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リリー・レンフレットの骨拾い  作者: 三色団子
第四章

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 リゼとリリーは訓練を中断し、リビングへ行く途中に声の主と鉢合わせた。


「あ、なんだいるじゃん」


 軽々快活が服を着て歩いているような印象を与えるその女性は、短髪の黒髪に浅黒い肌でリゼよりも少しだけ身長が低い。


 しかし粗野な感じはなく、どこぞの商会主の娘が遠方に出かけるような旅装をしているので、むしろ洗練された雰囲気すらあった。


「おかえりニーナ。遅かったわね」


「そーなのよ。もうほんっと大変でさ、ねえちょっと聞いてよ」


「はいはい積もる話はあとにして。ダズたちは?」


「んー、もう少ししたら来るんじゃない?」


 ニーナが言ったのとほとんど同時に、廊下の角から人影が現れた。


 無骨で職人気質のような固い表情もさることながら、天井にも届きそうな高身長と、リリー二人分以上もありそうな肩幅をした巨躯の男性が顔を出す。


 背にはこれまたリリーがすっぽりと入ってしまいそうな荷物を抱えており、それを下ろすと地面がわずかに上下した。


「おかえりなさいダズ。ずいぶんと大荷物ね」


「ただいまリゼさん。これは、まあ、お土産ってところだね」


 声は顔に反して柔らかく、表情もよく動く。そのギャップがまた、恐怖をよく煽りそうである。


「とりあえずお茶にしましょうか。リリー、手伝って」


 ダズを見上げて呆けていたリリーは、リゼに言われて我に返り、お茶請け用の菓子を皿に出してリビングのテーブルに置いた。


 何やら二人からの熱い視線をリリーは感じていた。


 リリーの方も、二人が何者なのか気にならないわけではない。


 こういう時は自分から声をかけるべきなのだろうか。


 迷った末に、リリーは意を決して声をかけようとした。


 だが、間の悪いことにリゼがお茶の入ったカップを置いたタイミングと被ってしまい、リリーは機会を逃してしまった。


「それで、ずいぶんと時間がかかったみたいだけど、何があったの?」


 席に着いたリゼは早速とばかりに話題を切り出す。


 ダズとニーナは互いに目を合わせ、お茶を一口飲んだニーナが説明を始めた。


「あたしたちが南西の森に行ったのは知ってるでしょ?」


「ええ、魔物の目撃情報がそこだったから。まさかいなかったの?」


「いたわよ。戦いもした。でもあいつすぐに逃げちゃったの」


 ニーナは当時の状況を思い出したのか、深い溜め息を吐いた。


 魔物というのは、魔力を発現した、あるいはなんらかの原因で魔力による作用を受け暴走した動植物のことを指した総称である。


 こういった魔物は時折出現し、人を襲うことがしばしばあった。


 また、魔物は肉体の強化に魔力の作用が指向されている場合が多く、普通の人間が太刀打ちできる相手ではない。


 そのため、魔力を扱える人間が魔物退治に駆り出されることになる。


 今回の場合、窓口となっているジェイドが依頼を受け、ニーナたちが派遣されたとういわけである。


「しかも逃げた先が最悪でさ」


「近隣の村とか?」


「あー、そっちも最悪ね。でも違う、火山よ火山」


「セレノール火山に?」


「そう。ありえなくない? 普通、生物なら避けるでしょ」


 ニーナの呆れはもっともで、セレノール火山は今なお噴火活動を続けている活火山だ。


 山には獣道すらなく、歩いた足場が崩れて溶岩に落ちたり、高温のガスが噴き出てきたり、そうでなくとも火口付近では気温が五十度を軽く超える。


 当然のように危険地帯で、魔力が扱える超人的なニーナたちでさえ、それは例外ではなかった。


 人間はまず近寄らないし、動物の方こそ率先して立ち入ることはしない。


 はずだった。


「あいつ、あたしたちが来れないことを分かってる感じだった」


「まあ、知能面が向上していたとしても不思議ではないけど」


「いやいや、それならなおのことあり得ないでしょ。


 それにあの熊、めちゃくちゃデカかったんだけど。


 体高で、そうね、この家の二階くらいはあると思う。


 でも鈍重ってわけでもなく、むしろ素早い方だし。


 力も並外れてて、ぶっ太い木の幹を片手でへし折ってたわ。


 あとね、剣の刃は通らないし、ダズでも十秒しか抑え込めなかったの。


 とにかく、あれは間違いなく化け物って感じね」


 ニーナは早口で捲し立て、お茶を全部飲み干した。


「それで、あたしたちは東の方からぐるっと回って行ったわけ」


「ということはアンリアハットまで?」


「そう。で、あの熊探し出して、再戦して、ぶっ殺してやったわ」


「よく倒せたわね」


「それはほら。あたしが本気出せば一発よ」


「あなたの本気は被害が大きいでしょ」


「大丈夫よ。深手を負ってまた火山に逃げたところでぶっ放したから」


「なるほどね。まあ、それなら問題ないかしら」


「それで、せっかくだから観光してから帰ってきたの」


「遅れた理由も納得がいったわ。とにかく、ご苦労さま」


「あ、そうだお土産があるわよ。ダズ」


「はいはい」


 ニーナはわざとらしく指を鳴らし、応じるようにダズは床に置いていた荷物の口を開いて中身を見せた。


「これって、お肉?」


「倒した熊を運んで解体して、塩漬け肉にしてもらったんだ」


 ダズはあっけらかんと言ってみせたが、その大きさにリリーは驚いて顔を引きつらせていた。


 というのも、高さはリリーの首元、横幅はリリーの肩幅もあるのだ。


 そんな大きな熊が本当に存在するのか、なんていう疑問を吹き飛ばしてしまえるほど、その肉は強い存在感を放っていた。


「こんなに大きなもの、地下室に入るかしら」


「細かくすればいけるでしょ」


「はぁ、しばらくはお肉に困らなさそうね」


 巨大な塩の塊となっている熊肉を見ながら嘆息するリゼをよそに、ニーナの視線はリリーへと向けられていた。


「ねえ、そろそろその子を紹介してくれない?」


〇ストーリー要約

・帰ってきたのはニーナという女性とダズという男性

・ニーナたちは魔物退治に出かけていて、リゼにその内容を簡単に報告する

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