潜入 ③
バブとべべが教室に飛び込もうとドアを開けた瞬間。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」
暗い教室から、うわぁーっという声と共に謝られた。
何?うるさいって。シーッ、静かに。
でも聞き覚えのあるような声。
「滝谷!?」後ろからべべ。
お経を唱えていたかのような"ごめんなさい"が止んだ。
「え、誰?」
間違いない、このちょっと間の抜けたような。
声の主は滝谷だった。
廊下の常夜灯だけなので、こちらはぼんやりとしたシルエットしか見えていないのだろう。まだ不安気に声がおどおどしている。
むしろ俺たちの方が教室の中が真っ暗でお前の姿が見え難いんだがな。
「アタシ!藤城!」亜美仕様になったべべが言う。
「ふふふ藤城?!お、お前、なんでこ、ここにいるの?」
落ち着け滝谷。
勿論、安堂である俺は声に出さない。
「そ、そっちは誰?」
俺かー。
「安堂くんだよ。」べべ、いや亜美が言う。
はぁっ?なんで安堂?明るかったら目を向いた滝谷が見れたに違いない。
「だからねー、学校の前を通りかかったらさ、安堂くんが入って行くのが見えたんだよ。学校真っ暗で、夏休みで誰もいないだろうし危ないから」ついてきたと亜美が言った。
打ち合わせ通り言えるじゃん。ミーティング中、ちゃんと起きてたんだな。
安堂だから話さなくて良いのってラクだ。べべ任せた。
(あ、なんか睨まれたっぽい。殺気がした。暗視眼鏡もいらねえ殺意ってさすがはマーダー。)
滝谷は滝谷で「お前ら付き合ってんの?」って声が恋バナトーンだ。ヤ・メ・ロ。
「ところで滝谷はどうしたの?」亜美が話を逸らす。
課題のレポート、持って帰るの忘れて取りに来たと言う。
こんな夜に忍び込むのは無理があるんじゃない?あ、俺の設定もか。
さてと。 どうするかな、この状況。
一旦校内から出て解散するか。
べべが、滝谷レポート取った?だの、安堂くんは忘れ物あった?だの言ってる。
俺も勿論、仕込み済みのプリントを机から出した。




