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リリー・レンフレットの骨拾い  作者: 三色団子
第八章

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「それで、何が起こったんですか」


 村までの道中、無言というのも気まずくて、リリーが説明を求めた。


「リリーはどこまで覚えてる?」


 先頭を歩くジェイドに代わって、隣を歩くリゼが尋ね返す。


 リリーは自分の記憶を振り返りながら、自信なさげに答えた。


「あの変な靄? みたいなのが出てきて、レオンが殺されたところまでは」


「そのあとすぐにニーナが火の玉を出して攻撃したの」


 リリーの記憶を補完するように、リゼはその後に起きたことを話した。


 と言ってもそこまでたくさんの出来事が起こったわけではない。


 火の玉と水の壁が衝突して水蒸気が発生し、視界を奪われた状態で波のような水に呑み込まれた。


 超大な質量の水の衝撃に一瞬だけ気を失ったリゼは、すぐに意識を取り戻す。


 次々と溢れて木々をなぎ倒し川となった中で、リゼは近くにいたリリーを掴み抱き寄せ、浮いていた大木につかまり、そのまま流された。


 勢いは一切衰えることがなかったのだが、森を抜けた途端に速度が落ちて周囲一帯に拡散し、激流からの脱出をすることができたらしい。


 それから少しして、リゼと同様にダズとニーナが流されてきて、最後にジェイドがやってきたというわけだった。


 つまり、リリーたちが二日掛けて進んだ距離をあっという間に元の位置まで戻してしまったことになる。


 加えて森を破壊する質量の塊と、とてつもない速さの急流に攫(さら)われたのに、流された全員が生還できていることは奇跡としか思えない。


「よく生きてましたね」


 リゼの説明を聞き終えたリリーの率直な感想がそれだった。


「これは憶測なんだけど」


 前置きをしたリゼは、神妙な、それでいて殺意を抑えつけた表情をしていた。


「あれは私たちを殺す気がなかったように思うわ。もっと言うなら、邪魔だから外に追い出したって感じかしらね」


「それは、どうして?」


「理由まではなんとも言えないわね。でも、はじめから殺す気なのだとしたら、レオンや調査隊にやったように首を落としてしまえばよかったのよ」


 実のところリゼは、いや他の面々も誰一人として、レオンがどうやって殺されたのかが分かっていない。


 分かっていないということは、対処不可能という事であり、靄にとってしてみれば、その場で同じように殺すことなど造作もないはずだ。


 人数が多かった? 二十三人も殺しておいてそれはないだろう。


 攻撃を受けたわけではないから? その条件ならレオンとて当てはまる。


 確証があるわけではなかったが、ゆえにリゼは現状から導き出せる結論として、殺す気がなかったのではないかと考えていた。


「あたしも同意見」


 不意に声がして、ダズに背負われているニーナがリリーたちの方に顔を向けた。


「よかった、目が覚めたんですね」


「ついさっきね」


「どこか痛いところとかはある?」


「んー、強いて言うなら胃がちゃぽちゃぽしてて気持ち悪い」


「そう。なら大丈夫そうね」


「おはようニーナ」


「おはよー。って夜じゃん」


「一人で歩けそう?」


「無理。しばらくこのままで」


「はいはい」


「それで、同意見っていうのは」


「あー、ちょっと待って」


 ダズの背から体を横に逸らしたニーナは、胃に溜まった水をびちゃびちゃと地面に吐き出し嗚咽を漏らした。


「きもちわるぅ。二日酔いよりしんどい」


「間違っても僕の背中に吐かないでね」


「前向きに検討することを善処するわ」


 ニーナはもう二、三回と水を吐き出してから、リリーの方に顔を向けた。


「で、あの化け物にあたしたちを殺す気がなかったって話だっけ?」


「そうです」


「攻撃したのってさ、あたしじゃん。それも多分、調査隊とか含めても一番威力があったと思う。でもあたしは死んでない。これっておかしくない?」


「言われてみれば、たしかに?」


「あたしがあっちの立場なら、まず真っ先にあたしを狙うわ。……というか、そうなるように攻撃したんだけど」


 リリーから視線を外して顔を逸らしたニーナは、小さく溜め息を吐いてダズの背中に額を当てた。


「ねえ、揺れがひどいと吐くんだけど」


「そう言われてもねぇ」


 リリーはジェイドの意見も聞いてみたくて、前を歩くその背に視線を向けたが、会話に入ってくる気配はまるでなかった。


 そうこうしているうちに村の明かりが見えてきて、一行は借りている拠点へと戻ってきた。


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