真相(からくり)
「バブ、こっちを向いていいぞ。」と言ったのは誰だ。
なんで俺の名前を知ってる?
訝しげに振り向いた先にいたのは、本部・監査部門筆頭の左右馬だった。
会った事もないべべはまだ戦闘体制を解いてない。
べべに大丈夫だと目配せする。
「あんたが出張って来るなんて、何事だよ。」
間にいた滝谷が言う。
「悪かったな。こう見えて俺は本部直属にいる。お前らの同志だ。」
「滝谷がマーダー?」今度こそべべが目を剥いた。
春から同じクラスにいて、全く知らされていなかった。
「あんたは私がマーダーだって知ってたの?」
勿論。と滝谷が話す前に、「取り敢えず車に乗りなさい。」そう、左右馬が言った。
ここにいるのは危険だ。
「いや、今、オークションをやってる最中だ。
日程が変更されてる。まさかこの大規模なイベントも本部の差金だなんて事はないんだろう?」バブが問う。
この機会をみすみす捨てるのか。
「一旦立て直す。15分後、フタマルヨンゴー侵入開始だ。」
20時45分。了解。
それくらいの誤差ならと、話を聞く。
さぁ、なんでこんなまどろっこしい状態になってるのか説明してくれ。
俺たちは、音もなく登場したロールスロイス ファントムの中にいた。左右馬の話はこうだ。
案の定、バブのスパイ容疑。
これだけアメリカ在住が長く、尚且つ、米軍の実務処理も多数行なっているのだからそう簡単に疑惑を解く事はできない。
そういう本部の上役の命令で、今春から準備をしていた東波学園ミッションで本意を探る、という事が元より決定していた。
今年の夏に行う大規模ミッションの為に昨年から先に入学して潜伏していたのが、滝谷ことコードネーム・グリ。
グリは今日、下準備の名目でバブとべべが東波に来ることを予め知らされていた。
そのタイミングで、わざと侵入時の姿をふたりに目撃させていた。
それで、とべべが口を挟む。
「それで、どうしてバブの疑惑が晴れたの?」
まず、オークションの変更を知っても、その上で俺を脱出させようと尽力していた事。
敵と出くわすかもしれない中、バトルよりも脱出を優先させていた事。
この短い間の対応がスパイには思えなかった。
まず、何の関係もない俺や藤城、いやべべを守るが最優先だったから。
いくらでも相手兵士と接触できたのに、そこは信用に足ると思った。
戦わずに逃すなんて面倒だからな。敵側なら俺たちを殺してしまう方が余程簡単だ。
それもそうだろう。"スパイならば"
こういうやり方はいつまで経っても慣れないが、こういうものだろうと諦めに似た感情を持つ。
(どちらの国からみても俺はコウモリか。)
俺が選んだ訳じゃない。
米国特務機関という所属である限り、きっと一生、続く。
今回の嫌疑が晴れたところで、応援部隊も到着した。
ざっと80名ほどだろうか。明後日踏み込む予定だったのは120人。大幅に足りないのは否めないが仕方ない。
追加がどれほど揃うのか判らないが、この兵士達に対抗する戦力がくることを願うぜ。
仕切り直し。
東波学園に踏み込む。




