【九】-1 よー、いえー
【九】
とりあえず、何やら良い感じらしいので、
サイドキック二人の後押しを受け、
僕が引き続き話を聞くことにした。
核心らしいことは聞けていなかったのに、
それで良いのかと思ったけれども、
二人は僕に何かしらの期待をしてくれているらしい。
クレオが、必ずサイドキックの言うことを聞くように言ったのも、
こうなることを見越していたのかもしれない。
前世譲りの賢さを持つ彼女ならあり得ることだ。
「俺はあんたを仮想敵国側と見ている」
こちらへの不平不満を堂々と漏らしたウィングバック、ターンが、
こちらを睨めつけた。 反抗的な態度を隠しもしない。
まあ、向こうのキャプテンがこの国の何者かに殺されたし、
王子と殺人現場まで、こちらの選手にサッカーボールにされたのだから仕方ない。
…………探偵としての勘が研ぎ澄まされてきた。
この状況では僕の首が繋がっているのが不思議なんだ。
しかし、僕の感覚が冴えてきたということは、
事件解決に近づいたということでもある。
このまま僕が話を聞いてサイドキック二人の役に立とう。
「それはムリもないことだ。
べつに僕への見方を変えてほしいとは言わない。
でも、少しだけチャンスを欲しい。
君が少しでも心を開いてくれるまで、いくらでも待つから」
ターンが毒気を抜かれたように肩の力を抜いた。
「なんか……あんたと話していると
気を張ってるのが馬鹿みたいに思うな」
「どうしてか、よく言われる」
僕としては人並みに悲しみを抱えているつもりだし、
悩みや葛藤にも揺らいでいるはずなんだけれども。
……やはり黒い服を着ればいいのか。
悲しみを抱えたヒーローは、黒い服を着るものだ。
「キャプテンは良い人だったよ。
俺みたいなちびにいつも優しかったしな。
なんか、弟を思い出すとかで」
話を聞いているとよくわかる。
今は亡きキャプテン・サッカーが、
本当によくできた人だったことが。
是非とも、もっと話をしてみたかったものだ。
「彼が亡くなった時は?」
「えーっと……普通にトイレかな」
「誰かと一緒だったり、誰かに会ったりした?」
心の中でガッツポーズした。
僕だってこんなにそれっぽいことが言えるんだ。
まるで刑事ドラマか探偵ドラマみたいだ!
「一人だったけど、廊下は人が行き来してたから。
まあ、あんたらのとこの使用人が覚えてるんじゃないか?」
「なるほど……」
「そう言えば君は機械躯体を使うのに興味はないんだね」
見たところ、ショーシ王子とターンの 背格好に大差はないように見える。
デリケートな話題かもしれなかったが、
探偵ともなると多少のリスクは冒すべき、はずだ。
怒られたら謝ろう。
「使えるなら検討するけど、
ショーシ王子が許可しないんだよ」
「へえ。量産しているのに?
サッカーは激しいスポーツだからワンオフものになるのかな」
「そうじゃなくて……」
言い淀んで、言葉に詰まったターンが、
こちらを測るように見つめたまま沈黙した。
思うんだけれど、こういう時ってどういう顔と姿勢が正解なんだろ。
ずっと気づかないふりしていればいいのかな?
とりあえず韻を踏もうか。
「よー、いえー、
王子はアーマー、興味はあんまー」
「は?」
「ごめん」
失敗だ。 誰か正解を教えてくれ。
「気まずい沈黙ならグルービーにしようと思って」
「なんでだ……?
まあ大したことじゃない。
王子のアーマーは昔、紛争鎮圧に利用されていて。
使用者がやりすぎたんだって」
「なんと……」
それだというのにあんなに侵略主義なのか。
彼の心情はいったいどうなっているのか。
ターンはそれ以上、話すことがなかったようだ。
「悪かったね、時間取らせて」
「いや……」
後頭部を掻き、 照れくさそうに喉の奥を数回震わせた。
「思っていたより、一人でいるのがキツかったみたいだ。
あんたと話せてよかったよ、本当に」
お世辞かなと思ったけれども、
たしかにこの部屋に入った時よりは落ち着いた気分になっているようだ。
まったく狙った結果ではないけれども、 力になれたなら心から喜ばしい。




