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さて、第二ラウンドと言わんばかりに始まったロックバードとの応酬は激しさを増し、レオンたちは苦境に立たされていた。
足止めに向かわせていた仲間がやられたからか。
はたまた、すぐに狩れると思い侮っていた者たちに反撃されたからか。
真相は定かではないが、ロックバードたちはなりふり構わなくなっていた。
先ほどまでは二匹で攻めて二匹で隙を埋めるという戦術も、今では四匹一斉に、
「くそっ、また増えやがった」
いや、今しがたさらに数を増やして、計六匹の群れが攻め立てている。
さしものレオンたちにも余裕の色は消え、徐々に攻撃に被弾していく。
狙われるのはレオンばかりだが、それをカバーするリリーの負担も増加しており、処理能力を圧迫され続けている二人は肩で息をし始めていた。
一転して劣勢に立たされる中、ダメ押しとばかりにさらに二匹が追加され、八匹のロックバードが縦横無尽にレオンたちの周囲を飛び回る。
無視できない一撃を先にもらったのはやはり、狙われているレオンであった。
背後から左肩を嘴が貫き、苦悶の表情を浮かべる間もなく右膝、右脇腹とリリーの防御をかいくぐった連撃がレオンを襲う。
地面に剣を突き立てて支えにしながら、関節を的確に奪われたレオンは膝を折り、「くっそ」悪態をつくので精一杯だった。
「ごめんなさい」
リリーは口癖のように謝りながら、レオンの左肩に突き刺さったままのロックバードの首を落とした。
次いで右膝に刺さっている方のロックバードも斬ろうとするが、脇腹のも合わせて勢いよく飛び去り逃してしまう。
「あ、」
と声を上げる後悔が立つより早く、追撃がやってきた。
リリーは身体に作用させている魔力量を瞬間的に増大させると、迫りくる四匹の動向を一目で把握し、舞い流れるようにその全てを受けきる。
トン、と静かに着地したリリーは、忘れていた呼吸を急いで取り戻した。
そんなリリーの対処能力限界を見越して、あえて一拍遅らせてきたロックバードがレオンへと差し迫る。
意地と根性で反応したレオンは、力を振り絞ってなんとか弾き返すも、顔を上げて次に備える余力もなくただ俯いた。
二人とも、限界が近づいている。
一匹のロックバードがわざとらしく姿を晒して突撃してきた。
考える余裕のないリリーが反射で飛び出す。
短剣と衝突し、レオンへと至る軌道を逸らすことに成功したものの、足がもつれてリリーは転んだ。
今度はリリーたちの方が釣られた形であった。
レオンに攻撃が集中すれば、リリーは間に合わず防ぐ手立てもない。
一匹ならレオンに防がれるかもしれないが、残りの全てでかかればいい。
好奇を逃すことなく、六匹のロックバードが全方位から同時に現れる。
——せめて一匹だけでも。
リリーは起き上がりながら低い姿勢のまま駆け出した。
しかし、ロックバードの方が早かった。
手を伸ばしても、決して、追いつくどころか届きもしない。
レオンの横顔が映り、睨むような目がリリーに向けられていた。
来るな。足手まとい。逃げろ。
そんな風に捉えてしまうのは都合がいいだろうか。
走馬灯のように巡る思考の渦から脱する方法なんて、リリーには分からない。
ただ、その渦の中心にある感情には覚えがあった。
自分のせいでまた人が死ぬ。
父のように。
レオンとは知り合って日が浅いし、あまり好きではない。
粗野で乱暴で、やたらと張り合い競争しようとしてくる。
だからと言って死んでほしいだなんて思ってはいない。
危なかったら助けるし、協力だって惜しまない。
多少の怪我だって許容するし、半分くらいなら命も掛けられる。
命の全部を掛けることができないのは、自分の命の権利と責任を負っているのがリリーだけではないからだ。
そんな状況なのに、他人のそれを背負うなんてことはできようはずもなかった。
それが恐怖であり、人を構成する要素の一つである。
そして、恐怖を覆すには勇気が必要で、勇気を出すには覚悟が必要だ。
覚悟は責任を土台とするので、やはり、リリーには十分ではない。
ではどうするか。
リリーはただ祈った。願った。
誰か。だれか。ダレカ。助けて、と。
子どもらしく無垢に無邪気に無謀に助けを求めた。
空気を射抜く風がリリーの頬を掠めた。
かと思えば突然、三匹のロックバードの頭から血が吹き出し、錐もみしながら地面を転がっていった。
それらと同時に銃声が三発鳴り、同じように残りの三匹のロックバードが力なく地面を舐めて伏した。
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