【五】-1 間違いない
【五】
スタジアムでショーシ王子についての話を聞き、
彼との向き合い方を改めて考えたジェーンは、
お昼の会食に出席していた。
汗を流し、さっぱりした面持ちの
使節団選手たちが毛並みをふわふわさせて、食卓についた。
昨晩はまだ肩に力が入っていたサッカープレイヤー達が、
だいぶリラックスした様子で椅子に背中を預けていた。
ショーシ王子と鉄火山は
街並みを観光するとのことだ。
「みなさん、暫しお待ちください。
非常に美味なる料理がやって来ますから」
そう言ってアレンが恭しく一礼する。
クレオの指定だが、 彼が歓待の多くを任されたのは正解だったようだ。
とても器用に、部屋の手配から
食事の計画、選手ごとの対応マニュアルを作って、 みんなに配ってくれた。
クマの見分けがあまりつかない人のための特徴も記入してくれたのだから、
隙がまったくない。
昨日の試合に参加したこちら側の選手はおおむね同席している。
プライマル学院の全員というわけではない。 世界最大の帝国を迎えるという一大事業において、
スピードスターは、親友のスライムと一緒に
治安維持を優先して走り回ってくれている。
クマとサッカーをするにはフィジカル的に小さすぎる者にも、
犯罪対策に動いてもらっている。
「まだ来てない人がいますよ」
ジョナサンが隣のジェーンに耳打ちをした。 それは彼女も把握している。
さっきまで元気にサッカーをしていたのだから、 特に問題はないだろうが。
「あの、ジェーン様……」
メイドがクマの出席に怯えて、
視線から逃げるように身を屈めて報告した。
「お客様がお部屋に閉じこもっていて、
何度お呼びしても返事なさらないんです」
「シスマは?」
「料理中でして……」
「わかった」
「こっそり部屋の中を探ってみます」
「バレないようにしてね」
ジョナサンがするりと目立たないように椅子から降りて、
気配を消し、その場から去った。
誰も注意を払わない、いなくなり方だ。
事実、互いに談笑しているクマ達は、
少年の退席に気づいていない。
ジェーンは堂々と席を立ち、
メイドを連れて 報告された部屋の前に来た。
規則正しいリズムでノックを四回する。
「大丈夫ですか?
具合が悪いようでしたら薬をお持ちしますけれども」
返事がない。
しかし、ドアに鍵がかかっているということは、
中にいるのは間違いない。
迷わず、意識を鼓膜に集中させ、
超聴力で内部の様子を探る。
耳に入るものは──無音。
「無理矢理開けるわ」
ドアに両手の人差し指を突き入れて 穴を開けて、さらに横に押し広げる。
人が通れるくらいの空洞ができ、
そこから中に入ると、その場の誰でもわかるほどの濃い血の匂いがした。
ロックされたドアはそのままに、
穴だけを空けたのだ。
「クレオとアレンを呼んで!」
部屋の中央には 真っ赤な血溜まりができ、
仰向けになって全身がボロボロになったクマが倒れていた。
間違いない。
部屋の主、キャプテン・サッカーその人だ。




