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BABY BOMB!!  作者: 未芹


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誕生日

ほんの1時間前まではあれ程煌めいたステージに立ってスポットライトを浴びていたというのに。


打ち上げに顔だけ出して、今日はそそくさと帰宅中。

藤城亜美から少し地味目に眼鏡をかけて帽子を被ったべべは電車に揺られていた。


「どこー?」とハナにスタンプを送る。

先に会場を出たふたりに、明日、クリスマスイブに渡すシノブさんとガンへのプレゼントを受け取りに行ってもらっていた。


ふたりは次の電車で帰って来るようだ。

その連絡に割り込んでシノブさんからも連絡が来た。


「べべ、お疲れ様!最高に可愛かったよ♡」

シノブさんが手放しで褒めてくれるので電車の中で顔がニヤけてしまった。


(マスクしてて良かったー。)


電車が停車していた駅を出発する。


またシノブさんからメールが来た。

「駅まで迎えに行く。」


シノブさんはケーキを受け取って、駅でべべと合流して帰るつもりで、今、線路横の道を歩いているというのだ。

この単線は、線路の横を一車線の道路が並んでいた。


(わぁ、こっちにいて良かった!)

べべはちょうど、その歩いているという道路側のドアの前に立っていた。

駅でシノブさんと待ってたら、バブ達もすぐ来るな、とソワソワする。


駅まではあと少し。

先頭車両の前のからは、運転席の窓越しに先の方が見える。薄暗い道を歩いている人影が見えた。


「シノブさんだー!」


シノブさんも向かって来る電車を振り返って見ていた。

先頭車両の1番前のドアの前。

メールで知らせていたので、お互いを同時に見つける。


片手にケーキを持っているのに、もう片方の手をブンブン振るシノブさんに嬉しくて、思わずべべも胸の前で振り返す。

電車は帰宅する人で殆ど満員だった。

特に次とその次の駅は、先頭に改札がある為、この先頭車両が1番混んでいた。


シノブさんが手を振り続けている。


(あーあ、シノブさんたら。ケーキがぐちゃぐちゃになっちゃうよ。)

苦笑いながらも、嬉しくて仕方ない。


今日はべべの17歳の誕生日。

それを祝ってくれるみんながいる。


電車が駅のホームに入ろうとスピードが落ちて来た。

シノブさんを電車が追い越した。

まだべべに向かって手を振っているシノブさんがニコニコしている。

嬉しくて気恥ずかしいと、そう、思っていた時。


シノブさんの後ろから人影が近づいて来ていた。

あーあ。シノブさんたら、手を振ってるから気づかないのかな、ぶつかっちゃうよ。


笑っていたべべの目に何かが光って見えた。


後ろからのその影は、シノブさんを追い越さなかった。

そのまま。


シノブさんに真後ろからぶつかった、かのように見えた。


「え、」


そこからは全てがスローモーションのようだった。



電車は進んでいる。


シノブさんが倒れた。


電車はスピードを落として私の身体が前に傾く。


ケーキの箱が前に転がった。


べべの思考もぐにゃりと曲がった。


シノブさんが倒れている。


電車のキキーーッという高いブレーキの音が聞こえた。




待って。待って。待って。

呼吸ができない。

身体の震えが止まらなかった。




降車口は反対側のドア。ゆっくり開こうとしている。

殆どの人がここで降りる。その人混みを掻き分けた。


(お願い、通して!)


出ない声が身体中で叫んでいた。


緩慢な人の流れを隙間を縫って転がるように走る。

改札を出て右手に行くと踏切が降りている。

遮断機の最前列に辿り着いた。


自分が今乗っていた電車が通過するのを待たなければならない。

べべは降りている遮断機を押し上げて渡りそうだった。


(早く、早く、お願い、早くして!!)


緩やかに電車が動き出した。


(お願い、お願い、お願い!早く!シノブさんが倒れてるの!)



周りの声も、電車の音も聞こえなかった。

ただ、心臓のドクドクいう音だけが鳴っていた。


(早く、早く、早く、早く!早くして!)


(シノブさん、シノブさん、シノブさん、)


泣きそうになったその時、やっと電車が通過した。


もう待てず、手で踏切を押し上げて走り出す。

きっと周りの目があっただろう。

考える余裕もなかった。


シノブさん、シノブさん、シノブさん。

踏切を渡り、また右へ曲がる。


暗い道の先に、何かが見えている。


走って、走って。

電車から見ていた時は、あんなにすぐだと思ったのに足がもつれて前に進まない。


シノブさんが倒れていた。


「シノブさん、シノブ、さん、、、お、お母さんっ、おかあさぁんっっ!!」


誰かの叫び声が聞こえたと思ったが、それは、べべの喉から出ていた。聞いたことのないような声だった。



上り線から次の電車が通過する。

その切れ切れの車内の明かりが、シノブさんの周りの真っ赤な血溜まりを照らして過ぎて行った。

シノブさんの背中には、肋骨を通して水平にナイフが刺さった痕があり、そのナイフは引き抜かれ側に落ちていた。


既に消えた影は、迷いなく心臓を貫いた後、ナイフをわざわざ引き抜いて大量失血させた。

プロの仕業だった。

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