潜入 ②
人影はすぐに建物を曲がり見えなくなった。
辺りは物音ひとつしない。
「えっと。見回りだった?」
いや。灯りも持たずに見回りはない。
さて、どうするか。
オークション会場であろう体育館から下見の予定だった。
予定の2日前なら準備が始まっているだろうし、相手の兵隊がいれば装備も参考に見ておきたい。勿論、当日とは違うだろうが。
夕方入ったというオークション品だと思われるトラックの中身も気になる。
そして、本番が明後日決行で間違いないのか確認したい。
だが。と光速で逡巡する。
さっきのヤツの後をつけるか。
どうも兵隊のひとりだとは思えなかった。百戦錬磨の勘が働くってこういう時。
微かな光を逃すか否かが分かれ道になる。特に命が掛かるとそういう事が多い。
イレギュラーは1番危険だ。何が起こるか予測がつかない。
ヤツは体育館ではなく、校舎に入ったようだった。
よし。データ収集開始。
無言でべべに合図を送り、通用門を越えた。
予定が変更になっても無言で合わせてくる。
べべの柔軟さが頼もしい。絶対褒めてやんないけどな。
少し離れたべべに舌を出してやった。怒ってる怒ってる。
集中しようぜ、お互いな。
無言の攻防で相方と遊びつつ、廊下を進む。
どうしてこんなに余裕があるかというとだな。
種明かししておくと。
俺が着けているこの眼鏡は、暗視スコープを改良した物なんだ。勿論、俺が作りました。工作得意。
嘘嘘、半分冗談ね。俺がやったのは今回は時間がなくて設計だけ。時間があれば作れます。米国に俺のラボがあるんで。
この暗視眼鏡、最軽量化の為、30分ほどしか使えないからまだまだ実践向きじゃない。ゴーグルでもないからそこまで明瞭に見えないし。
今夜は視察目的ってだけで着けてきたんだ。まさか、いきなり使用する羽目になるなんてな。
ないより十分マシだと思おう。
この校舎の一階は手前から事務室、生徒会室、保健室になっていて、その先の渡り廊下で繋がった次の校舎には3年の教室。こちらが本館。
二階のこの校舎側に校長室と職員室、本館は2年の教室。
三階に音楽室、美術室、視聴覚室などの特別室と1年の教室。
もう一棟に図書室、茶室、和室、談話室や購買部、食堂などがある。
本館の四階は講堂になっていてセレモニーなどに使われる。
人気のない一階廊下を通過し、本館をそのまま進もうとした時、二階から微かに軋む音が聞こえた。この上は2年の教室。
べべと顔を見合わせ壁伝いに階段を上がる。
よし、ヒット。
サーモ機能でドアを隔てた中に"生きている何か"の反応。
次の教室にいる、と合図を送る。
確認できた。長い廊下はところどころ小さな常夜灯が点いているのでスコープは切っておく。
通常だと。
まずべべが飛び込む。
これは対近距離はべべの方が得意というか専門なので、ね。
でも今は俺から行く。銃はまだ隠したまま。
ふたり、呼吸を整え。GO!




