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リリー・レンフレットの骨拾い  作者: 三色団子
第五章

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 何が起こったのかと木々の奥の暗がりに目を凝らせば、人影が二つやってくる。


「リゼ!」


「ジェイド」


 リリーは今にも泣き出しそうにリゼの名を叫び、レオンは悔しそうな顔をしてジェイドの名を呼んだ。


「あれ、やられてんの?」


「だから早く戻りましょうって言ったのに」


 リゼは溜め息を吐いてジェイドに一言文句を言いい、レオンに駆け寄った。


「軽症ね。骨にも内臓にも達してないわ」


 レオンの左肩と右膝、右脇腹の傷を診たリゼは応急処置を施しながら告げる。


「リリーは?」


「大丈夫です。怪我はしてません」


 リリーはそう自己申告をするも、リゼは服を捲ったりして一通り確認した。


「うん、大丈夫そうね。ジェイド」


「ああ、ニーナたちが来たら一旦戻るか」


 ジェイドが言うと、示し合わせたようにニーナとダズがやってきた。


「あたしたちが一番遅いとか」


「警戒しすぎたね」


「ってかあんた怪我してんの、だっさ」


「うるせぇ」


「負ぶってあげようか、ダズが」


「僕なのね。まあいいけど」


「いらねぇよ。歩ける」


 全員が無事に合流したことで一気に緊張が解ける中、リゼは剣を抜き、空中に突きを放った。


 射抜かれたロックバードが木陰にぽとりと落ちる。


「まだいたのね」


「今の、なにしたんですか」


 ロックバードが残っていたことより、リゼがしたことに驚いたリリーが尋ねた。


「突きの範囲を拡張しただけよ」


「はんい……わたしにもできますか?」


「訓練次第ね。さ、村に戻りましょう」


 いつの間にか納刀したリゼが言って、一行は森を出るべく歩き出した。


 先頭にはリゼとジェイドが横に並び、ニーナ、レオンを背負ったダズ、リリーという順番で、幾ばくかの距離を空けて縦に歩く。


 リリーは最後尾を歩きながら、先ほどのリゼの突きや自身の戦闘などを思い出していた。


 ああすればよかった。こうすればよかった。もっとこうできた、かもしれない。


 取り留めもなく起こり得なかった未来に想い馳せながら、殿としての役割を頭の中からすっぽり抜け落としながら。


 ただ他のメンバーについても、経験不足のリリーを殿に据えてしまうほど、ロックバードを全て倒したという油断があったことは否めない。


 ——あれ?


 その小さな違和感に気が付いたのは、思考が未だ先の戦闘の中にあったリリーだけである。


 ロックバードと会敵した一番最初。


 敵の姿形を確認するべく、リゼに受け流されて木の下に転がった一匹。


 ジェイドたちが散会し、合流するまではたしかにいたはずの一匹。


 それが、いなくなっていたかもしれない。


 全部倒したのなら何も問題はない。


 でも、もし。もし、潜伏していたら?


 この油断した中で背後から奇襲されたら?


 予感めいた直感が閃いて、リリーは背後を振り返る。


 予感は現実に、ロックバードは音も無くリリーを飛び越え、レオンの後頭部を目前に迫っていた。


 前にいるリゼたちやレオンを背負っているダズ、当の本人さえ気付いていない。


 対処できるのはリリーだけ。だけど、またもや手が届く範囲ではなかった。


 リリーは必死だった。見様見真似だった。できるなんて確信はなかった。


 でも、できなければレオンが殺される。


 リリーがやらなければならなかった。


 短剣の抜刀の勢いをそのままに、空を一閃する。


 届け。とどけ。トドケ。


 思いは形となりて、ロックバードの足の付け根から首にかけてを剣閃が走る。


 なき別れる体に頭が上向き、ロックバードとリリーの視線が交錯した。


 血しぶきが飛び、リリー以外の全員がその方を見る。


 リゼは剣の柄に手をかけ、ジェイドは拳銃を取り出し、ダズとニーナが飛び退って距離を取った。


 その中心にロックバードの死体がぽとりと落ちた。


「リリー」


 リリー以外の誰しもがその光景に目を奪われ言葉を失う中、ダズの背から顔を出したレオンが名前を呼んだ。


「助かった」


「うん」


 レオンは思い出したように照れて顔を逸らし、リリーは剣を納める。


「すごいじゃん」


 ニーナがリリーの頭を乱雑に撫でまわし、全員が気を引き締め直した。


 それからの道中は何事もなく、一行は村へと帰り着いた。


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