各々の討伐。そして… ①
いったいこの少女はだれなんだ…
この状況に臆することなく堂々とした様子の少女。
歳はサラよりも幼く見える。
この少女が報告にあった癒し手なのか?
「もしや君が格闘家殿の言っていた――。」
「細かい説明は後。今は目の前にいる敵を倒すことが優先…でしょう?」
僕達は無言で頷く。
その様子を見て彼女は軽く微笑んだ。
「では今から戦闘を開始する。指示は私が出す。」
「はぁ?何言ってんのよ!」
「勝利の為だ…よ。」
「隊長!」
「落ち着けサラ。ここは彼女に従おう。」
「ですが!………わかりました…。」
サラが納得出来ないのは分かる。
普通に見れば、戦闘経験など全くない非力な少女だ。
だが僕の目に映る彼女の印象は全く違う。
異質
そんな気がする。
そう、まるで……まるで、姉上の様な――。
「まずはパーティーを組む。3人共、パーティー参加を了承してくれ…ださい。」
「パーティー?なぜ宴などを?」
「説明をしている時間はない。了承さえしてくれればいい。」
「よくわからんが…了承した。」
「わかった。」
「ふん。隊長の命令に従うだけなんだから!」
パーティーの参加とやらに全員が了承する。
それを聞いた少女は顎に手を当て、じっとこちらを見つめだした。
なんというか…少し照れる。
表情こそ険しいものの、その顔は…まぁ……その…可愛いと思う。
「あんたね!いくら隊長が素敵だからって、どんだけ見てるのよ!」
サラは少女に食って掛かる。
どうもさっきから様子がおかしい。こんな彼女を見るのは初めてだ。
ウォードさんに聞こうにも『放っておけ』という仕草をして笑うだけだし…。
それに対して少女は終止無言で何度か細かく頷いているだけ。
見た目以上に肝が座ってるんだな。
「ちょっと!聞いてるの!?」
「へ?何が?」
「あんたねぇ…。」
「それよりも…準備は整った。これから作戦を伝える。内容はいたってシンプル。セオリー通りにやれば、負ける相手じゃね……です。」
所々口調は変だが、先に彼女言ったように細かいことを気にしている場合ではない。
この間にも小型の魔物は増えている。
「まずはタンクがタゲを取る。そしたらヤツの後方をこちらに向けろ。」
僕を指差し指示を出す。
……タンクってなんだ?
「ヘイトが安定したらアタッカー二人は殴りかかれ。防御も回避も必要ない。ひたすらに殴り続けろ。」
「私達に死ねって言うの!?」
「死にはしない。お…私に任せろ。オッサン、職業は?」
「ガハハ!オッサンときたか!私は見ての通り騎士だぞ?」
「そうじゃない!あー…もう、説明しにくいな。なら、あんたは今からウォーリアーだ!いいな?」
「うぉ……なんだ?」
「ウォ・ー・リ・ア・ー!はい!!」
「うぉ…うぉーりあー?」
ウォードさんがそう口にすると不思議なことが起こった。
「な、なんだこれは!?力が…湧いてくる!!」
淡い光がウォードを包む!なんて神々しい輝きだ…。
唖然とする僕とサラ。
癒し手の彼女も一瞬言葉を失うが、すぐに冷静な表情へと戻っていた。
「次に君。」
「あ、あたし!?」
「そうだ。弓が得意なのか?」
「えぇ、そうよ!私の弓は絶対に敵を逃がさな――。」
「ならバードだ。」
「最後まで聞きなさいよ!それに鳥って!馬鹿にしてるの!?」
「黙って言うことを聞け!君はバードだ!」
僕に助けを求めるサラ。
彼女には申し訳ないが、首を横に振る。
それを見て半ば諦めたらしく。
「はいはい!バード!私はバード!!これで満…え?」
ウォードさん同様に光を纏うサラ。この現象は一体なんなんだ?
「よし。戦闘を始める!プロテクト!」
言葉と同時に、先程とは色の違う光が何十にも重なって体を纏いスッと音も立てずに消えていく。
これが癒し手のみが使えるという神の加護なのか?
「ぼさっとするな!さっさと攻撃してこい!」
「わ、わかった!」
剣を構え魔物へと駆ける。
足が軽い。だるかった体も回復している。腕も上がらなかったはずなのに…一体どうして…。
「これは…風?」
目を凝らしてみると両手足を風の輪が優しく包んでいる。
理屈は分からないが、これのおかげなのは間違いない。
……いける!
「らぁぁぁぁ!!」
剣先を滑らすようの突き立て、魔物の横を抜ける。
なんだこの切れ味は!?
ヤツの体積4分の1を削り取っているじゃないか!
力がないとは言わないが、僕にこれほどの力があるわけない。
「手を止めるな!」
年下の女の子が命令口調で指示を飛ばす。
普段なら気にするが 、今はそんなことどうでもいい。
高揚感。
僕の心は踊っていた。
腕は羽根が生えたかのように軽い。
なのに、一撃一撃はズッシリと重く。確実に致命傷を与えている。
負ける気がしない。
縦に降り下ろし触手を切断。
怯んだところを下から持ち上げる様に盾で叩き付け、更に剣を横へ振り払い傷を負わせる。
自分の体じゃないようだ。
思ったように…理想的な動きで戦える!
「ははっ…はははは! 」
自然と口元が緩む。
その慢心が失敗を招いた。
「しまっ――!」
普段なら捌ききれるはず攻撃。
だが、魔物を斬ることに夢中だったせいで防御がおろそかになっていたのだ。
慌てて防御の体勢を取ろうとする。
だが聞こえてきたのは耳を疑う言葉。
「そのまま攻撃しろ!防御は必要ない!押しきれ!!」
何を言ってるんだ。
直撃すれば致命傷。
そんな命令聞けるわけが――。
『前衛に立つ者は瞬時の判断力・決断力を必要とされる』
ふと頭の中を過る姉上の言葉。
『だが時に、前衛よりも後衛の方が正しい判断をする場合もある』
そう話す姉上の顔はとても嬉しそうだった。
『どんな言葉にも耳を傾けろ。そして信じろ。そうすれば、お前はきっと誰をも護れる盾となれるはずだ』
「はい!姉上!!」
両手で剣を握り締める。
魔物の触手は目前。
サラとウォードさんの声が聞こえた。
恐怖がないわけじゃない。
でも…彼女は"任せろ"と言ったのだ!
だから僕は…ぼくはぁぁぁぁ!!
「上出来だ。」
甲高い音がする。
ヤツの攻撃は届いていない!
勢いの乗った剣は深く深く突き刺さり、魔物は細かく痙攣をする。
そして、まるで木が枯れるように萎んでいき結晶となって砕け散った。




