヘイトを半減させる代わりに物理攻撃力を上昇させるというもの。
「よし!ウォードさんは後方からラフレシアを攻撃してください!」
「馬鹿を言うな!騎士たる者、正々堂々正面から―。」
「それこそ馬鹿のやることだ。ヘイトはナイトのマルコが取ってる。黙って後ろから殴りかかれ!勝つんだろが!」
「む…仕方ない……。いくぞぉぉぉ!」
威勢の良い声と同時にラフレシアへと斬りかかる。
俺は一同パーティー全員のHPと状態を確認。
マルコにかけたリジェネレイトの効果が切れる直前だったので再度スキルを使い更新。
「天使の微笑み!よし、次に君だが――。」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!今、あんたの周りに羽根の生えた子供が…。」
「気のせい…よ。」
実際は気のせいではないのだが、そんなことを説明している場合ではない。
MP回復とヒールヘイト半減なんて言っても分からんだろうし。
「それよりもサラさん。貴女には重要な仕事があるんです。」
「重要な仕事?一体なによ。」
「歌ってください。」
「は?」
「いや、だから。歌ってください。」
数秒間の沈黙。
と、サラが弓を構え―――。
「待て待て!なんでこっちに構える!?」
「いい?私はあんたが気に入らない。なによ!癒し手だからって!ちょっとスタイルがいいからって馬鹿にしないで!」
「スタイル?」
俺は自分の体(厳密にはアリアンナだが)とサラの体を見比べる。
……あぁ…なるほど…。
「気にするな。大きさが全てじゃない。」
「そういうのが気に入らないって言ってんのよ!」
「分かった!分かったから!苦情は後で聞くから今は歌を歌ってくれ!」
「そもそも歌うって何を歌うのよ!!」
「進軍の歌。」
補助スキル【進軍の歌】
使用者のMPを断続的に消費する代わりに、使用している間はパーティー全員のSP自動回復を増加させるスキル。
SPとは物理攻撃スキルを使用する際に消費するポイントである。
MPと扱いは似ているが、決定的に違う点は自動回復
でしか回復しないというところだ。
「進軍の歌?―――っ!?」
スキル名を口にした瞬間、サラは歌を歌いだす。
が、1つ問題があった。
彼女は―――。
「~♪」
とても――。
「~~♪♪」
…音痴だった。
いくらなんでもこれは酷い。音程とか、そういうレベルじゃない。
誰だよ!音痴をバードなんかにさせたのは!!
…
……はい。
支援型アタッカー基本職【バード】
装備可能な武器は弓・短剣。
一番の特長は歌とよばれるスキルを使うことによって、パーティー全体を強化したり敵を弱体化させることが出来る。
サラは鬼の様な形相で俺を睨み付け、歌いながら矢を放つ。
歌の善し悪しは置いといて、これでSPは問題ない。
俺は全員のHPを再確認。
タンクであるマルコのHPは想像以上に削られている。
これは仕方もないこと。
なにせラフレシアを倒すのであれば最低でも中級職になる必要がある。
だが、俺以外のパーティーメンバーは全員基本職。
加えて装備も弱いとなると、敵から受けるダメージはかなり大きい。普通であれば全滅してもおかしくないだろう。
俺の強化があるからこそラフレシアと対等…いや、ヤツを追い詰めることが出来ているのだ!
ラフレシアのHPバーを見る。
残り数%。もうゴリ押しでいける範囲。
だがラフレシアもボスとしての意地があったのだろう。
一人でも道連れにしようと、全ての触手をマルコ目掛けて打ち放つ。
攻撃に夢中なのか、触手が迫るのにマルコは気が付いていな――あ、今気がついたな。急いで防御を取ろうとするが、あれじゃ間に合わない。
まったく…世話のやける。
「そのまま攻撃しろ!防御は必要ない!押しきれ!!」
そう大声で伝えると俺はストーンウォールをマルコに貼る。本来であればキャストタイムの関係上間に合わないのだが、俺には光術師の専用スキル【迅速術】がある。
これを使えば、キャストタイム無視で魔法スキルを発動することが出来るのだ。
「はい!姉上!!」
俺への返事なのだろうか?
マルコは防御を捨て、全力でラフレシアへと飛び掛かかった。
触手はストーンウォールによって阻まれ勿論無効化。
マルコの剣が深々と突き刺さると、ラフレシアのHPゲージは0となる。
「上出来だ。」
体を枯らし結晶化するラフレシアを見て、やっと俺は安堵のため息をついた。




