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何が起こったのかと木々の奥の暗がりに目を凝らせば、人影が二つやってくる。
「リゼ!」
「ジェイド」
リリーは今にも泣き出しそうにリゼの名を叫び、レオンは悔しそうな顔をしてジェイドの名を呼んだ。
「あれ、やられてんの?」
「だから早く戻りましょうって言ったのに」
リゼは溜め息を吐いてジェイドに一言文句を言いい、レオンに駆け寄った。
「軽症ね。骨にも内臓にも達してないわ」
レオンの左肩と右膝、右脇腹の傷を診たリゼは応急処置を施しながら告げる。
「リリーは?」
「大丈夫です。怪我はしてません」
リリーはそう自己申告をするも、リゼは服を捲ったりして一通り確認した。
「うん、大丈夫そうね。ジェイド」
「ああ、ニーナたちが来たら一旦戻るか」
ジェイドが言うと、示し合わせたようにニーナとダズがやってきた。
「あたしたちが一番遅いとか」
「警戒しすぎたね」
「ってかあんた怪我してんの、だっさ」
「うるせぇ」
「負ぶってあげようか、ダズが」
「僕なのね。まあいいけど」
「いらねぇよ。歩ける」
全員が無事に合流したことで一気に緊張が解ける中、リゼは剣を抜き、空中に突きを放った。
射抜かれたロックバードが木陰にぽとりと落ちる。
「まだいたのね」
「今の、なにしたんですか」
ロックバードが残っていたことより、リゼがしたことに驚いたリリーが尋ねた。
「突きの範囲を拡張しただけよ」
「はんい……わたしにもできますか?」
「訓練次第ね。さ、村に戻りましょう」
いつの間にか納刀したリゼが言って、一行は森を出るべく歩き出した。
先頭にはリゼとジェイドが横に並び、ニーナ、レオンを背負ったダズ、リリーという順番で、幾ばくかの距離を空けて縦に歩く。
リリーは最後尾を歩きながら、先ほどのリゼの突きや自身の戦闘などを思い出していた。
ああすればよかった。こうすればよかった。もっとこうできた、かもしれない。
取り留めもなく起こり得なかった未来に想い馳せながら、殿としての役割を頭の中からすっぽり抜け落としながら。
ただ他のメンバーについても、経験不足のリリーを殿に据えてしまうほど、ロックバードを全て倒したという油断があったことは否めない。
——あれ?
その小さな違和感に気が付いたのは、思考が未だ先の戦闘の中にあったリリーだけである。
ロックバードと会敵した一番最初。
敵の姿形を確認するべく、リゼに受け流されて木の下に転がった一匹。
ジェイドたちが散会し、合流するまではたしかにいたはずの一匹。
それが、いなくなっていたかもしれない。
全部倒したのなら何も問題はない。
でも、もし。もし、潜伏していたら?
この油断した中で背後から奇襲されたら?
予感めいた直感が閃いて、リリーは背後を振り返る。
予感は現実に、ロックバードは音も無くリリーを飛び越え、レオンの後頭部を目前に迫っていた。
前にいるリゼたちやレオンを背負っているダズ、当の本人さえ気付いていない。
対処できるのはリリーだけ。だけど、またもや手が届く範囲ではなかった。
リリーは必死だった。見様見真似だった。できるなんて確信はなかった。
でも、できなければレオンが殺される。
リリーがやらなければならなかった。
短剣の抜刀の勢いをそのままに、空を一閃する。
届け。とどけ。トドケ。
思いは形となりて、ロックバードの足の付け根から首にかけてを剣閃が走る。
なき別れる体に頭が上向き、ロックバードとリリーの視線が交錯した。
血しぶきが飛び、リリー以外の全員がその方を見る。
リゼは剣の柄に手をかけ、ジェイドは拳銃を取り出し、ダズとニーナが飛び退って距離を取った。
その中心にロックバードの死体がぽとりと落ちた。
「リリー」
リリー以外の誰しもがその光景に目を奪われ言葉を失う中、ダズの背から顔を出したレオンが名前を呼んだ。
「助かった」
「うん」
レオンは思い出したように照れて顔を逸らし、リリーは剣を納める。
「すごいじゃん」
ニーナがリリーの頭を乱雑に撫でまわし、全員が気を引き締め直した。
それからの道中は何事もなく、一行は村へと帰り着いた。
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