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お互いにまだ様子見といった具合で、死体たちは包囲網を狭めながらじりじりと近付いてくる。
「数は二十三か」
「調査隊の人数と一致するわね」
「あたしが燃やそうか?」
「俺たちも燃えるから却下」
ひそひそと話し合っていると、死体の一匹がしびれを切らしたようにリゼの前へと飛び出てくる。
武器を持たず、ただ覆いかぶさるようにする突進など、リゼにとっては攻撃ですらない。
するりと懐へ入り込み、心臓を目掛けて細剣を突き刺した。
バターに熱したナイフを入れるくらいの軽さで、死体の心臓が貫かれる。
あまりの抵抗のなさに違和感を覚え、リゼは死体を蹴り飛ばした。
死体から引き抜いた剣には肉片どころか血の一滴も付着していない。
そしてまた心臓を突かれた死体は、何事もなかったかのように立ち上がった。
「不死身?」
「もう死んでるけどな」
「どうするの?」
「……手足落として無力化する。全員固まって、目の前の死体を各個撃破しろ。常に隣のやつのカバーも忘れずにな」
「気が引けるわね」
「おう」
「分かりました」
「ニーナは中央に隠れてて」
「いざとなったらぶっ放すからね」
「俺たちがまる焦げになる前に片付けるぞ」
ジェイドたちが方針を固めて戦闘態勢を取ったのと、死体たちの包囲が完了したのは同じくらいのタイミングであった。
死体たちは一斉に飛び出し、一番近い者たちへと殺到する。
リリーは一歩前に出て、銃床で殴りかかってくる死体の右足を切断した。
流れるように右腕も切り落し、回し蹴りで他の死体に飛ばしてぶつける。
死体の体は異様に軽く、リゼの時と同様に刃がすんなりと通り、また魔力による身体強化もされていないようだった。
動きは緩慢で、連携も取れていない。攻撃をするにしても、持っているものを振り回したり無防備に突撃してくるだけ。
鉄砲を持っているというのに、弾がないのか使い方が分からないのか、遠距離から攻撃してくるということさえなかった。
そのため、他の面々も危なげなく対処していた。
レオンは胴体を横一字に両断すると、バタバタともがき暴れるその四肢をそれぞれ切り落とした。
切り口からは血が出てくることもなく、上半身には内臓も詰まっていない。
まさしく肉人形と表現するに相応しい造形をしていた。
ダズは正拳突きをして胴体に大きな風穴を開けた。
残った手足がぼとりと地面に落ちて動かなくなる。
どうやら手足を落とさずとも無力化は可能らしい。
リゼも剣で手足を次々と切り落としていく。
拳銃では効果が薄いと判断したジェイドも、新調した短剣を抜いた。
頭のない人間が土の中から這い出てきて、襲い掛かってくるという異常事態はたしかに動揺を誘った。
数の上ではあちらが有利であるし、元は精鋭の集団である。
だがこれではとてもじゃないが、ジェイドたちの脅威とはなり得なかった。
処理し終えた死体が無惨にもそこら中に転がっている。
中には手足を失ってもなおもぞもぞと動いている死体もいるが、ただただ気味が悪いだけで攻撃能力は皆無である。
ジェイドたちは体力的にまだまだ余裕があったが、精神的な疲労感は殊更に大きく、また静かに行き場のない怒りを溜め込んでいた。
「調査が終わったら持ち帰って埋葬してやろう」
ジェイドが言って、全員が賛同する。
それらが本当に調査隊の死体なのかは定かでないにしろ、放置したままというのはなんとも後味が悪い。
本来であれば真っ先に安全な場所まで死体を持ち帰るべきかもしれないが、この事象を引き起こした原因を突き止めねば第二第三の被害者が生まれかねない。
まずは予定通り泉の調査を優先するとして、ジェイドたちは先に進んだ。
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