ドライブ
私は、バブが運転する車に乗っていた。
あの後。
初めて行った屋敷のホールで。
まだ各自の部屋にも行かないままバブとライトが一触即発になった。
ライトは味方ではないのか?
バブに対してわざと嗾けるような態度をとるライトに腹も立ったが、バブが先にお父さんに言った。
「車とキー貸して。」
そのまま部屋から出て行くバブを慌てて追いかけ、押しかけ隣に乗り込んでの、今。
バブは私を拒否らなかった。
それだけが救いだった。
多分、昔のバブなら、誰も寄せ付けなかったんじゃないかな。
ありがとう。
こっそり思う。
どこに向かっているのか。
そもそも行く当てはあるのか。
何もわからなかったけど、無言のまま車は走り続けた。
(変な感じ。バブが運転してるなんて。)
バブの運転も初めて見るし、その助手席に自分がいるのも不思議だった。
「あ、やべ。」
「え、」
「だいじょーぶ!」
怖い怖い。何が起こった?
バブが速攻被せて来た。
怖くて聞き返せなかったら、バブがひとりごちた。
「日本て右ハンドルだったな。」
............。
(ちょっと待ったー。)
バブさん。それはもしかして、左側通行の意味、かなぁ?
(ひぃーーーっ。こっわー。)
こんなにスピード出してて、左右考えずに走ってたのか、この人。
(いやいや、ここまでは問題なかったはず。)
血の気引くってマジで。
深夜で。多少田舎の一本道で良かったよ、と涙目。
対向車がいなくて奇跡。
さっきまでの安心感は吹っ飛びました。
目が覚めた、はい。
ガチガチに肩が緊張してる私に「大丈夫だって。日本で運転するの久々で忘れてただけだって。」
ちょっと口尖らせてる。
(か、可愛い!!!)
てか。バブ運転するんだね。と言ったら
「米国で車なかったら移動できない。」
あ、普段のバブに戻ってる。良かった。
「俺、運転趣味だって言わなかった?」
聞いてないー。って言う私にこの人怖い事言った。
「あと、乗ってないのってロケットくらいかなぁ。」
あのー。
運転が、ですか...?
"趣味"が、度を越してヤバすぎた。
バスやトラックどころか。
ガチで、クレーン車やタンクローリーなどの特殊車両を含め車各種は当然のこと、飛行機やヘリコプター、戦車や船、潜水艦も運転できる、だって。
えーと。
誰かな、この人。
そうでした、米国特務機関の筆頭でした。
レベチ怖い。
「またブス顔になってるぜ。モデルのお仕事出来なくなりますよ、藤城亜美さん?」
誰のせいだよー、全く。
文句のひとつも言おうとしたら、
「着いた。」
急に潮の香りが、した。




