各々の討伐、そして… ②
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「通りすがりの癒し手だ!」
若干、声がうわずった。
まずい!とも思ったが、それは余計な心配だと気付く。
3人共、少女の登場にただただ驚いていたからだ。
大丈夫、バレてない。
自然体。自然体で演技をするのだ。
深く呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
…
……
………って、落ち着けるか!
足元の風通しが異常過ぎるだろ!なんだこれは!?
スカートというのは、こんなにもスースーするのか!?
片手でスカートの裾を押さえつつ、足をモジモジさせ頬を染める少女がいた。
残念だが俺である。
これは女装ではない。
あくまでも正体を知られないようにする…作戦。そう、作戦なのだ!
もう一度言う。これは女装ではない。そういう趣味は持ち合わせていないからな!
◆◆◆◆◆◆◆
【数分前】
街の門手前に辿り着く。当然人の姿はない。
とはいえ、誰かに見られたらたまったもんじゃないので念に念を入れて周りを確認。
「よし、状況クリア。」
外から見えないよう門を背にした状態で、俺はシステムウィンドウを開き所持品一覧を高速でスクロールする。
確か…"アレ"は倉庫に入れずに持っていたはずだ。
「どこだ…どこ―――あった!」
【蜃気楼の粉】
以前ゲーム内のハロウィンイベントで配布された限定アイテム。
その効果は、一時的に他のプレイヤーそっくりになれるというものだ。
探していたアイテムを見つけ、文字をタッチしアイテム説明欄に目を通す。
「使用方法は…『なりたいと思う姿を想像して粉をふりかける』か。…って!効果時間60秒!?」
いくらなんでも短すぎる。
イベント用のネタアイテムだから仕方ないといえば仕方ないのだが…。
「どうすりゃいい…。なんかこう、都合よく効果時間延長スキルとか……ないな。」
そんなスキルがあればチートもいいとこだ。ゲームバランスが崩壊する。
神様でもなきゃそんなこと―――。
――まてよ。
「そうだ…そうじゃないか!」
職業欄を開き、一番下までスクロール。
そこにはデカデカと書かれた【女神】という文字。
躊躇することなくモンクから女神へと職業変更。
服装は白いローブへと早変わり。そして俺は現在使用出来るスキルを確認する。
あってくれ…神様だったら出来るはずだ…。
「!?」
1つのスキルで手が止まる。
目を凝らして何度も何度も説明文を読み直す。
「あったぞぉぉぉ!!」
両手でガッツポーズ。
そこにはこう記載されていた。
【補助スキル】神のいたずら
【効果】使用したアイテムの効果量・効果時間を10倍、リキャストタイムを半減させる。使用回数はゲーム内時間で1日3回まで。
使用回数制限こそあるものの、なんて恐ろしいスキルだ。
アイテムの中には一時的にステータスを上昇させたり、敵のステータスを下げたりするものがある。
だがそれらは全て効果時間は短く、リキャストタイムも長い。
だが、この【神のいたずら】はそんなマイナス要素を全て無効にする反則技である。
神様って凄い…。
「いかんいかん。急がないと。」
頭を切り替え、ポーチから蜃気楼の粉を取り出す。
確か、なりたい相手を思い浮かべるんだよな。
なりたい相手…なりたい相手……。
せっかくなら女の子がいいな。ユキは女性キャラクターだし。
女の子…女の子……最近会った女の子…。
俺は粉を頭の上からふりかける。
すると、全身がキラキラと光だす。これが結構眩しい。
光が収まり、目蓋を開くと…。
「おぉぉぉ!!」
背は縮み、指は細く、脚はスラッと、腰はくびれ豊満な胸元。
長いブラウンの髪は頭の両サイドで結ばれている。
「これが女の子か…。」
声色まで本人そっくり。
近くの窓ガラスで確認すると、素朴だが可愛らしい少女の姿。
「完璧だ!」
俺は見事にアリアンナの姿へ変身することが出来た。
忘れずに【神のいたずら】を発動。
これで効果時間は10倍になったはず。
「急いで戻らないと !!」
踵を変え、俺は青年騎士の元へと駆ける。
◆◆◆◆◆◆◆
「まずはパーティーを組む。3人共、パーティー参加を了承してくれ…ださい。」
そんなわけで、アリアンナの姿になった俺は戦場に戻り目の前にいる3人に指示を飛ばす。
青年騎士は疲れた様子、斧を持ったオッサンはボロボロではあるが表情は明るい。
紅一点の弓を持った騎士は―――やけに睨んでくるな。
とにかく今はラフレシアを倒すのが優先。【神のいたずら】で効果時間を延ばしたとはいえ長くはない。
素早く倒すにはパーティーによる連携が必要。
そして、俺の考えが正しければ全て上手くいく!…はずだ!
パーティーという単語がよく分からないらしく、3人共疑うような眼差しで俺を見るが青年騎士の一言で全員が了承をする。会話から察するに、彼がリーダーなのだろう。
すると、目の前に1つのウィンドウ画面が。
『マルコ・ウォード・サラがパーティーに参加しました』
メッセージ画面と共に俺を含む四人のHPバーとMPバーが表示される。
俺は小さく笑う。
どうやら予想は正しかったようだ。
この世界の人々にはHPMPといったキャラクターステータスが存在する。
そして戦闘もゲームシステムとほぼ同じ。
通常、他人のステータス画面は非戦闘状態でしか確認は出来ないが戦闘中でも確認可能にする方法がある。
それがパーティー編成。
パーティー編成をすると、組んでいる相手の装備・ステータス・状態などが表示されるようになる。
そしてヒーラーは、パーティー全員の状態を常に確認し的確な回復を行うのが基本スタイルだ。
さっそく3人のパラメーターを調べる。
青年騎士はvitの高さから考えて間違いなくタンク。
オッサンはvitもあるがstrの方が上回っているのでアタッカー寄りのタンクといったとこか。
紅一点はdexが最も高く、次いでint。典型的な遠距離アタッカーだな。
「?」
俺は首をひねる。
青年騎士は職業【ナイト】と記載してあるが、どうして他の2人職業欄が空白なんだ?これじゃ職業による補正の恩恵が全くないぞ。
「オッサン、職業は?」
ラフレシア討伐の作戦を伝える途中、俺は念の為に確認を取る。
「ガハハ!オッサンときたか!私は見ての通り騎士だぞ?」
豪快に笑いながら答えるオッサン。
駄目だ、こっちの言ってる意味が伝わっていない。
「そうじゃない!あー…もう、説明しにくいな。なら、あんたは今からウォーリアーだ!いいな?」
「うぉ……なんだ?」
「ウォ・ー・リ・ア・ー!はい!!」
「うぉ…うぉーりあー?」
強引に復唱させる。
すると、突如オッサンの体から淡い光が発せられた。
一体これは…。
「!」
そこで俺は目を疑う。
先程まで空白だったオッサンの職業欄に、なんと【ウォーリアー】の文字が浮かび上がったのだ!
職業補正もかかり、ステータスは上昇している。
え?なにこれ?
まさか、女神の俺が職業を決めたっていうのか!?
んなバカな!
でもそれ以外に考えられないし…。
もしそうだとするなら―――。
「次に君。」
もう一度試す必要がある。
俺は無職の紅一点に問いかけた。
「あ、あたし!?」
「そうだ。弓が得意なのか?」
「えぇ、そうよ!私の弓は絶対に敵を逃がさな――。」
弓が得意ってことはアーチャー…ハンター?
いや、intが高いってことは―――。
「ならバードだ。」
「最後まで聞きなさいよ!それに鳥って!馬鹿にしてるの!?」
「黙って言うことを聞け!君はバードだ!」
紅一点は物凄く不愉快だと言わんばかりの顔をするが、青年騎士に諭され渋々頷く。
「はいはい!バード!私はバード!!これで満…え?」
オッサン同様に光を放つ。
そして、職業欄には【バード】の文字。
これはもう間違いない。
俺には他人の職業を決めることが出来る能力がある。
馬鹿げてる…本当に馬鹿げてる!!
―――でも。
「よし。戦闘を始める!」
杖を強く握りしめ、俺は勝利を確信した。




