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悪役令嬢の前世がスーパーなマンだったので、断罪イベントより先に農業革命で国を救ってしまいました(クマとかヴィランもいるよ!)  作者: スカンジナビア半島
第五章 スーパーサッカーVS密室殺人事件

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【ニ】-2 もう十七歳

 そんな風に和んでいると、

 老クマが王子に小声で耳打ちした。

 それを聞いた王子は相貌に力を漲らせ、  すぐに両手を叩いた。


「あれ持ってきてーーー!!」


 その呼びかけに応えて、

 応接間に次から次へとクマの剥製が運び込まれた。


 ぎょっとする光景だったが、目を凝らせば、

 熊そのものではない。あくまで、それを模した外骨格装甲、

 いわば機械駆体と言っていいものだ。


 王子が乗り込んでサッカーをしていたのも、

 これらと同機種だろう。


「ぼく、ずっと部屋で勉強して、研究してたんです。

 弱い身でも、強くなれたらいいって。

 それで、同じような人達も助かればいいなって」


「それで本当に造ったのね?

 偉いじゃない」


 それまでは子どもとしか見ていなかったジェーンが、

 初めて王子を個人として認識したのがわかった。

 彼女の視線が、外交相手、それも幼い壊れ物を相手にする丁寧なものから、

 一種の対等な相手、同じストイックさを持つ同志を見るものになった。


「はい! それで、貴女のデータも欲しいんです。

 スゲーマンの力も取り込めたら、きっと世界最強の駆体も造れますから!」


「まあ、協力するのは良いけれども。

 あたしの力……っていうか、お父さん(スゲーマン)の再現は行きすぎじゃない?」


「世界を征服するには必要なんです!!」


 ぴょこん、と椅子の上に立って跳ねた。  実に可愛らしい仕草だ。

 物騒な単語を使われたが、

 この年頃なら、物語に出てくるワードを使いたいのだろう。


「征服っていうのは、

 みんなにそれを行き渡らせるってことよね?

 外骨格の機械駆体を一般に普及させる的な」


「ぼくのイデオロギーに基づいて

 この星に統一政府を打ち立てるんです!

 もう十七歳だから妻を娶るには問題ありませんし、

 逆らう者どもの文化、思想を血と蜂蜜で洗い流すには、

 かつてこの星の救い主であったスゲーマンの承認が必要なんです!」


 …………あれ、けっこう年齢いってるな?  

 しん、と静まり返った空気。


 野望を伝えるよう促した老クマは、

 瞼にかかった体毛の隙間から、

 見定めるような鋭い眼を覗かせていた。


「まあまあ! ちょっと落ち着こうじゃないか」


 クレオが両手を挙げて諫めた。

 冷や汗が浮かんでいた。

 彼女でも、この少年の過激思想は予想外だったようだ。


「なんだよ、帝王に近づこうとぼくに媚び売ってきた卑しいメスめ!

 ジェーン様以外の言葉はいらないぞ!  こいつらを自動操縦させたら、この場の全員を血祭りにあげられるんだからな!

 ねえジェーン様! 頼むからぼくと組んで、世界を新しくしましょうよ!!」


 目を爛々と輝かせて、ショーシ王子は熱心に勧誘を続ける。

 クレオが侮辱されたなら、

 かつての聖女ならその場で頭突きでもしていたか、

 首に蹴りを入れていただろう。


 今の彼女は腕を組み、

 渋い顔でなにやら遠くを見つめていた。  知っている顔だ。


これは“またもエライことになりそうだなあ”と

 “あたしの人生ずっとこんなのと縁があり続けるのか”という顔だ。

 僕も同じ顔を生前は何度もしていたものだ。

 やはり、輪廻上の父娘なんだなあ。


 ふふっ、そう思うとなんだか改めて誇らしいや。


 とりあえず、僕がやるべきこととしては、

 ジェーンに鮭おにぎり十個を渡すことだった。

 また負けか。どうしてこう、ギャンブルにはとんと縁がないんだろう。

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