東波学園 接近 ③
西側部室の裏に、普段隠してるんだけど金網フェンスが壊れて穴が空いたままの場所があって、と滝谷の説明を聞く。
滝谷が所属しているバドミントン部の部室の真裏で、バド部しか知らないらしい。
遅刻して正門が閉められた後の時間にこっそりと忍び込んだり、学校を抜け出してコンビニに行く時に使っている。部外秘で口外禁止事項だそうだ。
「先生も知らない。知ってるのは部員でも2、3年の数人だけなんだ。」
......ペラペラ喋っているが、いいのか?
今回は滝谷でも危機を察知しているらしい。
滝谷では通用門の高さは越えられないから助かった。脱出ルートを部室裏のフェンスに設定する。
ただし。
西側部室へは体育館裏を通るか、校舎を回って逆方向から行くルートになるが、体育館はオークション開催中で大人数が予想され、校舎を回るのは時間がかかる。
べべとなら体育館側のルートを迷わず取るところだが、滝谷を連れてでは逆ルートも怪しい。
こいつの前でバトルする姿を見せるのは。
(仕方ない、極力隠れながらいくか。)
校舎ルートを取ると伝える。
先頭から俺、滝谷、亜美の順。
この配置なら滝谷は自分が守られているとは思わないだろう。
教室を静かに出る。亜美が最後にドアを閉めた。
さっき見回りをしたばかり。通常なら当分は宿直室から出る事はないはず。
だが今夜はオークション。どんな配置でいるのかわからない。
用心するに越したことはない。
窓から離れ教室伝いに姿勢を低く、息を殺しながら進む。
まずは2階を本館の端まで行き、階段を降りる。
踊り場を曲がる手前で階下の物音に気づいた。急に止まれない滝谷を背中で受け止め静止させる。更に後ろから亜美が捕まえたんだろう、すぐに滝谷が軽くなる。
数人の話し声が聞こえた。やはり日本語ではない。
亜美がすっと隣に来た。
ここで階段を上がって来られたら、音を立てず戻るには滝谷が間に合わない。バトルになる。
無言で亜美とふたり体制を立て直す。
だが、運が味方してくれたのか声はそのまま一階を通過して行った。
ほっと息をつく。
「おかしいな。オークション中にしては、校舎の見回りが多い気がする。体育館の護衛はどれだけいるんだ。」
「開始が遅れて、今さっきはじまったばかりだって話してたよ。」
亜美が聞き取ったのは僅かな情報だった。
「なぁなぁ、お前ら仲良くない?俺も入れてくれよ。」
俺たちの耳打ちが聞こえない滝谷が、心配半分、嫉妬半分のような反応をしてる。
お前は黙ってろって。




