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※ストーリー要約やめました
隣国との国境も曖昧なまま、今なおその多くが未開の地として人々の侵入を拒む、広大なレンフレット大森林の入り口にジェイドたちは立っていた。
「こんなに近かったっけ?」
ジェイドは森に浸食されて途絶した道を見ながら苦笑いを浮かべた。
三日前ジェイドが持ってきた依頼は、このレンフレット大森林にて出現した魔物の調査およびその駆除であった。
優先度の高い案件との通達があり、一日で準備を済ませ、一日を移動に費やし、依頼を出した村へと到着したのが昨日の夕方のこと。
「ここ十年くらいで浸食が早まったって村長さんが言ってたわね」
ご相伴に与りつつ、依頼内容の詳細などについて村長から伺った昨晩のことを思い出しながら、リゼが言った。
元々、この森は植物の成長が異様に早いことで有名だった。
切り倒した木々は数カ月もすれば元通りの大きさになり、雑草を抜いて掘り返した地面は数日と手入れをしないだけで一面を緑に染める。
ある程度で個々の植物は成長を止めるのだが、そうすると今度は森の面積を広げるように、外へ外へと新たな植物が芽を出すのだ。
数世紀以上も未開な部分が多いのは、こういった特性によるところが大きい。
森を開拓するためには、森の浸食を食い止める前線を維持しながら、一部分で道を作り、道中に活動拠点を建設していく必要がある。
その拠点を中心に開拓域を広げ、他の拠点と繋げ、前線を一気に押し上げる。
先人たちは一進一退の攻防を繰り返しながら、少しづつ森を切り開いていった。
ジェイドたちが泊った村も、かつて開拓村だったうちの一つが発展したものであり、本来ならこの道もまだ続いていて、あと二つか三つは村があったはずだ。
しかしここ十数年で、その状況は急激に変化したらしい。
切り倒したものはおろか、新たに芽吹いた木々さえひと月と経たずに成熟する。
雑草などは、焼こうが塩を撒こうが一日二日で元に戻る。
人々が寝ている間に成長した木が、民家を突き破ったなんて話もあった。
こうして、いくつかあった開拓拠点や村は放棄を余儀なくされた。
さりとて浸食は止まることを知らず、食い止める術もなく、ただただ後退させられていった結果、人類の数百年の努力は水泡に帰してしまったわけである。
加えて、近年では森の浅い部分にて、大型や小型、鳥類や哺乳類と問わず、動物たちに襲われる事案が発生していた。
縄張り意識なのか、昔から攻撃的な動物は確認されている。
だがそれもあくまで森の奥深くでの出来事であり、かつ熊や狼といった人間さえ捕食対象になるような動物に限定されていた。
鳥に群がられてつつかれたり、兎に足を齧られたり、猪が突進して家の壁を破壊してくるなどと、いったい誰が想定していただろうか。
人間が集団で行動していようが、火を焚いていようが、拠点となる仮小屋にいようが、影を見せただけでやつらは見境なく襲ってくる。
ただでさえ森の拡張への有効な対策が打てていない中で、臆病な動物さえ襲ってくるとあっては、開拓どころの話ではない。
森に少し足を踏み入れることも、もはや危険な状態になってしまった。
それでも生まれ育った故郷を守ろうと、戦う人々はいた。
ダメ押しをするように、今度は魔物が現れた。
今回、ジェイドたちに出された依頼がそれである。
魔物化した動物の名称はハミングバード。エレオール王国に広く分布し生息する小型の鳥で、十から二十匹くらいの群れで行動する。
性格は土地柄によって異なるが、基本的には温厚かつ臆病で、近くに動物が寄ってくるとまず確実に逃げていく。
また逃げる際に、そのことを仲間へ報せる声を発するのだが、報せを受けた方も音階の違う声で鳴き、群れになるとまるで合唱のような歌が聞ける。
この歌に魅了された人も少なくなく、地域によって奏でる歌が異なるため、観賞用とてしての人気が意外と高い鳥なのだ。
ちなみに、レンフレット大森林のジェイドたちがいる地域では、ロックバードという通称で呼ばれていたりもする。
そんなロックバードが人を襲ったらしい。しかも死人が出たという話だった。
ロックバードで死人が出るなど、ただ事ではない。十中八九、魔物化しているだろうという見立てがなされたわけだ。
受諾した依頼内容とはつまり、この魔物化したロックバードの駆除、可能であれば森の調査を行い、何が起こっているのかを観測することにある。
原因や要因が見つかり、対処までできれば花丸満点ではあるが、それは高望みがすぎる話だ。依頼を受けたジェイドもその辺りは過信していない。
本来ならば森の調査はジェイドたちの領分にはないからだ。
別途調査隊を編成し、派遣することが望ましい。あるいは、ジェイドたちに同行する形でもいいだろう。
それをするためにも、まずは魔物の駆除を確実に行う必要がある。
「なあ、早く行こうぜ」
立ち止まって思案しているジェイドに痺れを切らしたレオンが言う。
ジェイドはレオンの方をちらりと見て、「なるようになるか」自身を納得させるように小さく呟いた。
「よし。行こう」
ジェイドを先頭に、リゼとレオン、リリーとニーナ、最後尾にダズという並びで、彼らは森の中へと入っていった。
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