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リリー・レンフレットの骨拾い  作者: 三色団子
第八章

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 市長と面会した二日後の早朝、ジェイドたちは再びレンフレット大森林の前までやってきていた。


「最終確認すんぞ」


 ジェイドが言うと、わずかに弛緩していた空気が引き締まる。


 全員の視線が自身へ向いてから、ジェイドは改めて目的を共有した。


「俺たちは発見された泉が本当にあるかの確認と、あればその周辺調査を行う」


 先遣した調査隊の報告を疑っているわけではないが、帰ってきた隊員が一人であるというのは、情報確度としてはあまり信用できるものではない。


 本人の思い違いや見間違いなどはよくあることで、それを信じたばかりに危険を見逃すなんて話もよくある失敗談である。


 まずは発見された泉が本当にあるのかどうか確かめる必要があった。


 もし無ければ周辺の捜索を行い、発見できればその調査を進める。


「今日の目標は泉との中間に設営された簡易拠点を目指す」


 泉までの距離はおおよそ六万、森の中を進むとなると二日はかかる計算になる。


 そのため、今日は調査隊が設置した小拠点まで行って一夜を明かし、翌日に泉まで行く算段である。


「それと靄について、ひとまず出現しても攻撃はするな」


 調査結果から、その敵生体と思しき靄は、攻撃されたためにやり返したという解釈が妥当である。


 そう断言できないのは先述の情報不審もさることながら、過去に類似する事象が存在しない完全なる未知だからだ。


 いくら予知のごとき先見性を発揮してきたジェイドでも、今回ばかりは推測や憶測の域を脱することは不可能だった。


 だが、その消極性にジェイドの腹積もりを察したリゼは、それとなく言葉を濁して尋ねた。


「見えてないんでしょ?」


 全員の視線がリゼへと集中する。


「……ああ」


 それらをものともせず、二人の共通項を確かめるようにジェイドは頷いた。


 何かと秘密が多いことも、リゼだけがある程度の事情を把握していることも、他の面々は理解している。


 こうも露骨だと根掘り葉掘りと突っつきたくなるものだが、人には触れられたくない過去の一つや二つあるのもまた事実だ。


 それらをよくよく分かっているがゆえに、誰も何も言わなかった。


「それじゃあ、行くぞ」


 ジェイドの号令で一行は森へと侵入した。


 侵入口は調査隊の第三分隊が使用した第二十一経路からで、そのまま直進する。


 報告では距離約六万とあったが、森の浸食が深まっていることを考えると、それ以上ということも十分にあり得る。


 また報告にはなかったが、魔物が現れ襲撃してくることも想定される。


 ジェイドたちは普段以上に慎重を喫して進んでいった。


 日が翳りはじめ、鬱蒼としていた森がその昏さを一層深める頃合い、調査隊が設営したと思われる簡易拠点跡へと辿り着いた。


 ただし拠点跡とは名ばかりで、テント等が設営しやすいように多少切り開かれた程度の広場である。


 また半月と経過していないはずだが、修復と言うべきか回帰と言うべきか、すでに人のいた形跡が無くなりつつあった。


「今日はここで明かすから、野営の準備」


 ジェイドが音頭を取り、持ってきた荷物を解いて簡易的なテントを設営したり、焚き火用の枝を拾ってきたり、夕食の準備をしたりと野営の準備を進めていく。


 夕食を摂り終えた面々は、火と周囲の見張り番を残し、それぞれ就寝する。


 見張りは交代制で、年少組のリリーとレオンが最初の番になっていた。


 パチパチと火の粉を飛ばしながら燃える焚火を囲みながら、毛布にくるまってじっとその炎を眺めている。


 時おり薪をくべる以外にすることがなく、早々に話題も尽きた二人は、眠気も相まって無言の時間が続いた。


「おい」


 少しばかりうとうととして船をこぎ出したリリーにレオンが声を掛ける。


「んっ、はい?」


 びくりと肩を震わせたリリーが目を覚まし、とろけた声で返事をした。


「寝んな」


「すみません」


 謝罪を残してまたしばらく、再び影の濃くなりはじめると、今度はレオンがうとうとと瞼を下ろしていく。


「レオン」


 びくりと肩を震わせたレオンは、すっと目を細めてリリーを睨んだ。


「寝てたでしょ」


「寝てねぇよ」


 してやったりとばかりに小さく微笑むリリーに、レオンは目を逸らした。


「ねえ」


「あ?」


「報告にあった(もや)ってなんだと思う?」


「知らねーよ」


「戦って倒せたりするのかな」


「銃が効かねぇなら剣で切れるかも怪しいけど、やってみるしかないだろ」


「そうだよね」


「ビビってんのかよ」


「……ちょっとだけ」


「まあなんとかなんだろ」


「でも、もしダメだったら」


「そんときは、あれだ。骨は拾ってやる」


「勝手に殺さないでください。それに、骨拾いは私の方が得意です」


 若干の剣呑な、それでいてどこか微笑ましくもあるような雰囲気にあって、「おはよ~」ニーナが目を擦りながら起きてきた。


「おはようございます」


「んじゃあたしが見とくから、あんたらガキんちょは寝なさい」


「ありがとうございます、おやすみなさい」


「途中で寝んなよ」


 言って二人は男女それぞれのテントへと入り、就寝した。


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