ミッション VS 東波学園 ①
今いる舞台袖の逆、下手側の裏口が開いたのが見えた。
あちらも同じように、5人がするりと入ってきたようだ。
準備OK。
目の前の数段の段差の上がそのままステージに繋がっている。舞台の左右に寄せられた幕の向こうには、恐らく兵士や司会者達。
この体育館のキャパは1000人程。
まさかその規模が埋まる事はないだろうが、客席側の今夜のゲストと護衛達は何人いるのか。
グラウンドにはトラックの他、高級車もざっと10台ほどだったか。多めに見積もって、ゲストとその護衛が40人ほど、ホスト側のマフィアは100前後といったところか。
続いているオークションは、今は絵画のようだ。
聞こえてくる司会者のアナウンスから、先月オランダの美術館から盗まれた盗難品の名前が挙げられた。
(美術品は傷つけたくはないがなぁ。)
そうは言っても、人数で負けているだろうから構ってられそうにない。
(歴史的なお宝を申し訳ない。)
心の中で先に謝りながら、俺は体育館の両サイドにある2階の狭い通路の様子を見にそろりと2階に上がった。
コの字に繋がったギャラリーは下のフロアを見渡せる。
案の定、敵さんも左右に数人ずつ、ライフルを持って待機していた。
1階に降りた俺は下手のグリにプランBの合図を送る。
ちなみにプランAは俺たちがギャラリーからライフルで狙う、だった。ま、そんなにうまくはいかないさ。
プランB。フロアでの戦闘。直撃。
ニーイチマルゴー。作戦開始。
ステージの両脇にある出入り口から同時に床に転がしたのは、手榴弾型の煙幕弾。
投げ込まれた何かに気づいた護衛達が、ガタッと音を立て椅子から立ち上がったがもう遅い。
既にあちこちから白い煙がもうもうと立ち上がっていた。
と、銃声が数発とゲストが叫ぶ声。
(敵の誰かが銃を撃ったな。)
続いて先ほどオークションに掛けられた少女達のものであろう金切り声。フロアは突然の恐怖と怒声で埋め尽くされた。
慌てて司会者が「Don't shoot!」と何度もマイクで叫ぶ。
当たり前だ。これだけの煙幕を張った中の銃撃戦じゃ、何人が同士討ちになるかわかったもんじゃない。
その中、俺たち10人は手近な兵士から倒していく。
壁に沿って立っていた奴らは下っ端隊員のようだった。
(ただの喧嘩っぱやい町のチンピラとそう変わらないな。)
格闘技の心得すら怪しい。
催涙弾も加えた特別製煙幕が痛いんだろう、身体を二つ折りにしてゴホゴホ言いながら悶えている。
悪いが専用のゴーグルをした俺たちからは丸見え。手刀一発で次々に仕留めていく。
その時、マフィアの兵士に手を取られている隙に、護衛されたゲストの1人が咳をしながらも後方の出入り口に向かっているのが見えた。
ちょっと待った。
外に出られては、外で待機している大勢の兵士に気づかれてしまう。外には出せない。
目測30mを白い煙の中、全速力で追いかける。
足音に気づいた護衛4人のうちの3人がこちらを振り向いた。
が、おせーよ、とばかりに相手の首を取りに行く。
俺は左、同時に走ってきていたべべが右の護衛に飛びついたのが見えた。
チンピラマフィアとは違ってこいつら護衛は一撃ではいかない。ガタイもデカい。
小柄な俺の相手は190cmを超す巨体。迷わずテイクダウンを狙って片足タックル。
相手が右膝をついた瞬間、振り向きざま、こめかみを狙った回し蹴りが入り相手は白目を剥いて倒れた。
はい、ひとりめ。
接近戦が得意なべべも難なくふたりめに突撃していた。
(俺のふたりめは、ゲストを直近で守っているヤツね。)
この中ではこいつが1番強いんだろう。間髪を開けずに突進する。
(おっとナイフが出てきた。)
皮一枚で避け、その勢いでバックに回り込む。手首に全力で手刀を喰らわすとナイフが落ちた。
相手もすぐに振り向くが遅いぜ。俺は更にヤツの首を軸にして後ろに周り、そのままチョークスリーパーに入った。
護衛は踠きながら腕を振り払おうとするが俺は離さない。
ヤツがそのまま全体重を掛けて勢いよく後ろに倒れた。
ぐふっ。
俺ごと倒れて、下敷きになった俺の背骨が砕けたかと思うほど強打したが、それでも首を絞め続け、やっとガクリとヤツの力が抜けた。堕ちた。
(.クソ、痛ってぇな。)
ターゲットを振り返ると。
ひとりも護衛がいなくなったのを悟ったゲストが、何も見えやしないのにピストルを手にしていた。
手、ブルってるんだけど?




