↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リリー・レンフレットの骨拾い  作者: 三色団子
第八章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/92

71


 透明な泉の水に血の赤が溶け出し、じんわりと広がっていく。


 また頭の落ちた底の方からも、血が滲み泉を汚していた。


 一同が唖然として事態を呑み込めない中、一早く立ち直り行動に移したのはニーナだった。


 ライターの蓋を弾いて打ち金を鳴らし、


「灯れ(グリッツ)」


 唱えて巨大な火の玉を作り出した。


 熱に溶け氷解するように、リリー以外の時が動き出す。


 それぞれが戦闘態勢に入るや否や、ニーナは先陣を切って攻撃を仕掛けた。


 火の玉は轟々と大気を焦がしながら、速度を上げてそれに飛来する。


 ニーナの攻撃は、当たれば何であれ爆炎を上げて消し炭にするほどの威力を発揮する。例え得体の知れないモノでも、ただでは済まないだろう。


 そう、当たれば。


 人型の何かは手招きでもするみたいに、くいっと手の指を上げた。


 泉がそれに呼応して、水滴が落ちた時の逆再生をするように水がぐいっと持ち上がり、水の壁となって火の玉と衝突する。


 火の玉が弾けて爆炎が上がった。


 同時に壁となった水は音を立てて蒸発し、水蒸気が辺り一帯を覆った。


 熱く真っ白な霧に視界を遮られ、近くにいるはずの互いの輪郭さえぼやけて見えなくなってしまう。


 下手に動くこともできず、その場に留まって霧が晴れるのを待つ。


 そんな隙を与えてくれるほど、敵は甘くなかった。


 全員の頭上に夜を無理やりにでも引っ張ってきたのかと思わせるほどの影が差し、次ぐ衝撃に意識が洗われる。


 降ってきたのは泉を丸ごとひっくり返したような、膨大な量の水である。


 いや、水は次から次に、津波もかくやと絶え間なく奥からどんどん溢れ、押し寄せ流れていく。とてもあの泉に収まる水量ではなかった。


 ジェイドたちを軽々呑み込んだその波は、進路上にある木々をものともせずになぎ倒し、土と石を巻き上げ大地を抉り、森を破壊しながら行進は止まらない。


 初撃で刈り取られた意識を取り戻したジェイド、リゼ、ダズの三人は、なんとか脱出できないかともがいたが、激流の中では身動きすらままならなかった。


 せめてと目に付いて近くにきていた、ダズがニーナをリゼがリリーを掴みながら、なすすべもなく流されていった。




「リリー! リリー!」


 自身を呼ぶ声を遠くに聞き、ペシペシと頬を叩かれていることに気が付いたリリーはパチリと目を開けた。


「よかった」


 リゼが見下ろしほっと胸を撫でおろす中、リリーは急な嘔吐感に襲われて寝返りを打ち、咳と共に喉に詰まった水を吐き出した。


 背中を擦ってもらい、呼吸が落ち着いてきたリリーは、徹夜明けのような虚ろな眼差しで周囲を見回した。


 暗がりではっきりとは見えないが、ダズとジェイドは服を脱いで水を絞っている。ニーナはまだ意識を戻っておらず、横になっていた。


 全員の無事が確認できて安堵するリリーの頭に、気を失う直前の光景がフラッシュバックして、「レオンは?」誰ともなしに呟いた。


 皆が顔を背けていた。


 声は聞こえているはずだ。


 それなのに、誰も何も答えない。


 沈黙が、リリーにとっては答えだった。


 俯き、握る拳がこれでもかと固くなって、じわりと血が滲んだ。


 レオンが死んだ。いや、殺された。首を刎ねられ即死した。


 見るだに死体はどこにもない。回収すらできなかったのだ。


 その事実に、言葉にならない怒りが込み上げてくる。


 無力感がざわざわと胸の辺りを這いずり回り、喉がキュッと細くなる。


 全部吐き出して、何かにぶつけてしまえれば、少しは楽になれるのに。


 この衝動を向ける矛先はどこにも見当たらない。


 自分以外の全員が同じ気持であることをリリー自身が分かっているから。


 リリーが思わず仰いだ空は、もうじき夜だった。


「何があったんですか」


 湧き上がる混沌とした感情をなんとか呑み下したリリーは、服についた水滴を払って着直しているジェイドに尋ねた。


「説明はあとだ。ひとまず村に戻るぞ」


 それもそうか。道具も用意もなくここで一夜を明かすわけにも、ニーナをこのままにしておくわけにもいかない。


 ジェイドの指示を素直に受け入れられるくらいには、リリーは冷静や平静を保とうと必死だった。


「んじゃ行くぞ」


 ダズがニーナを背に担ぎ、ジェイドとリゼが歩き出す。


 ふと何かに呼ばれるように、リリーは後ろを振り向いた。


 太陽の残火でわずかに照らされたその森は、一部が大きく消失していた。


 まさしく、神話に語り継がれる天災と遜色のない破壊の跡である。


 押し潰されそうな無力感から逃げ出すように、先を行くジェイドたちを追って、リリーは駆け出した。


~~~~~テンプレート~~~~~

・評価:(∩^o^)⊃-☆

・感想:φ (..)

・リアクション:(`・ω・´)b

上記等の反応を頂けると嬉しいです!

よろしくお願いします m(_ _)m

~~~~~テンプレート~~~~~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。