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リリー・レンフレットの骨拾い  作者: 三色団子
第九章

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「星の魔力の循環?」


 澱みの魔女から頼まれたことを反芻するジェイドだったが、それが何を意味していて、具体的に何をすればいいのか皆目見当もつかなかった。


「うむ。順を追って説明してやろう」


 曰く、まず大前提としてこの星は魔力を用いて成長を続けているとのこと。


 そのため、大地や海、あるいは空といったあらゆる自然空間には、魔力が血管のように通っている。


 時おり、魔力が滞り、溜まって溢れる場所ができてしまう。


 それがはるか昔からこの国で起きていた。


 放っておけば魔の巣窟と化して、取り返しのつかない状態になる。


 そうならないために、かつての魔女たちは対策を取った。


 例えば溜まった魔力を利用して森を作り恵をもたらしたり、巨大な山を作って鉱物を生成したりといった具合に。


 だが一度やったところでその場しのぎにしかならなかった。


 魔力は際限なく溜まり続け、時間が経てばまた溢れてしまう。


 ゆえに本来なら、百年くらいの周期で定期的に儀式を行い、魔力を作用させて鉱物を再生成し、魔力を消費する手筈だった。


 どういうわけか、それがここ数百年の間で行われていない。


 また有事の際の保険として、溜まった魔力を各地に分散貯蓄と代替消費できる環境も作っていたのだが、これもほとんど機能していない。


 唯一、このレンフレット大森林を除いて。


「管理者の血脈が途絶えたのやも知れぬな」


 魔女はこの状況をそのように分析したうえで、煩わしそうに目を細めた。


「じゃから人と子を為そうなどと愚劣と評したものよ。


 わしのように、生殖行為もなく同じ個体が生まれるようにすればよいものを。


 恋だ愛だと自惚れるのも勝手じゃがな、迷惑被るのは子孫じゃろうて」


「なんでその管理者って人たちの血が途絶えたって分かるんだ」


「生き残っておったらこんな状態になっておらんじゃろ。


 御大層に国を興して統治させようなどと。所詮は夢物語じゃったな」


「それって、この国の王家がその役割を担っていたってことか?」


「その通りじゃが?」


「それなら俺が儀式ってのをできるはずだ。俺はその王家の血筋だから」


「お主からはあやつの血脈を感じぬ」


「は?」


「大方成り変わられたのじゃろうよ。まあ珍しい話でもなかろう」


 自身のルーツをあっさり否定され、唖然として言葉を失ったジェイドをよそに、「話を戻すぞ」魔女は元の説明に戻った。


 現在の状況では、魔力が溢れる限界寸前のかなり危険な状態である。


 そのため、急いで魔力を消費させること、そして今後は管理者や儀式がなくとも自然と魔力を消費する環境を作る必要がある。


「消費するって、どんな風に」


「例えばこんな風にじゃ」


 魔女はパチンと指を鳴らした。


 求めに応じて大地が揺れ鳴動し、水面からばしゃばしゃと飛沫(しぶき)が上がると、巨大な木が泉の中から飛び出した。


 瞬く間に成長していくその大木は、泉の直径と同じくらいの幹に、顔を垂直にしても分からぬ全長と、空を覆うほどの枝葉を茂らせている。


「あとは何度か大地の魔力を吸わせてやればよい。そうすれば、管理せずとも自然と魔力を使うようになって、木の実や葉をつけるはずじゃ。


 ついでに言うと実った木の実は美味いし、葉は薬効に優れるぞ」


 必ずしも樹木である必要はないが、こんな感じのものが四つ必要であり、魔力を自然と扱うための手伝いをしなければならない。


 一つはエルトリアがあるので、作るのはあと二つである。


 これらが全て完了すれば、スタンピードのようなことは起こらなくなる。


 ちなみにこれは余談だが、レーベンティアは魔力の分配と循環をする各地の連結地のため、スタンピードの被害が一早く出るとのことだった。


「して概要は理解できたか?」


 大体の説明を終えた魔女に、情報量の多さに混乱しながらも生来の頭のよさが幸いして、「一応は」とジェイドは返答した。


「でも実際、俺たちは具体的に何をどうすればいいんだ?」


「それは心配いらん。わしがこやつの中から指示を出す」


「ん? それじゃあリリーの意識は」


「当然残っておる。わしが顕現できるのはごく短時間じゃし、本来ならこれも例外的な措置でしかない。必然、普段の活動はリリーに行ってもらう。


 そのうえで、必要な時にわしが対処するという寸法じゃ」


「分かった。色々聞きたいことはあるけど、ひとまずは納得したよ」


「うむ、わしもそろそろ時間じゃ。とその前に」


 魔女が再び指を鳴らすと、空から何かが降ってきた。


 ぽん、と魔女の手の平に収まったのは、レオンの生首だった。


「ではくれぐれも頼んだぞ」


 そう言い残すと、張り詰めた威圧感が消えて解放され、入れ替わるようにリリーが意識を取り戻した。


「話は聞いてたか?」


「はい。なんだか、すごいことになっちゃいましたね」


「同感だ。あいつらになんて説明したもんか」


「とりあえず、帰りましょうか」


「まあ、そうだな」


「あっ、私の短剣返してください」


「ああ、ほらよ」


 投げ返された短剣を片手で受け取り、ベルトを巻いて腰に提げる。


 空いた両手で大事そうにレオンの頭を抱え、リリーたちは帰路へと着いた。


 道中、レオンの遺体を拾ってリリーが背負い、野営をして夜を明かしたのち、皆が待つ村へと帰り着いたのだった。


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