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リゼがノックを三回鳴らしてドアを開けると、リリーは膝を抱えた三角座りをしていた。
「おはよう、リリー。起こされる前に起きてるなんて偉いわね」
手に持っていた服を椅子に掛けたリゼは、カーテンと窓を開けた。
まだうっすらと霧の立つ冷たい風が部屋の中をさらっていく。
太陽の眩しさに、リリーは目を細めた。
「さ、これに着替えて朝食にしましょう」
お風呂上りに着せたままだった下着用のシャツをリリーから脱がし、持ってきたパンツとワンピースを着せる
それはリリーが丸一日眠っていた日の昼頃に、リゼが何着か見繕って買った服の一着である。
白を基調として、随所に淡い水色が差し色として織り込まれ、可愛らしいフリルのあしらわれたそのワンピースは、リリーの赤い瞳も相まって、非常によく似合っていた。
また、リリーの長い髪をさっと梳かして、後ろに一本で結ぶ。
髪を結ぶ際は麻紐やリボンが一般的だが、リゼは組紐と呼ばれている伸縮性のある髪留めを使っていた。
リボンと違って耐久性に優れ、美しい組目と繊細な色使いが可愛らしく、いま上流階級の奥方からご令嬢たちに大人気なのだそうだ。
それはさておき、準備のできた二人は一階へと下りていく。
リリーはトイレに案内されて用を済ませ、リゼはその間に朝食の用意を済ませる。
用意と言っても調理はすでに終えてあり、テーブルに並べるくらいのものであ る。
それぞれ席について朝食を摂り始めるも、リリーはやはり遠慮がちに見えた。
昨日の今日で慣れろというのも難しい話なので、先に食べ終えたリゼは「ゆっくりでいいからね」と一言添えるに留めた。
「ご飯も食べたし、さっそくお勉強をしましょう。っとその前に」
街並みに活気の出始める時分、お腹を満たして食器等の片付けも終えたリゼが、パンと手を打ってリリーに言った。
「明るいうちに家の中を案内するわね」
リリーの手を半ば強引に取り、部屋の説明をしていく。
まずは一階の現在いるダイニングと隣接するリビング、向かい側の四つある個室、トイレ、風呂、そして井戸と小さな物置小屋のある庭を回っていった。
この建物は元々、貴族や相応の地位にある商会の子息を泊めるために作られた宿舎であった。
そのため、ホテルのような小部屋が一階には四つ、二階には六つの計十つ設けられている。
ちなみに、現在使われている部屋は一階の四つと二階の一つだけであり、あとは空き部屋となっている。
また庭もそれなりに広く設計されており、横幅は小部屋換算で約二つ分、縦は約四つ分となっており、体を動かすには申し分ない。
二階には先ほど述べた通り小部屋が六つ並んでおり、階段から上がって一番奥には、庭を見下ろせるバルコニーが設置されている。
その他には、バルコニーから梯子で屋根に上れたり、食料等を保管する地下室があったりする。
質素ながら内装もそれなりに拘られており、宿舎とはいえ、そこらの零細貴族の屋敷よりもよほど豪勢な建物なのだ。
しかし、先の戦争によってオーナーが命を落とし、空き家となっていたところをジェイドが格安で買い取ったのだが、これはまあ余談である。
〇ストーリー要約
・朝に起床しお着換えさせられる
・朝食を摂り、ルームツアーが行われる




