現在 モデル藤城亜美
7月下旬。港区某スタジオ。
「うわぁ、これ可愛い!」
フィッテングルームで、山口乃愛達がきゃあきゃあと楽しそうだ。
毎月下旬にPUREGIRLの撮影がある。
乃愛は亜美と同じ専属モデルで、あとの3人はPG(PUREGIRLの略称ね)のレギュラーモデル。
この5人がPUREGIRLの次世代トップ5である。人気に比例して誌面数も多い。
今月号は特に5人の企画がある為、企画特集、個人頁、メイク企画に少しと、なんと言っても表紙が入っている。
そして今日は、その表紙と企画の撮影日。
現在1番人気を誇っている三笠あかねを含む高3の4人が来年3月にPGから卒業する事が決定している為、その後を継ぐ若手という構図だ。
みんな、やる気満々で笑顔とスタッフとのコミュニケーションに余念がない。
亜美を除いては。
もちろん亜美だって真剣に仕事をしている。このモデルという仕事が好きで誇りを持っている。
だが。本業ではない。
藤城亜美は、いつ消えるか分からないし、いつ大怪我をするかも分からない。そんな自分が雑誌の顔など務めたいと望めるべくもない。
「亜美ちゃん、センター入って。」
いや、今は仕事仕事。集中する。最高の笑顔で。
カメラマンから指示が出る。コンテにも亜美がセンターと出ていた。
このポジションは春から変わっていない。
高2になって亜美達、同期5人の誌面の扱いが上がった。そしてそのセンターに亜美が抜擢されていた。
実際、亜美は読者からの人気が高い。
年2回のランウェイを歩くフェスティバルや、洋服ブランドの握手会での気さくな人柄がSNSで広まり、今や三笠あかね人気と同等と言われるほどだ。
ただ、これ以上は事務所が仕事を制限していて企業のイメージモデルやCMなどの仕事は一切受けていない為、一般的な知名度は低かった。
そして、亜美の所属している芸能事務所の裏のオーナーや今日も現場についているマネージャーは、実は本業マーダーの所属部隊本部の担当者である。
この事務所には、部隊の息のかかったスタッフも多く亜美の他に俳優として所属しているマーダーもいる。
一昨年、フランスの映画祭の時に起きたテロ未遂事件の際、未遂にする為に暗躍していたのが彼だったという事は、政府と亜美達内部の者しか知る由もなかったが。
「今日の亜美ちゃん、良いねぇ。」
次の衣装にチェンジだ。急いで移動しながら、ありがとうございます!と元気よく返事をした相手と目が合った。編集部のチーフエディターの伊藤は亜美に期待している1人。
来年は高3。
PUREGIRL誌のラストイヤー。
毎年3月にあるフェスティバルは、その年が最後になる高3メンバーの卒業式も兼ねた、最大のイベントになる。
今高2のトップが、現トップモデルのあかねに花束を渡す。
その贈呈に亜美をと強く推しているのが伊藤だった。
これまでは芸能活動禁止の学校だったという名目で、華々しい仕事を断ってきていたが、東波に転校して以降はかなり名前が上がるようになった。
亜美を使いたがる者も多い。
「亜美ちゃんなら次のPGの顔に。」伊藤がまた隣の亜美のマネージャー、木本に打診していた。
日頃から亜美を、いやべべを可愛がっている木本も分かっている。
モデルの世界だけで生きていければ、どんなに幸せだろう。
藤城亜美には、それだけの天性の華があった。
木本はカメラの前に立つ亜美を見る。
照明を跳ね返す亜美の輝きは、命を燃やす本当の意味を知っている者の強さなのかもしれない。




