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リリー・レンフレットの骨拾い  作者: 三色団子
第五章

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 ジェイドたちと別れ、簡単に作戦を話したそのすぐ後、レオンに向かって二匹のロックバードが攻撃を仕掛けてきた。


 一匹は剣を構えたレオンが受けて外へと弾き、もう一匹はリリーが間に入って受け、地面へと滑らせ逸らす。


 初撃を防いで息つく暇もなく、仲間を庇うようにして別の二匹が殺到した。


 計四匹のロックバードは互いの隙をカバーしながら、絶え間なく攻撃を繰り返していた。


「はっ、大したことねぇな」


 レオンは笑みを浮かべて威勢よく言い放つ。それは虚勢でも慢心でもなく、言葉が通じるかはさておき、ただの事実にして挑発であった。


 今のところ、二人には目立った外傷はない。


 防御に徹していればあと二、三匹増えても受けきれるだろう。


 というのも、ジェイドが言った通り、どうやら本当にレオンばかりが狙われており、リリーにはその攻撃の延長上にいなければ掠りもしないのだ。


 リリーはレオンが対処しきれない攻撃を受けるだけで事足りるし、レオンもリリーの方を余計に気遣う必要もなく目の前に集中できる。


 古今東西、余裕のある相手が防御に徹するというのは、如何とも崩し難い。


 生物としての形態が異なっていようとも、それは揺るぎない事象として立ちはだかっていた。


 いつまで経っても有効な手立てを打てないロックバードの一匹は、レオンの煽りを受けて痺れを切らし、つい捻りもなくただ真正面から突撃を行った。


 そうしてまた、無理に攻めようと躍起になれば、手痛い反撃が待っている。


 ——釣れた。


 レオンは短く息を吐いてぐっと腹に力を込め、溜めていた魔力を解き放つ。


 それは模擬戦でのリゼの総評時に言われたことに対する解答の一つだった。


 リゼから言われたのは、身体能力強化として作用させている魔力の出力を、戦闘中に素早く上下させられるようにするということである。


 これを自在に行うにはひたすらに地味な反復練習が必要で、とてもじゃないが一朝一夕で身につくものではない。


 地味なことを繰り返すことが苦手なレオンにはまさしく苦行と言える。


 そこでレオンが思いついたのは、事前に魔力を溜めておくというものだった。


 使いたいときに溜めていた魔力を解放し、瞬間的に身体能力を上げる。


 効果は持続せずまた一瞬なので、使えば勝手に元に戻る。


 欠点と言えば再使用するために魔力の溜め直しが必要なことだが、それでも戦術の幅は大きく広がることとなった。


 レオンは大上段に構えた剣をタイミングよく振り下ろす。


 未だ自身の剣に魔力を作用させられないとはいえ、膂力は十分である。


 ロックバードはそれが罠だと気付いた時にはすでに遅く、無謀に突撃した自身の体はひしゃげ、地面に小さなクレーターを作った。


 予想外のことが起きた時、生物の取る行動は一種類とされている。


 停止だ。思考でも直前の行動でも、一瞬、確実に止まる。


 そして、逃走か闘争かを選ぶのだ。


 魔物とて、それは同じ事であった。


 さらに一匹のロックバードが、地面を穿つ一撃を放った直後のレオンを目掛けて、愚かにも先のモノの行動を反芻してしまった。


「リリー」


「はい」


 これも当然のように予期していたレオンがリリーに呼びかける。


 リリーとしても、明瞭な役割をもらっているがゆえに行動への迷いがない。


 直進してくるロックバードの正面に割って入ったリリーは、腰に置いた左手に溜めた魔力を解放し、全身と短剣を瞬間的に強化する。


 これの原理も目的もレオンと同様である。


 別に習ったわけでもレオンから教えてもらったわけでもない。


 リリーには基礎が圧倒的に足りないとして、リゼは教えてくれなかったのだ。


 だが、レオンのその訓練は隣で見ていたし、指導内容も聞き耳を立てていた。


 そのため、自分もやってみようと見様見真似でやってみたのだが、動きながらお腹に魔力を溜めるというのが意外と難しかった。


 どうしようかと考えたリリーは、どうせ左手は使わないのだし、そこに溜めてみようと思いついた。


 しかも、思いついたのはついこの戦闘中にである。


 つまり、他の誰もこのことを知らないし、本人もぶっつけ本番だった。


 ついでに言うと、攻撃の方法でさえレオンの模倣である。


 リリーは体を捻って半身になって短剣を真っ直ぐ上段に置き、自身を一本の剣と化すと、ロックバードに向けて剣閃を走らせた。


 まるで水に刃を通すがごとく、一切の抵抗も感じさせずに短剣はロックバードの体を袈裟に抜いた。


 真っ二つに切られたロックバードは血と臓物をまき散らしながら地面を転がる。


「はっ?」


 レオンはその光景を信じられないといった様子で素っ頓狂な声を上げた。


 それを為したリリーもまた驚いていた。


 まさかこんな風に切れるだなんて思ってもみなかったのだ。


 せいぜいが浅い切り傷をつけて出血させられればいい、くらいに思っていたのに、結果は首から尾までを二分する一撃となった。


 先述の通り、予想外のことが起きると生物は停止する。


 剣戟のような激しい攻防を響かせていたはずのレオンたちは突然、森閑とした虚無へと陥っていた。


 このままでは先に立ち直った魔物の追撃を許してしまうかもしれない。


 そんな時、離れたところから、銃声と鈍器に打たれるような音が木霊する。


「おい気抜くな。次来るぞ」


「え、あ、はい」


 我に返ったレオンに言われ、リリーは呼吸を一つ置く。


 二人は武器を構え直し、戦闘が再開された。


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