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リリー・レンフレットの骨拾い  作者: 三色団子
第五章

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 ジェイドたちは活動拠点として借りた空き家へと戻ってきた。


「さてと、各々の感想と意見を聞こうか」


 全員が腰を落ち着け一息つき、ジェイドが音頭を取る。


 リゼがレオンの傷の処置をしながら、魔物との戦闘やその道中などでの所感について話し合うことになった。


 ちなみに、書記はリリーである。


「じゃあダズから」


「そうだね。僕が感じたのは数の多さの異常性かな」


「というと?」


「話を聞く限り、合計すると襲ってきた数が全部で二十匹弱だったよね」


 ダズは言って、それぞれが戦ったとされるロックバードの数を指折り数えた。


 ジェイドたちが四匹、ダズたちも四匹、レオンたちが十匹。


 全員が集まっていた時の二匹を追加して、合計二十匹。


 もしかしたら数え間違えや潜伏していたものがいたかもしれないが、確認できたその全てが確実に魔物化していた。


「ハミングバードの生態的に群れの最大数と同じ数だ。それが全部魔物化していたことになるんだけど、これは普通じゃない」


 魔物化する動物の例が少ないため確証はないが、偶然にもその土地からの噴き出した魔力に作用させられた一匹が変化するものと考えられている。


 ゆえに群れ全体がもれなく魔物化するなどかなり稀で、ダズの経験則的にもそれは異常であった。


「私も同意見ね。あれだけの数が魔物化しているなら、他にも群れ単位で魔物化している動物がうじゃうじゃいることになるわよ」


 止血用の布を取り、レオンの傷口を水で流して綿と清潔な布で肩の怪我を縛りながらリゼが言った。


 一応、この世界での傷の治療方法は、急を要するなら傷口を焼くことが一般的だったりするのだが、魔力が使える場合は事情が異なっていた。


 魔力を自然治癒力へと作用させることで、レオン程度の傷であれば二、三日ほどで治るので、リゼの処置の方が望ましい、というのは余談である。


「だよなぁ……、めんどくさ。まあ、いいや他には?」


「あたし的には、そもそも襲われたことが意味わかんない」


「ロックバードは好戦的ではないものね」


「好戦的だとしても人を襲う理由がないでしょ。巣があるとかでもないのに」


「食料がないとかなら、考えられなくもないけど」


「それなら一、二匹やられれば逃げるって」


「そうね。あれは死兵に近いものを感じたわ」


「人間かっての。そんなの自然の生物の思考じゃないじゃん」


 重ねて言うが、ロックバードとは本来臆病な性格である。


 少しでも害のありそうな動物が近づけば逃げるし、その際には特異な音を使って情報伝達を行い、集団で移動する。


 人間を見かけて攻撃を仕掛けるどころか、群れが全滅するその最後の一匹まで特攻してくるなど、とても普通とは言えなかった。


「操られていたとか、誘導されていたとかの方がまだ納得できる」


「その辺りも調査内容か」


 ジェイドは面倒くさそうに言って、リリーの方をちらりと見る。


 リリーは一生懸命に文字起こしをしており、カリカリという音を立てるペンが紙の上を走っていた。


 普段はリゼが書記をしているのだが、今回はレオンの治療を優先しなければならないので、慣れないながらリリーに役割が回ってきた。


 文字ならジェイドも書けるが面倒くさがってやらない。


 ダズも簡単なものなら問題ないが、話しながらだと書き取りがおぼつかない。


 ニーナも書けなくはないが、字が汚く読み返すことに難がある。


 レオンは怪我をしているし、そもそも読むことすらちょっと怪しい。


 必然的に書記はリリーとなっていた。


 そんなリリーが今の会話内容を書き終えるのを待って、ジェイドが口を開く。


「俺が気になったのは魔力が作用する指向性の方だな」


「身体能力強化と皮膚の硬化はしてたよ?」


「そうなんだけど、音に関するものがなかったろ」


「そうだっけ?」


「全員が聞いた警告音みたいなのは違うってこと?」


「うーん、あんだけ好戦的なら攻撃に使ってくるんじゃねーの」


 ジェイドが言っているのは魔力を作用させるものへの違和感であった。


 人間がしばしば愛着のある道具に作用させるように、魔物化した動物は自身の特性や特徴に魔力を作用させる事例が見られる。


 例えば、魔物化した鯨が一発の潮吹きで大型船を木っ端微塵に粉砕したり、魔物化した羊が一般的な民家一軒分の毛を生やしたりといった過去がある。


 これをロックバードに当てはめるなら、また死兵さえ(いと)わない敵意が合わされば、音による殺傷か、少なくとも妨害に使用すると考える方が自然だった。


 だが、結果として最初の情報伝達と不快な音以外には何もなかった。


 ジェイドの違和感はここにあった。


「そんな暇がなかったとか、実は何かしていたとか?」


「考えても仕方がないでしょうけれどね」


「まあ、追加の調査で何か分かればいいってところだな」


「そうねっと。はい、終わり」


 会話をしながらレオンの怪我の処置を終えたリゼは、言って傷口を叩いた。


「いって」


「あとは魔力を使って安静にしときなさい」


「おう」


「そんじゃあ、これからの動きを決めるか。


 レオンは完治するまで留守番。ついでにリリーとニーナも待機な」


「なんであたしが」


「見張りだよ。あとお前はやっぱ森の探索に向かないだろ」


「えーガキのお守りとか。リリーは?」


「大事を取って今日は待機だけど、明日以降は連れてく」


「ふーん。調査はいつまで?」


「調査内容次第で前後するけど、予定通り四、五日」


「ま、それならいっか」


「レオンとリリーもそれでいいか?」


「文句はねぇよ。無理についてったら足手まといになるし」


「わたしも大丈夫です」


「よし、決まりだ。もうひと休憩したら俺たちは出るぞ」


 ジェイドによって所感の共有と方針決めが終わった。


 各々が思い思いに過ごしたのち、ジェイド、リゼ、ダズの三人は再調査のために出かけて行った。


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