表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BABY BOMB!!  作者: 未芹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/37

都立浮葉東高校 文化祭 ①

「亜美ちゃん、お願いがあるの。」


 9月のことだった。

あの豪勢だった東波学園からの転校先、都立浮葉東高校にも慣れてきた。

 最初は勝手が違って校則は厳しいし、イベントも少ない、みんな大人しい感じがして、何だか居心地が悪かった。

もちろんいつも通り「モデルの亜美ちゃん」に周りが騒がしかったが。

あまりの騒ぎに、先月肋骨を骨折したせいで、まだまだ静養中と先生からお触れが出た。お陰で、みんな遠巻きにしている。


 その中からクラスの原という女子が声を掛けて来た。

原ちなみ。クラスでは特に目立つことも浮くこともないカーストど真ん中な彼女だが、話を聞くと軽音部だとか。

「それでね、ボーカルの子が文化祭に出られなくなっちゃって。亜美ちゃん、ボーカルやってくれない?」

な、なぜ私?しかも初めて喋ったよ、原さん。

 原ちゃんって呼んで、と言いながら更に頼まれた。

他にお客を呼べるボーカルなんていないの、お願いします。

原ちゃんは土下座もせんばかりだった。バンド仲間の3人に頼まれていて絶対OKをもらわないと部室に戻れないとまで言う。

いやいやいや。アタシ歌った事ないよ、人前で。

 慌てる私を取り敢えず部室に来て、と引っ張って行かれた。


「やれば良いじゃん。」

晩御飯を食べながら、他人事(ひとごと)だと思ってバブが言った。軽い。軽すぎる。

 結局、引き受けてしまったんだけど、部室に行った私を更なる問題が待っていた。

部長でギターの多聞が、これまた軽く言った。

「うちの文化祭、軽音はオリジナルも入れなきゃいけないんだよね。藤城さん、歌詞書いて来てくれる?俺、曲つけるから。」


あーのーですねー。

 私、格闘技専門で生きて来たので、音楽なんてやってる暇なかった人生なんです。作詞なんて!

驚きすぎて、断れなかった。

 そうバブに言ったら、書けば、なんて言ってる。実力テスト前のハナに数学を教えながら。

 あー、そうですよね。私のことなんて興味ないですよね。

諦めて部屋に戻った。うわー。書くのか。


 

 あれからひと月後。文化祭前。

殆どの生徒がクラスや部の何かの役割を担っているので、放課後、大勢が残ってガヤガヤしている。

2学期に転校してきた私が、途中からクラスの出し物に入れてもらう事を考えたら、軽音部の助っ人になって良かったと思う。気が楽だ。

 最初はボーカルと聞いて引いていた。今までモデルのイベントでも歌った事がない。せいぜい奏美達とほんの数回カラオケに行ったくらい。


 原ちゃん達に勧誘された時は肋骨骨折の後だったし、まだ大きな声が出せなかった。躊躇していた私に、軽音部の4人は文化祭は1ヶ月後だからとゴリ押してきた。


 確かに今、もう声くらいなら響かなくなっている。

あの時、誘ってもらって良かったな。

 隣の組になった安堂尋ことバブは、どうなっただろう。

根暗ムーブ全開で逃げてるのかな。想像したらおかしくて、同じクラスで見ていたかったな。


 バブ。文化祭どうやって逃げてるの?って家にいたバブに聞いたら、左腕を上げた。

バブの左腕は8/2のバトルで骨折したせいでまだ固定したままだった。

根暗で喋らないキャラ+見た目ギプスは効果絶大で、さすがに誰も無理に参加しろとは言わなかったそうだ。

 なんなの、この差は。


 でも、意外に軽音部の練習は楽しかった。

ギターで部長の多聞、キーボードの原ちゃん、ベースのようちゃん、ドラムの和佳。それにボーカル、藤城亜美。

今まであまり関わりがなかったが、ドラムの和佳も同じクラスだった。そういえば、いつも原ちゃんといる。

みんな明るくて穏やかで助っ人の私にも優しい空間だった。

 文化祭は軽音部、1年で1番の大きなイベント。

カバー2曲と作ったばかりのオリジナルが1曲。この3曲が待ち時間だ。


 文化祭が近づくにつれ、声を掛けられる事が多くなった。

今日も廊下ですれ違った知らない女子から「亜美ちゃん、軽音頑張ってね。」と言われた。

一緒にいた雨森はるなが「亜美ちゃん有名じーん。」と冷やかす。

はるなは転校した日、最初に声をかけてくれた前の席の女子で「私、この席でラッキー。」と喜んでいた。

 最初は亜美がモデルなんてやってるから、ただ調子が良いだけかと思った。実際、それで近寄ってくるのは多いし。

有名税みたいなものと思ってはいた。

でも暫くして親切で友達が多い彼女は一緒にいてラクな子だと気づいたから、声を掛けてくれて"こちらがラッキー"だった。亜美はいつも周りに恵まれている。

 女子の距離感って面倒だったりするけど、誰とでもいられるはるなは依存も執着もない。亜美が放課後は軽音部で忙しくてもそれを応援してくれるので助かる。


「もう下校時刻よー。みんな帰りなさい。」と担任のやまげんこと山元幸(やまもとみゆき)が見回りに来た。軽音部の顧問でもある。

聞けば、原ちゃんが亜美をボーカルに誘ったきっかけは、やまげんの提案だったらしい。

転校生の亜美を気遣ってくれたようだ。

外はすっかり暗くなっている。

 廊下を歩くと各教室前に飾りやクラスの出し物の掲示が貼り出されていてワクワクした。

お金のかかった東波とは全然違うが、こういう手作り感が亜美は好きだった。


いよいよ明日は文化祭当日。緊張するのが楽しい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ