ライフ・ガーディアン
「LGOって。」
べべ達と分かれてふたりになったバブは、シノブさんに聞いた。
入ったら、もう連絡を取れなくなるの?
「そうね。」とシノブさん。
「どこの国にいるのかも?」続けて問う。
LGO。
"ライフ・ガーディアン"と呼ばれるのは、世界中を飛び回っている世界規模の救助隊組織の事である。
「内紛で危険な国は多いからね。ずっと同じ国にいるっていう保証もないし、ナースであるかどうかもわからない。最前線での仕事は色々あるみたいだから。」
バブの方を見ようとしないシノブさんは、感情を押し隠しているように見えた。
そんなシノブさんを慮って、バブはこれからもシノブさんをこれまで以上に大切にすると誓った。
大切な母代わりの女性。
べべと共に、離れていても心の拠り所だった。
(たったひとりの血の繋がった家族なのに、2度と会えないかもしれないなんて。)
そんなことを歩きながら考えていたバブに突然質問が飛んできた。
「LGOの腕章って知ってる?」
「あぁ、うん。黄色のだろ。」
もちろん知っている。
『ネイビーの腕章に黄色い盾。盾の真ん中には黒十字。その盾を挟んで金色の両翼。』
なかなか凝ったデザインのそれは、
"この腕章をしている者にはいかなる者も指一本触れてはならない"
そういう万国共通の認識がある。
この戦乱の地球で、唯一敵味方の区別なく人を救う、金の翼が生えた盾を持つ天使。
もちろん、爆撃などに巻き込まれて命を落とすこともある。何しろ最前線なのだ。
その地獄のような場所で尚、己の命を捧げて誰かを救う。
シノブさんの妹は、殺し屋から転じて、そういう職業についた人だった。
(いつか。いつか戦場で出逢えたら、必ず俺が連れ帰るよ。シノブさんの元に。)
その夜。
撮影スタジオからべべが連れ帰ったのは、ぐりだった。
護衛を仰せつかって隠れ家まで送って来たのかと思いきや、急遽、警護強化の為、この隠れ家で寝起きするようにと本部から指令が下りたのだった。
「うっそぉー!」
1番反応したのは送ってもらったべべ本人。バブは絶賛苦笑いというか何とも微妙な顔をしてる。
ハナまでが「この人、大丈夫?ホントに私より強い?」と疑心暗鬼。
散々な言われようだったぐりだが、初めてファミリーに入れる喜びが、身体中から滲み出ていた。
「滝谷、キモい認定されちゃうよ?」とげんなり。
いや、まぁ、いいヤツなんだけどね。
べべが諦め顔でひとりごちる。
マーダーたる者。
強いかそうでないかが評価対象。
ぐりはというと、"強くなくもない"
べべから太鼓判をもらえず、「なんだよ、それは。」と頭を掻いてる。
多分。
ぐりは訓練もしっかりやっていて成績も良いのだが、実務経験が少ない。よって実力不足と判定されがち。
逆に本番に加速して強いのがべべ。冷静に対処できるのがハナ。
この女子ふたりに勝てなきゃねぇ、とシノブさんがぐりに発破をかけている。
(単に面白がってるな、シノブさん。)
バブはこれまでのぐりの戦闘能力を、ガンから映像記録で見せてもらって知っているので、そこそこ評価はしている。
現在、女の園のようなこのファミリーに男性陣が加わるのは正直ホッとする。
なんたって、米国特務機関は女性もいるにはいるが、基本男社会である。
そこで育ったバブは総じて"ぐりウェルカム"になろうというものだった。
「あ。」
もしかして。
俺、期末テストの勉強を3人に教える事になるのか?
頭が痛いヤツが増えた。
バブの眉間にシワが入る。
ぐりは『社会科特待生』の経歴を持つが、確か国語が壊滅的じゃなかったっけ。
深いため息を吐いたバブを、察したハナが横目で気の毒そうに見ていた。
登場場面のなかったハナちゃんが相変わらず手のかからない良い子です。




