東波学園 接近 ①
教室を出ようとしたその時、階段を上がってくる足音がした。
マズイな。滝谷がいる。
だが、教室のドアが開いたままだ。入ってくるのは避けられない。さぁて。
「滝谷、教卓の後ろに隠れて。」亜美が、急いでと促す。
滝谷も慌てて移動したようだ。
近づいて来る足音は、どうやら2人。日本語ではなさそうな言葉が聞こえてくる。
それがピタリと止まった。
開いているドアに気づいたな。
無線で連絡されたら厄介だ。瞬時に廊下に飛び出す。
暗視眼鏡を使わなくても、教室の暗闇に馴染んだ目は廊下のわずかな灯りで相手のシルエットを捉えられる。
1人が腰の無線機に手をかけていて、もう1人は銃を構えている。2人とも教室を凝視しているだろう。
まず、無線機男のこめかみをヘッドセットの上から力一杯蹴り付けた。ドサッと倒れた男の隣から銃がこちらを向く。
背後から亜美が出てきてチョークスリーパーを決める。コンバットサンボではマスターのストライプの黒帯クラスの亜美の得意技だ。
俺も倒れた男の喉元目掛け膝を叩きつけた。
2人とも呆気なく廊下にのびて泡を吹いているが、まだ息はある。
......待て待て。
いやダメだろ。
これだと明後日のオークションが変更になる可能性が高い。
高速でシュミレーションを終えた俺は、音もなくドアを閉めてその場にしゃがんだ。
取り敢えず、最善はバトルをしない方向だな。足手まといの滝谷を逃さないといけないし。
今は3人での脱出が最優先。
と、2人の足音が階段を上がり切り、2階廊下を進み出した。
3人とも息を殺す。
廊下の2人は周囲に気を配ってはいるのだろうが、侵入者にはまだ気づいていないようだった。
話し声のトーンでどうやら定時の巡回だと分かる。
声が俺たちが隠れている教室前に来た。
ドアのすぐ横でしゃがんでいる俺とはドア一枚を隔てた至近距離。相手の息遣いまで手に取るように判る。
俺は2人が通過するまで息を止めた。




