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魔物化したロックバード討伐からひと月が経過しようとしていた。
朝食の準備をしていたリゼのもとに、パンを買ってきたリリーと、帰り道に偶然出会ったらしいジェイドがやってくる。
「市長に朝一で来いって呼び出し受けてるから、飯食ったら行くぞ」
様々な感情が混ざり合った形相をして固まるのも束の間、あらゆる言葉を呑み下したリゼは「リリー、みんなを起こしてきて」と指示を出す。
「はい」
返事をするや足早に、まずはニーナの部屋をノックする。
返事がないのでそっとドアを開けて中の様子を確認すると、開けっ放しのカーテンから照る光から逃げるように、枕に顔を埋めていた。
部屋に入って肩をトントンと叩くと、「んん?」呻き声が漏れる。
「おはようございます」
「まだ、あとちょっと」
「朝一で市長のところに行くってジェイドが」
「あぁ? 一人で行けよぉ」
「他の人も起こしに行くので、寝ないでくださいね」
「あーい」
ニーナはあれで寝起きがいい。一度目を覚ませば、あとは勝手に支度をして起きてくるだろう。
リリーは次にダズの部屋をノックした。
「入ってどうぞ」
「失礼します」
ダズは弓の弦の調整を行っていた。狩猟が趣味で、先日も鹿を一頭狩ってきた腕前のダズには、道具の手入れにも余念がない。
机の上には解体用のナイフが並べられており、自分の番を心待ちにしているようにさえ見えた。
「おはようございます。朝一で市長のところに行くそうです」
「おはようリリー。またずいぶんと急だね」
「リゼが怒ってました」
「ははっ、そりゃそうだ。僕も怒られる前に準備しておくよ」
「私はレオンを起こしてきます」
リリーはダズの部屋を出て二階に上がった。
自室の向かいの部屋をノックする。
小さく舌打ちが聞こえてきて、何かガサゴソと物音が治まると、「誰だ」ようやく返事が返ってきた。
「リリーです」
「おう」
リリーは恐る恐るドアノブを回して扉を開ける。
以前起こしに来た時、ノックもせずに入ったことがあった。その時は罵声と共に本が飛んできて、実は少しだけトラウマになっていたりする。
そのことをリゼたちに話すと、「そういう年頃だから」という回答があり、リリーも深く考えずに「そういうものか」と納得することにしていた。
後日に投げられた本を返した際、何をしていたのか尋ねたところ、「笑うなよ」と前置きをされ、「勉強してんだよ」と告げられた。
何をそんなに隠したがるのか、別に恥ずかしくもないし、勉強熱心なのはいいことだろう。
余談だがレオンに「誰にも言うなよ」と口止めされたリリーは、リゼたちに曖昧なことを伝えたため、いらぬ誤解を与えていたりする。
「で、何の用だよ」
背もたれに肘を置いて上半身だけを向けているレオンは不機嫌そうだった。
「朝一で市長のところに行くから準備しとけってジェイドが」
「めんどくせぇ。俺はいなくてもいいだろ」
「私たちも同意見です」
「……お前。いや悪気がないのは分かってんだけど、言い方ってもんがあるだろ」
「そうですね?」
「ああ、もういい。とりあえず分かったから出てけ」
「朝ご飯片付ける前に食べて下さいね」
しっしと手で追い払われるリリーは小言を残して部屋を出た。
さっさと朝食を摂ったリリーは、自室へ戻って着替えを済ませ、リゼに髪を整えてもらう。
そうこうしているうちに他の面々も準備を済ませて家を出た。
街はまだこれから仕事を始めるといった緩慢な空気で、ばっちり支度をした一行は異様と映りながら、市庁舎へとやってきた。
朝も早くから職員たちはきびきびと活発に動き回っている。
ジェイドは職員に要件を伝えると、しばらくして案内人がやってきた。
案内人に連れられ、前回と同じ部屋に通される。
「下がれ」
直前まで紙に走らせていたペンを置き、職員を退出させた市長は、全員がソファに着席するのを見てから口を開いた。
「急に呼び出してすまなかったな」
「いえいえ、それほど大事な用件なんでしょう?」
「ああ。先日行ったレンフレット大森林の調査結果についてだ」
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